福島第一原発 核燃料デブリ初の試験的取り出し完了 東京電力

東京電力は7日、事故を起こした福島第一原子力発電所で初めて行われていた核燃料デブリの試験的な取り出しを完了したと発表しました。
廃炉の完了に向けては、総量で880トンにのぼると推定される核燃料デブリの取り出しが「最大の難関」とされ、今回取り出したのは数グラムとみられますが、東京電力は今後の分析で得られるデータは、本格的な取り出し工法の検討に欠かせないとしていて、事故から13年半を経て、廃炉は新たな段階に入ります。

福島第一原発2号機では、事故で溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合った核燃料デブリの試験的な取り出し作業がことし9月から行われてきました。

細いパイプ状の装置を格納容器の内部に入れ、底にある核燃料デブリをつかんで回収する計画で、先月30日には大きさが5ミリほど、重さ数グラムとみられるデブリをつかみ、その後、格納容器の外まで出して放射線量を測定した結果、表面から20センチの距離で1時間当たり0.2ミリシーベルトと、作業員の被ばくを抑えるうえでの基準としていた24ミリシーベルトを大きく下回っていることが確認されました。

核燃料デブリは6日までに運搬用の容器に収納されていて、東京電力によりますと、7日午前11時40分、容器を専用のコンテナに移し、試験的取り出しが完了したということです。

福島第一原発の1号機から3号機の格納容器の内部には合わせておよそ880トンの核燃料デブリがあると推定されていて、その取り出しは廃炉の完了に向けた「最大の難関」とされ、実際に取り出されたのは、原発事故から13年半で初めてです。

当初は事故から10年となる2021年に取り出しを始める計画でしたが、装置の開発が難航するなどして、およそ3年遅れての開始となっていました。

今回取り出した量もわずかですが、東京電力は今後、分析して得られるデータは本格的な取り出し工法の検討に欠かせないとしていて、事故から13年半を経て、廃炉は新たな段階に入ります。

【試験的な取り出しの意義】
福島第一原発の1号機から3号機にある核燃料デブリの量はあわせて880トンと推計されるのに対して、今回取り出すのは数グラムとわずかな量ですが、東京電力は、少量でも分析することで本格的な取り出しの工法を決める上で欠かせないデータが得られるとしています。

政府と東京電力が示している廃炉の工程表では、2051年までの廃炉完了を念頭に、2030年代初めには核燃料デブリを一定の規模で継続して取り出す本格的な取り出しを始めることを目指していますが、どういった工法で取り出すのかはまだ決まっていません。

国の専門機関はことし3月、充填材を流し込んでデブリごと固めて取り出す工法を一部で活用することを提案し、東京電力が来年度上期にかけてその実現性を検証するなどして、工法を具体化するとしています。

ただ、具体的な計画づくりや取り出しに使う装置の開発などを進めるには、試験的な取り出しで得られるデブリの性質や状態などのデータが欠かせないとしています。

デブリは1号機から3号機のそれぞれで溶け落ちている量や広がり方も異なっているほか、同じ号機でも場所によって性質や状態は異なると考えられていて、具体的な工法を決めるには、今回のような試験的な取り出しを積み重ねて、データを増やしていく必要があります。

東京電力は今年度中にも、新たにロボットアームを使った試験的な取り出しを行うことにしています。

【今後の分析とは 何がわかるか】
今回採取した核燃料デブリは茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の研究施設に運ばれ、1年程度かけて詳しい分析が行われる予定です。

原子力機構によりますと、デブリを分析することで溶け落ちた核燃料のほかにどういった部材が混ざり合っているかや、その硬さ、粘りけといった性質や状態がわかるほか、今後、再び核分裂反応が連鎖的に起きる「臨界」の状態になるリスクがどの程度あるかといった情報が得られるとしています。

こうした情報は、デブリが1グラム程度あれば十分得られるとしています。

分析は大きく分けて3段階で行われ、はじめに電子顕微鏡でデブリの表面を観察する「非破壊分析」をしたあと、専用の装置で切断したり研磨したりして内部の構造を調べたうえで、一部については液体の状態に溶かして元素比率などを詳しくみる「化学分析」を行う計画です。

はじめの「非破壊分析」では、最大で数十万倍レベルの高倍率で観察ができ、X線を捉えられる電子顕微鏡でデブリの表面を見て、どの部分にウランが多くあるかや、鉄の成分があれば酸化してさびているかなど元素の分布や状態を把握し、次の工程でどの部分を詳しく分析するか狙いを定めます。

次の工程ではデブリを細かく分けて内部の構造を分析します。

表面のさびを磨いて削ったり、資料を透かして見られるよう1ミリの100万分1にあたる「ナノ」の単位で、数十ナノメートルほどの薄さまで細断したりしてから高倍率の電子顕微鏡で観察し、混ざり合った元素がどのような結晶構造になっているか調べて硬さや粘りけといった性質や状態についての情報を集めます。

