だから私は派閥をやめた 岩屋元防衛相、古川元法相に聞く決意【政界Web】

 自民党派閥の裏金事件を受け、党内に六つあった派閥のうち岸田派(宏池会)など4派が解散を決めた一方、麻生派(志公会、55人)と茂木派(平成研究会、45人)は「政策集団」として存続することになった。こうした中で、岩屋毅元防衛相(66)=衆院大分3区=と古川禎久元法相(58)=衆院宮崎3区=はそれぞれ所属していた麻生派と茂木派から退会した。2人に理由や政治改革への決意を聞いた。(時事通信政治部 中司将史)

岩屋氏「政策集団の実態なかった」

―裏金事件をどう受け止めているか。

岩屋氏 派閥がカネを集めて配る仕組みが事件の温床となった。やはり派閥は見直す必要がある。派閥は議員の任意団体だが、人事や資金配分に強く関与していた。目の前の「政治とカネ」の問題だけに着目するのではなく、この構造問題にメスを入れないと自民党の再生はない。

―麻生派を退会した理由は。

岩屋氏 岸田文雄首相(党総裁)が、総裁派閥(岸田派)を解散したのは大きな決断だった。これを機に全ての派閥がいったん解散し、さら地から新しい自民党をつくることが必要だ。麻生派が解散しないなら、同調しかねるので退会した。

 人間関係などさまざまな理由で集まっていたのが今までの派閥だ。本当の政策集団と言えるまでの実態はなかった。これからは思想や信条、政策的方向性を共有できる人がフレキシブル(柔軟)に集まり散じるという形でいい。

 政党や派閥は政治の道具にすぎない。道具に縛られあちこちに気を使っているような政治家は何人いても役に立たない。一人一人の政治家が自立していることが何より大事だ。

―派閥には人事調整や若手の育成機能もあった。

岩屋氏 そうした機能のほとんどは党が代替可能だ。当選した政治家は毎朝、党本部に行き、関心がある部会などの議論を聞き、時には発言するというところからスタートする。そうやって守備範囲が広がり、やがて部会長や政務官、副大臣などを経験する。機会均等でみんなに勉強のチャンスを与えていくことが大事だ。

 議員連盟でも勉強はできる。政治家は小学生ではない。国政を任せるにふさわしいと思って選んでもらっているのだから、自分で学んでいくことが何より大事だ。

―政治の信頼回復には何が必要か。

岩屋氏 発端は「政治とカネ」の問題だ。政治資金の透明化を図るために関連法律の厳格化、厳罰化はしっかりやらなければならない。リクルート事件を受けて作られた政治改革大綱に基づき大議論をしたのが今から約30年前。解消すると言っていた派閥が温存された。この30年でほころびてしまったものをどう修復するか、その議論をしっかりやることが必要だ。

古川氏「メリット感じなかった」

―裏金事件をどう受け止めているか。

古川氏 極めて深刻だ。政治に対する信頼が地に落ちた。国民が物価高に苦しむ中、政治家だけがお手盛りでずるいことをしている。金に汚いことをしている。こんな政治家の言うことを一体誰が素直に聞けるのか。どんなにいい政策を訴えても、もはや聞いてもらえない。政治にとって致命的な出来事だ。


―茂木派を退会した理由は。

古川氏 自民党はこれだけの不祥事を起こしてしまった。そうであれば、よほどの覚悟を持って自己改革をする決意を国民に見てもらうことがスタートラインだ。首相が自らの母体である岸田派を解散し、率先して範を示した。派閥が良い悪いという議論はあるかもしれないが、総裁が覚悟を示したのだから、その決断の下に結集する。派閥を全て解散してさら地にし、新しい政治を考えようということだ。政治刷新本部の場でもそうした発言をしてきたし、自分の言動に責任を持ちたい。

―派閥に所属してメリットはあったか。

古川氏 感じない。派閥がなぜできるかというと、総裁選に直結しているから。総裁や代表を選ぶ政党でグループができるのは当然だが、カネやポストに関与することが問題だ。そこはけじめをつけるべきだ。

 派閥は解散してもすぐ復活するとの指摘があるが、総裁選の仕組みを見直すことも一つの考え方だ。自民党の場合、立候補には党所属国会議員20人の推薦人が必要で、これは相当難しい。例えばこのハードルを下げ、全国の党員や地方議員などの意向をくみつつノミネートさせるシステムにすれば民意により近いところで総裁を選べる。そうなれば自然と派閥の必要性は消滅していくだろう。

―政治の信頼回復には何が必要か。

古川氏 政治資金の透明化、国会改革、選挙制度改革を三本柱とする「令和の政治改革」をやらなければ駄目だ。必要な法整備は来年の通常国会までに整えるぐらいのスケジュールを描き、一つ一つやっていくことだ。

 来年の通常国会でやり遂げたところで衆院議員は(10月に)任期を迎える。もし、それまでに衆院解散があっても、こうした政治改革をやりつつある途上だという姿を見せた上で国民の審判を受ければいい。ここで信頼を取り戻すことができなければ自民党は終わる。最後のチャンスだ。

(2024年2月23日掲載)
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