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高齢化率71.4%の集落で、約20年ぶりに赤ちゃんが誕生!大阪から移住してきた加藤さん夫婦が感じた、子育てのしやすさ【体験談】

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生後1カ月月半になり、蔵之助くんが里帰り先から集落に帰って来た日。集落のみなさんが、自宅にあるこいのぼりをいっぱい飾って、蔵之助くんを歓迎。

大阪から、兵庫県丹波篠山市市野々集落に移住した加藤俊希さん(29歳)、梨絵さん(31歳)夫婦に第1子が誕生したのは2022年4月のこと。高齢化が進む、同集落では約20年ぶりの赤ちゃんの誕生です。高齢化率71.4%、人口56人(2022年3月末時点)という集落で、子育てをして見えてきたことを加藤さん夫婦に聞きました。

集落の人がこいのぼりを飾って、赤ちゃんを歓迎

築約130年の古民家の自宅の縁側で。

2022年春、加藤さんたちが大阪から移住したのは、四方を山で囲まれた自然豊かな兵庫県丹波篠山市市野々集落です。築約130年の古民家を購入し、家族3人で暮らしています。第1子の蔵之助くんが誕生したのは、2022年4月です。

「私は助産師をしていて、大阪の総合病院の産婦人科で働いています。助産師歴は9年で、今は育休中です。
丹波篠山市にも、分娩施設が1カ所ありますが、私は自分が勤務する産婦人科で出産しました。蔵之助は予定日より3日早く、2590gで誕生しました。コロナ禍のため、立ち会い出産はできなかったのですが、パパが平熱ならば生まれたばかりの赤ちゃんに10分だけ面会できます。そのためパパは、ずっと病院近くのカフェで待機していました。
“生まれたよ”と連絡すると、急いで走ってきたためか熱が上がってしまっていて、病院で検温したら37度に! その場で帰されてしまい、残念ながらパパは生まれたばかりの蔵之助と面会できなかったんです。
パパが蔵之助と会えたのは、生後5日目の退院の日でした。私は、そのまま実家(兵庫県神戸市)に向かい、1カ月健診が終わるまで実家で過ごしました」(梨絵さん)

蔵之助くんの名前は、パパ・俊希さんが決めました。

「妊娠中に母屋に隣接する土蔵の改修工事をしていて、名前に蔵という字を入れたいと思いました。こちらに移住してきて、蔵の改修工事なんて初めてのことだったので、集落に住んでいる大工の棟梁に教わりながら工事をしていたのですが、蔵って人との関係を築き、知識や経験、財を集める場所だと痛感しました。大切なものをしまっておくところでもあります。蔵之助にも、財だけでなく、人との関係や知識、経験が豊かな大人になってほしいと願いを込めて命名しました」(俊希さん)

梨絵さんが蔵之助くんと、わが家に帰ってきたのは、蔵之助くんが生後1カ月半になってからです。5月の終わりごろでしたが、自宅のまわりにこいのぼりがたくさん飾られていて驚いたと言います。

「蔵之助が帰ってくるから!と、集落の人が家にあるこいのぼりを出して飾ってくれたそうです。たくさんのこいのぼりを飾って、“お帰り!”と温かく迎え入れてくれて、本当にうれしかったです」(梨絵さん)

「育児って城を建てるよりも、価値があることだから頑張ってね!」と励まされたことも

自宅前で収穫した丹波黒枝豆の枝からさやを摘み取る梨絵さん。散歩など外に出ることが多いので、自然と集落の人と交流が深まります。

加藤さん一家が住む、丹波篠山市市野々集落は過疎化が進んでいて人口は56人です。「人口56人なんて寂しいのでは?」と思うかもしれませんが、加藤さん夫婦は、寂しさは感じないそうです。

「日中はみなさん畑仕事をしたりしていて、外に人がいるので人口56人と聞いたときは“えっ、そんなに少ないの?”と驚いたぐらいです。お隣さんもいますし、人がいなくて寂しいと感じる集落ではありません。
また蔵之助を連れて散歩をしていると、わざわざ畑仕事の手を止めて、顔を見に来てくれる人がいたり、裏口の玄関先に畑でとれた野菜を置いて行ってくれる人がいたりして、寂しさはまったく感じません」(俊希さん)

梨絵さんも、寂しさを感じるどころか心強さを感じると言います。

「蔵之助を散歩させていたら、4人子どもを産んで、育てた方から“育児って城を建てるよりも、価値があることだから頑張ってね!”と声をかけられたことがあります。みなさんが温かく見守ってくれるので、子育てもしやすいです」(梨絵さん)

