人気ストリーマーが参入したことをきっかけに、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」の人口が増え続けています。「VRChat」内の空間「ワールド」が増え続けているだけでなく、日産、モスバーガー、京セラなどの大企業が公式ワールドを作成。また、有料のアバターや衣装、アクセサリーをクリエイターが制作し、人気を博しています。「VRChat」という世界が、コミュニケーションの場としてだけでなく、経済を回すプラットフォームとしても成長しているわけです。
SNSを眺めていると、「VRChat」界隈の人々の活躍する姿を目にする機会が多くなっており、興味を持っている人も多いことでしょう。そこで今回は、「VRChat」を始めるにあたってのキホンのキホンとして、VRデバイスの選び方についてお伝えします。
まず大前提として、VRデバイスには単体で動作するスタンドアローン型と、PCやゲーム機に直接接続することで動作するタイプが存在します。両者最大の違いはプロセッサー、メモリー、ストレージ、バッテリーを内蔵しているか否かです。
スタンドアローン型VRデバイスには、スマートフォンのフラッグシップ機に搭載されているのと同じぐらいの各種パーツが内蔵されており、単体でゲームやアプリを動作させることが可能です。
いっぽう、PCやゲーム機に接続するVRデバイスは、基本的にはディスプレイと大きく変わりません。ただし、外界やユーザーの動きを検知するセンサーや、外界の映像を撮影するカメラなどが組み込まれています。また、専用のコントローラーや、PCやゲーム機に接続するためのアダプターも同梱されています。
単体動作可能なスタンドアローン型VRデバイスの走りであるMetaの「Oculus Go」。コントローラーはひとつのみ。外部カメラは搭載されていません
PC接続型VRデバイス「Oculus Rift」
「VRChat」目的で、VR初心者が初めてVRデバイスを買うのであれば、低コストで参入できるスタンドアローン型VRデバイスがおすすめです。まずメリットからお伝えすると、やはりトータルの導入コストが低いことがあげられます。
価格.comの「VRゴーグル・VRヘッドセット」の人気売れ筋ランキングを見ると、「Quest 3」の128GBモデルが69,100円(税込。2024年10月17日時点。以下同)。これだけで「VRChat」だけでなく、VRコンテンツを楽しむための環境が揃うというのは大きな魅力です。
たとえば「PlayStation VR2」(価格.com最安価格63,112円)は、アダプター経由でWindows PCに接続し、PC接続型VRデバイスとしても利用可能ですが、当然このほかにもグラフィックボードなどを搭載したパワフルなWindows PCが必要。PCはスペックにもよりけりですが、快適な動作を目指すのであれば約15万円以上は必要になるでしょう。トータルで「Meta Quest 3」の3倍以上の費用がかかるというのは、導入ハードルが高いと言わざるを得ないでしょう。
「PlayStation VR2」
スタンドアローン型VRデバイスのもうひとつのメリットは、ケーブルレスで自由自在に動けること。もちろんある程度のスペースは必要ですし、プレイ中に周囲の物を破壊しないように注意しなければなりません。PC接続型VRデバイスと比べると画質は見劣りしますが、ケーブルレスのVR体験にはそれを補ってあまりある快適さがあります。
スタンドアローンVRデバイスなら、動き回ってもケーブルが体にからまる心配はありません
しかし、ひとつ注意点があります。「VRChat」のワールドには、スタンドアローン型VRデバイスでも動くものと、PC接続型VRデバイスでなければ動かないものがあるのです。スタンドアローン向けのワールドはビルドサイズが制限されており、より複雑で高度なワールドはPC専用として公開されているのです。「VRChat」を制限なく楽しみたいのであれば、PC接続型対応のVRデバイスを用意する必要があります。
「クロスプラットフォーム」にはスタンドアローン型とPC接続型両対応のワールドが紹介されています
しかしご安心を。最近のスタンドアローンVRデバイスには、基本的にPCと接続する機能が用意されています。要件を満たすWindows PCさえ用意すれば、スタンドアローンVRデバイスを、PC接続型VRデバイスとしても利用可能です。後からアップグレードできるのですから、まずはスタンドアローンVRデバイスの環境からスタートするのがやはりおすすめです。
スタンドアローン型VRデバイスも、PCに接続すれば、より高品質なグラフィックでVRコンテンツを楽しめます
現時点でイチオシのスタンドアローンVRデバイス。プロセッサーは「Qualcomm Snapdragon XR2 Gen 2」、メモリーは8GBを搭載。ストレージは128GBまたは512GBを搭載しています。価格.com最安価格は70,993円から。
片目あたり2064×2208のLCDディスプレイと、2つのRGBカラーカメラを搭載し、フルカラーで外界を表示しながらの複合現実(MR)体験も味わえます。
2023年10月10日に発売されてから、積極的にアップデートが実施されており、数多くの機能強化、改善を実施。最新のV66アップデートではパススルーにおける視覚的な歪みも軽減されています。
「VRChat」はもちろんのこと、多くのVRコンテンツがアプリストアで提供されており、VRデバイスの定番的な存在です。
2024年9月20日に発売されたばかりのVRデバイス。価格.com最安価格は89,800円。環境追跡カメラ×4、カラーシースルーカメラ×2、iToF深度センサーカメラを搭載。歪みの少ない高品質なカラーパススルー映像によるMR体験を実現していると謳われています。
独自のアプリストア「PICOストア」からは「VRChat」をはじめとした多くのVRコンテンツを入手可能。また、「VRChat」に対応している「PICO Motion Tracker」が用意されており、足首に取り付ければ全身トラッキングで「VRChat」をプレイできます。
アプリの数は「Quest」シリーズに及びませんが、Windows、Mac、iOS、Androidの画面をキャスティングできる「PICO Connectアプリ」なども用意。今後の発展、アプリストアの充実が楽しみなVRデバイスです。
2024年10月18日に発売されたばかりのVRデバイス。最新モデルだけにスペックが充実しており、プロセッサーは「Qualcomm Snapdragon XR2」、メモリーは12GB、ストレージは128GBを搭載。VRデバイスとしては珍しくmicroSDメモリーカードスロットが用意されており、ストレージ容量を最大2TBまで拡張可能です。
LCDディスプレイは片目あたりの解像度が2448×2448、リフレッシュレートが90Hz、視野角が最大120度。トラッキングカメラ×4、アイトラッキングカメラ×2、フルカラーパススルーカメラ×2のほか、近接センサー、深度センサー、赤外線センサー、ジャイロスコープが搭載されており、カメラ、センサー類が充実しています。
スタンドアローン型としても、PC接続型としても利用でき、「VRChat」も遊べます。目と手のトラッキングに加えて、最大5台の「VIVEトラッカー(Ultimate)」によりフルボディトラッキング、「VIVE Focus シリーズ用フェイシャルトラッカー」によりフルフェイストラッキングが可能。アバターで体の動きだけでなく、顔の表情まで表現でき、ほかのVRデバイスとは表現力が段違い。公式サイトでの販売価格が169,000円(税込)と高価ですが、非常に魅力的な製品です。
予算に余裕があれば、ハイスペックな「VIVE Focus Vision」も候補に入れてみてはいかがでしょうか。