こうした情報は、核燃料デブリを切ったり砕いたりするのにどのような装置が必要か検討する上で必要になるということです。

最後に、一部のデブリは硝酸で溶かして液体にして化学的な特徴を調べます。

放射性物質の種類ごとの濃度やウラン元素の比率などを測定し、どういった構造物が材料となっているかや、どの程度あるのかを把握します。

目的のひとつは、デブリを取り出す際や保管中に再び核分裂反応が連続する「臨界」が発生し、大量の放射線が出る事故に至るリスクを把握することです。

こうした情報は、デブリを取り出す工法とともに、安全な保管方法を決めることにも活用することが想定されています。

研究施設の職員は「デブリはどんな物質がつながっているのかや、化学的な特徴などはわかっていない。それがわかれば、今後どう取り扱えばいいかがわかってくる」と話していました。

また、デブリの内部を詳しく分析しその成り立ちを把握することで、2011年3月の事故で原子炉内の温度がどのように上昇したかや、溶け落ちたデブリが広がり固まった状況など、事故の実態の解明にも役立つことが期待されます。

分析プロジェクトを統括するJAEA廃炉国際共同センターの荻野英樹技術主席は「今回のサンプル採取だけで全体を把握するのは難しいが、さらに多くのデブリが取れてくると、具体的な取り出し計画も立てていけると思う。採取と分析を積み重ねて徐々に中身がわかっていくのできちんと与えられた物を分析し廃炉に貢献していきたい」と話しています。

【廃炉の現在地と今後の課題】
政府と東京電力は福島第一原発の事故から40年となる2051年までの廃炉完了を目指しています。

政府と東京電力は、事故が起きた2011年に廃炉完了までの工程表を策定していて、工程は使用済み核燃料の取り出し開始までの第1期、核燃料デブリの取り出し開始までの第2期、それに建屋の解体や廃棄物の処分を含む廃炉の完了までの第3期の大きく3つの期間に分けられています。

ことし9月に核燃料デブリの試験的な取り出しに着手したことで、現在は第3期に入っています。

ただ、当初の工程表では、核燃料デブリの取り出しは事故から10年となる2021年までに着手し、その後10年から15年で1号機から3号機のすべての核燃料デブリの取り出しを完了する計画でした。

取り出しに使う予定だったロボットアームの開発が難航するなどして、計画はすでに3年遅れていて、現在の工程表からはデブリ取り出しを完了する時期の目標は記載がなくなっています。

また、1号機から4号機の燃料プールに保管されていた使用済み核燃料の取り出しも遅れています。

当初の工程表では、合わせて3108体について2021年までにすべて取り出すとしていましたが、これまでに取り出しが完了しているのは3号機と4号機だけで、1号機と2号機はがれきの撤去や除染に時間がかかり、取り出しを始めることもできていません。

現在の工程表では当初の計画から10年遅れとなる2031年の取り出し完了を目指しています。

2051年までに廃炉を終えるという目標は堅持していますが、その具体的な道筋は描かれていません。

東京電力は、核燃料デブリの取り出しの規模を段階的に拡大していく方針で、2030年代初めに3号機で本格的な取り出しを始める計画ですが、具体的な工法についてはことし3月に国の専門機関からの提言を受けて検討を続けている段階です。

さらに核燃料デブリを取り出せたとしても大きな課題が残ります。

福島県など地元自治体からはデブリを含む大量の放射性廃棄物は県外で処分するよう求められているものの、東京電力は処分方法などは第3期に入ってから検討するとしていて、先行きは不透明なままです。

そもそも政府と東京電力は検討するためのデータが限られているなどとして「廃炉の完了」がどのような状態になることを意味しているのかも明らかにしていません。

今回、少量ながら核燃料デブリを取り出したことで、さまざまな情報を得るとともに「廃炉の完了」をどうするかという議論が進むかも注目されます。

【内堀知事「廃炉へ重要な一歩」】
福島第一原子力発電所で行われている核燃料デブリの試験的な取り出し作業が完了したことを受けて、福島県の内堀雅雄知事はコメントを発表しました。

この中で内堀知事は「前例のない取組である福島第一原発の廃炉に向けた重要な1歩であると受け止めている」としています。

そのうえで、ことし9月に始まった取り出し作業が2度にわたって中断したことについて「県民の皆さんからも廃炉に対する不安の声が寄せられている。廃炉が安全かつ着実に進められることが福島県の復興の大前提で、改めて『廃炉の実施者は東京電力である』との使命感を胸に刻み、安全を最優先に、着実に廃炉作業に取り組んでください」と求めています。

【原発立地自治体の首長は】
福島第一原子力発電所で行われている核燃料デブリの試験的な取り出し作業が完了したことを受けて、福島第一原発が立地する福島県双葉町と大熊町の町長はそれぞれコメントを発表しました。

双葉町の伊澤史朗町長は「廃炉作業は一歩前進という認識。今後くれぐれも安全を最優先に東京電力が先頭に立って作業を進めてほしい」と述べました。

また、大熊町の吉田淳町長は「町が復興する大前提は廃炉作業が着実に進むことであり、安全を最優先に、また進捗状況を丁寧に情報発信しながら、いち工程ずつ確実に作業を進めるよう強くお願いしたい」と述べました。

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