集落では手に職がある人が多く、子どもが生きる力を学ぶのに最適な環境

家の中に虫が入ってくることが多いので、蚊帳に入って眠る蔵之助くん。

加藤さん夫婦が、山あいの田舎暮らしを選んだのは、豊かな自然の中で子育てをしたいという思いがあったためです。

「丹波篠山市市野々集落は緑豊かで、自然の宝庫です。タヌキやイタチなどの小動物もいて、ときどき屋根裏に入ってしまうようで走り回る音が聞こえたりします。
また僕自身、とても驚いたのは寝ていたら天井から15cmぐらいのムカデが落ちてきたことです。自然豊かな環境だからこそ、家の中に虫が入ることも多々あるのですが、集落の人たちは慣れっこで“ムカデ、うちにもよく入ってくるよ~”という感じです。ただうちは、蔵之助がいるので、蚊帳に入って寝るようしました」(俊希さん)

また俊希さんは、この集落に住んで気づいたことがあります。

「集落の人は、農家さんや猟師さん、大工さん、自動車の整備士さんなど、手に職を持っている人がとても多いです。蔵之助が、こうした人たちを見て、このような環境の中で育つことで、見て、聞いて、やってみるうちに、自然と生きる力が身についていくのではないかと思っています」(俊希さん)

また加藤さん夫婦も学ぶことが多いと言います。

「ここに移住する前は大阪で暮らしていて、畑仕事はしたことがなかったのですが、隣の人に畑を借りて、野菜作りに挑戦しています。
集落の人からすると、手際が悪かったりして見ていられないんでしょうね。蔵之助をおんぶして畑仕事をしていると、さっと来て手伝ってくれて、いろいろ教えてくれます。
兵庫県丹波篠山市は黒豆が有名で、私も栽培してみたのですが難しくて・・・。花は咲くのに、実があまりならないので、今度は栽培のしかたを教えてもらおうと思っています」(梨絵さん)

畑仕事や土蔵の改修工事などを通して、加藤さん夫婦も生きる力を養っているようです。

集落の人が持つ貴重な技術や知識を、若い世代に継承できないのがもったいない

俊希さんは、フリーのWEBマーケティングの仕事と同時に、丹波篠山地域おこし協力隊のメンバーとして、「空き家を資産に」をテーマに活動しています。

地域おこし協力隊とは、2009年総務省が導入した地方自治体が都市住民を地域おこし協力隊員として受け入れ、隊員はさまざまな地域活動への参加を通じて地域への定住・定着を目指す制度です。

「先日も、兵庫県の人形作家・わたべみちこさんの創作人形展を、自宅の一角で開催したころ9日間の会期中、約1000人も見に来てくれました。

この集落に住んでから、過疎化の課題を痛切に感じます。この集落には、貴重な技術や知識を持っている人たちがたくさん住んでいます。しかし高齢化によって、そうした技術や知識が、若い世代に受け継がれることなく失われていくのが本当もったいないと思うんです。丹波篠山地域おこし協力隊として、何かできることはないかと模索中です」(俊希さん)

集落で、すくすく成長する蔵之助くん

蔵之助くんは、現在7カ月。少し小さめですが、元気に健やかに育っています。かかりつけの小児科は車で30分の距離ですが、急病で診察時間外に診てもらうような経験はまだないそうです。

蔵之助くんがいると、みんな笑顔に

蔵之助くんをおんぶしたまま畑や庭仕事をするのは、梨絵さんの日課。蔵之助くんがいるだけで、集落の人が笑顔に。

畑仕事にも挑戦!

移住をきっかけに、梨絵さんが始めた畑仕事。玉ねぎ、ほうれん草、レタス、ブロッコリーなどを栽培しています。

【地域おこし協力隊コーディネーター・河口さんより】蔵之助くんは、集落の人にとって孫のような存在

「蔵之助くんが生まれてから、集落の雰囲気が変わったと感じています。集落の人からは“子どもがいてくれるだけで幸せ”“子どもがいるとワクワクする””子どもの声が聞こえるだけでうれしい“といった声がよく聞かれます。
高齢化率71.4%の集落のため、みなさんが蔵之助くんをかわいい孫のように思っているようです。蔵之助くんが生まれて、集落がパッと明るくなりました」(丹波篠山市地域おこし協力隊コーディネーター・河口英樹さん)

お話・写真提供/加藤俊希さん、梨絵さん 協力/丹波篠山市地域おこし協力隊 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

山あいの集落で暮らすというと「不便なのでは?」と思うママやパパもいるかも知れません。しかし加藤さんご夫婦によると「スーパーまでは、車で20分ぐらいだし、週1回食材や日用品の宅配を利用しています。またネット通販で買い物もできるので不便は感じません」と言います。車で10分ぐらいの距離には、こども園もあるそうです。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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