★阪急電鉄★正雀工場のバッテリーロコ
私鉄のスイッチャーシリーズ。締めとなる第3回は、阪急電鉄のスイッチャーです。
■正雀駅ホームより正雀車庫を臨む 2011年9月20日
阪急電鉄正雀工場は、1968年12月に正雀車庫の西側に新設された車両工場で、阪急電鉄全車両の全般検査、重要部検査の施行、および更新・修繕工事等を実施しています。
1968年以前の車両工場は、京都線用車両を担当する(旧)正雀工場と、神宝線用車両を担当する西宮工場に分かれていました。これは、京都線(元 新京阪電鉄)と神宝線(元 阪神急行電鉄)の成り立ちの違いに由来します。京都線は開業時から直流1,500Vで電化されていたのに対し、神戸線は1967年に、宝塚線は1969年に昇圧されるまで、架線電圧は直流600Vでした。昇圧に伴い、車両工場も現在の正雀工場に統合されることになりました。
■重連で建屋から出場してきたバッテリー機関車 2011年9月20日
工場内で入換に従事するスイッチャーは、工場の営業日である平日に動きます。2011年9月19日に奥野さん、西宮後さんに誘われて峠のバッテリー機関車を撮影し、翌朝9時頃訪れてみると、早速撮ることができました。二日連続でバッテリー機関車を見られるとは思いませんでした。
重連で出場したバッテリー機関車は一旦停止し、建屋の前で切り離された先頭のBL1が、単独で手前(北側)に移動してきました。キャブの中をのぞいてみると、後ろのBL2にも運転手が乗っていますので、2台別々に同時に動くこともありそうです。
手前に引き上げてきたBL1が左奥へ移動し、今度はBL2も同じように引き上げ、右奥へ移動しました。どうやらこれから電車が入場するようです。
正雀駅側から、大阪市交通局堺筋線直通運転対応の3300系電車が入換扱いで入場します。
種別幕が「普通」から「救援」へと変わりました。どうも工場入場中の車両はこの幕を表示していることが多いようです。
河原町寄りの4両が切り離され、北側の突っ込み線へ引き上げると、残された梅田寄りの4両もほぼ同時に正雀駅側へ引き上げます。
河原町寄りの4両が、救援幕を出したまま推進運転で工場建屋へと入場します。
同時に梅田寄りの4両が推進運転で40番線に入線します。
それが終わると、右側に待機していたBL2が動き出し、入場した編成の先頭に連結されました。そのまましばらく動きが無かったので、1kmほど離れた場所にある別の車両基地へ移動しました。そこにもスイッチャーが配置されているのです。
11時頃に戻ってみると、今度はBL1が工場建屋から電車を引き出す場面に遭遇しました。同じ3300系でしょうか。
正雀工場の入換機BL1、BL2は、2011年3月に導入されたバッテリー機関車です。製造者は、バッテリー機関車の製造で有名な新トモエ電機工業です。昨年報告したJR西日本吹田工場の15屯バッテリー機関車がほぼ同型ですが、細部は異なります。
このオレンジの機関車が吹田工場の車両ですが、まず注目すべきなのはボンネットの長さの違いです。
吹田の車両はボンネット端が台枠端より内側にあり、端梁とボンネットの間にスペースがありますが、正雀の車両はボンネットが端梁まで伸びていて、端梁と面一になっています。ボンネットには蓄電池が格納されていますから、ボンネットが長いのは蓄電池容量が大きいためか、死重を積んでいるためと思われ、その分自重は吹田の車両(15t)より大きく20~25t程度はあるのではないかと思われます。詳細スペックについては、鉄道ピクトリアル2012年2月号をご覧ください。
引き出された電車は、正雀駅方向に向かって押し込まれ、
転線して40番線に引き込まれます。
この位置まで引き込まれて止まりました。すると今度は…
工場建屋からBL2が別の電車を引き出しました。系列はよく分かりませんが、編成をさらに分割して別の線路へ押し込んでいきました。
正雀工場は歩道の無い道路からフェンス越しに撮ることしかできないため、報告が少ないですが、新型バッテリー機関車の動きを捉えることができたのは幸運でした。この場所は平日の交通量が大変多いため、車の往来には気を使った方がよさそうです。
●初代BL1、BL2
以前、大阪市交通局緑木検車場のバッテリー機関車の記事で紹介しましたが、正雀工場では2011年3月まで日本輸送機製のバッテリー機関車が使用されていました。記号番号は同じくBL1、BL2でした(初代BL1、BL2とします)。新型機の切り抜き文字のナンバーを見る限り、BL1、BL2共に初代BL1、BL2のものを剥がして取り付けているようです。2011年3月に初代BL1、BL2が廃車になり、解体待ちのため工場裏手に置かれていた際に、ナンバーの切り抜き文字が取り外されているのを目撃した方がいますので、間違いないでしょう。
ところで、初代BL1、BL2には、ナンバー以外にも見分けるポイントがありましたがご存知でしょうか。上の写真で比較するとよく分かりますが、初代BL1とBL2は、製造年が異なるため屋根形状が異なっていました。また端梁に施された黄色いラインが、BL1は1本、BL2は2本という相違点もありました。新型機には、このような分かりやすい見分けポイントはありませんが、よくみるとちゃんと違う部分があります。気づきましたか?
【参考】
- 『鉄道ピクトリアル』特集 阪急電鉄、1989年12月増刊号
- 『鉄道ピクトリアル』特集 阪急電鉄、1998年12月増刊号
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