倉谷滋先生お勧めのクラッシック論文を紹介します。
31. Narayanan, C. H. & Narayanan, Y. (1980).
Neural crest and placodal contributions in the development of the glossopharyngeal-vagal complex in the chick. Anatomical Record: Advances in Integrative Anatomy and Evolutionary Biology196, 71-82.
もうすっかり流行らなくなってしまったが、神経堤やプラコードの除去によって末梢神経系の発生機序を理解しようという論文は過去に多くあり、ほぼ正しい結論を導いていた。こういったタイトルを見ると、自分で作出した標本のスケッチを思い出す。
32. Kessel, M. & Gruss, P. (1991).
Homeotic transformations of murine vertebrae and concomitant alteration of Hox codes induced by retinoic acid. Cell 67, 89-104.
レチノイン酸によってHox遺伝子発現が誘導され、結果として椎骨の形態アイデンティティが後方化するという図式を示した論文。分子的発生機構がボディプランに肉薄していた頃の象徴的論文。
33. Lim, T.M., Jaques, K.F., Stern, C.D. & Keynes, R.J. (1991).
An evaluation of myelomeres and segmentation of the chick embryo spinal cord. Development 113, 227–238.
脊髄にも分節があり(脊髄分節)、その形成が傍軸中胚葉(体節)によって誘導されることを示す。ここでいう分節的オーガニゼーションが発生過程のどの場面で何を制限しているのか、まだ明らかにはなっていない。
34. Köntges, G. & Lumsden, A. (1996).
Rhombencephalic neural crest segmentation is preserved throughout craniofacial ontogeny. Development 122, 3229–3242.
頭部神経堤細胞の各集団が、それが由来する菱脳分節(ロンボメア)ごとに特異化されていることを示した論文だが、あらためて分節性が何を意味するのかについて考えさせられる。
35. Källén, B. (1956).
Experiments on Neuromery in Ambystoma punctatum Embryos. Development 4, 66–72.
すべての神経分節が系列的に等価ではなく、場所ごとに異なった発生機構をベースにしていることを示唆した先駆的論文。
36. Mallatt, J. (1996).
Ventilation and the origin of jawed vertebrates: a new mouth. Zoological Journal of the Linnean Society 117, 329–404.
顎の進化の「ventilation theory」を示した論文。かなり分量があるが、比較形態学と機能形態学的考え方を学ぶためには挑戦する価値がある。
37. Kimmel, C. B., Sepich, D. S. & Trevarrow, B. (1988).
Development of segmentation in zebrafish. Development 104, 197–207.
この論文においてキンメルらはゼブラフィッシュの胚に4種の分節を認めている。ここでいうsegmentsは狭義のもので前後軸に沿って繰り返す単位を、メタメリズム(metamerism)は体全体が同じ構造群を含むユニット(メタメアmetameres)からなることを指す。
38. Koltzoff, N. K. (1901).
Entwicklungsgeschichte des Kopfes von Petromyzon planeri. Bull. Soc. Nat. Moscou 15, 259-289.
19世紀末から20世紀初頭における比較発生学では、サメやエイの発生パターンが理解の基本とされ、他の脊椎動物胚の記載がそれに大きく影響されていた。その傾向を「板鰓類崇拝」というが、この論文はある種その典型例ということができる。
39. von Kupffer, C. (1899). Zur Kopfentwicklung von Bdellostoma. Sitzungsber. (リンクなし)Ges. Morphol. Physiol. 15, 21-35.
ヌタウナギ頭部の胚発生を本格的に記載した最初の論文。この動物の胚頭部前方に外胚葉のみからなる(ヌタウナギに特異的な)「二次口咽頭膜」が存在することを正しく記述した。が、この報告はその後長らく忘れられることになった。
40. Lacalli, T. C., Holland, N. D. & West, J. E. (1994).
Landmarks in the anterior central nervous system of amphioxus larvae. Phil. Trans. R. Soc. Lond. B 344, 165-185.
Lacalliはナメクジウオの脳形態を透過型電子顕微鏡で詳細に観察、この後一連の論文を発表した。胚における遺伝子発現パターンも加味したうえで、脊椎動物の脳との比較における問題点を浮き彫りにした。90年代Evo-Devo黎明期を特徴づける論文のひとつ。
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