UAゼンセン、パート7%賃上げ目標 「格差拡大に歯止め」
流通や外食、繊維などの労働組合が加盟するUAゼンセンは6日、2025年の春季労使交渉でパート時給は7%を目安に賃上げする要求方針の素案を発表した。正社員の賃上げ目標とした「6%基準」より高い水準とした。賃上げが進む一方で企業規模や雇用形態による賃金格差が広がるなか、賃金の底上げに最優先で取り組む姿勢を示す。
同日、千葉県浦安市内で開いた25年の要求方針の策定に向けた会議で明らかにした。25年1月の中央委員会で統一要求を正式決定する。UAゼンセンの永島智子会長は「景気動向や足元の企業業績に左右されるのではなく、労働組合が自ら景気の好循環を作り出す覚悟だ」と述べた。
雇用形態別では、正社員は基本給を底上げするベースアップ(ベア)分が4%基準、定期昇給(定昇)を含めて6%基準の目標とする。中小企業に多い、定昇など賃金体系が整っていない企業の組合向けには月例賃金ベースで「1万6500円」という実額での賃上げ目標も示した。
パートはベア分が5%基準(時給60円)、制度昇給分を含めて7%(同80円)を目安とする。24年目標より1ポイント上乗せした。同一労働同一賃金の観点から正社員以上の要求を行う。正社員と職務が同じパートについては正社員の賃上げ額(時間換算)を下回らない水準に設定する。
永島会長は「23〜24年の闘争では賃上げができた組合と十分にできなかった組合の格差が拡大した」と振り返る。賃金の底上げをはかるため「中小組合の要求額としては大手並みの金額を目指す取り組みを提起していきたい」と述べ、「格差の拡大に歯止めを」をかけたい考えだ。
UAゼンセンは流通や繊維、サービス業などの約2200組合が加盟し、約190万人の組合員を抱える国内最大の産業別労組だ。組合員数300人未満となる中小企業の労組が全体の約7割を占め、パートの組合員が約6割を占める。
連合は10月、25年の春季労使交渉で「5%以上」の賃上げを目指す方針を発表した。傘下で最大の産別労組であるUAゼンセンが先陣を切って「6%基準」という3年連続で連合方針を上回る高い目標を掲げたことで、後に続く他産業の労組でも高水準の要求が打ち出される期待が高まる。
今回、UAゼンセンが重点課題と位置づけた非正規や中小の賃上げがどこまで進むかは、日本の実質賃金の持続的な上昇のカギを握りそうだ。
(米田百合香、斎藤萌、松井基一)
賃上げは賃金水準を一律に引き上げるベースアップと、勤続年数が上がるごとに増える定期昇給からなる。2014年春季労使交渉(春闘)から政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」が始まった。産業界では正社員間でも賃金要求に差をつける「脱一律」の動きが広がる。年功序列モデルが崩れ、生産性向上のために成果や役割に応じて賃金に差をつける流れが強まり、一律での賃上げ要求の意義は薄れている。