「みんなで大家さん」が悪あがき?/謎の米国法人・ロイズ・キャピタルと「1兆円契約」

9月初旬に現れた「ロイズ・キャピタル」とは、一体何者なのか。もはや悪あがきにしか見えない。

2024年11月号 DEEP

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栁瀨健一総裁(共生バンクHPより)

6月の行政処分以来、帰趨が注目されている不動産投資商品「みんなで大家さん」を巡り海外絡みの動きが慌ただしい。

9月初旬に突如現れたのは「ロイズ・キャピタル」なる米国法人。8月30日付で大型契約を交わしたらしい。運営会社の都市綜研インベストファンドはじめ「共生バンクグループ」が持つ千葉県成田市の開発用不動産を11月末までに買い取ってくれるという。約46万㎡の開発プロジェクト全体に対し見積もられた価値はじつに約100億ドル(約1.4兆円)だそうだ。

この何とも奇特なロイズ社とは一体何者なのか? ホームページによると、創立者はハリッド・アラブ氏なる人物。似た風貌を持つ同姓同名の元格闘家がいるようだが、同一人物かは不明だ。経営チームにはマイク・ポンペオ元米国務長官や前田匡史・国際協力銀行会長も加わっているとされる。確かに、米国デラウェア州で登記されていることは確認できるが、設立は今年2月23日とごく最近で、活動実態のほどは不明である。

件の成田プロジェクトは栁瀨健一総裁率いる共生バンクグループにとってカネの成る木だ。成田空港に隣接した山林・原野はもともと騒音指定区域かつ市街化調整区域という不毛の地。ところが、共生バンクが開発事業者に名乗りを上げ2019年に都市計画決定された。グループは「成田ゲートウェイプロジェクト3号」(以下、3号社)など受け皿会社を相次ぎ設立、旧地権者から土地を買い上げていった。

そして、それらの土地が切り売りによって投資商品化されていったのがこれまでだ。成田案件を中心に一般投資家から集めた出資金は24年3月末で約1978億円にまで膨張した。成田の土地は今なお造成工事中で外部収入は皆無だが、一方で投資家への分配金は払われ続けている。カネの出所を遡れば、それは次々と組成され続ける関連商品に拠出された新たな投資家による出資金でしかない。

ところが今回の行政処分である。監督官庁の厳しい態度からか、主力の成田をはじめ新規商品の組成はストップしたまま(一部投資家にのみ案内している新規商品がある模様だが詳細不明)。他方で中途解約の受け付けは7月末に再開されているから、グループの資金繰りは厳しくなる一方に違いない。

じつは、栁瀨氏は成田案件をテコにした資金調達を香港でも模索していた。傘下の現地上場企業「ジャパン・キョウセイ」に前出の3号社など4法人(土地約5万㎡を所有)を40億香港ドル(約800億円)で買い取らせる計画だ。それにより株価の高騰を目論んだのかもしれないが、6月中旬の発表後、行政処分を挟んで譲渡は実行されないままだ。それとは別に英国でも動いている。関連商品の販売代理人「みんなで大家さん販売」は8月中旬、驚くべきことにロンドンの新興市場でSPAC上場を実現。合併先はやはり香港資本系だった。株価は不気味に上昇、直近で時価総額は150億円近くにまで達している。

そんな中、今回、謎の米国法人まで登場した。おそらく解約に浮足立つ投資家を落ち着かせたいのではないか。もっとも、国際協力銀行によると、前田氏が兼職している事実は「一切ない」という。英国の金融保険グループをも連想させるロイズ社の存在はじつに怪しげなものだ。一連の動きは悪あがきにしか見えず、むしろ雪隠詰めが濃厚な情勢ではないか。

   

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