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楳図かずおさん、ホスピスで「量子コンピューターに負けない」と新作構想…最期もドリンク剤
あの元気な笑顔と「グワシ!」のポーズはもう見られない。恐怖とギャグで一世を 風靡 した漫画家・楳図かずおさんが世を去った。朗らかな人らしく、最後は安らかに逝ったという。
在りし日の楳図かずおさん(2005年撮影)※キャプション別送します
楳図さんは7月に東京・吉祥寺の自宅で倒れて病院に搬送され、末期の胃がんと判明。手術はせず、9月から都内のホスピスで終末期ケアを受けていた。
ベッドの上でも創作への熱意は衰えず、面会に訪れた記者に、「人間が機械に負けるわけにいかない。僕は量子コンピューターに負けないような物語を作る」と力強く語り、温めている新作の構想の一端を明かすとともに、「元気になったら、この作品の絵を描かなきゃね」とも話していた。
8月には、自らの著作権を一括管理する「一般財団法人UMEZZ」を設立し、作品を未来に残すため、様々なイベント企画の実現に意欲を燃やしていた。
「痛いのは嫌い」と、注射も点滴も受けず、投薬のみの治療だったが、10月に入って急速に体力が低下。入院後、ずっと付き添った同財団の上野勇介代表理事によると、同月28日午後、看護師にお気に入りのドリンク剤とおにぎりを所望し、ドリンク剤を少し口に含んで「おいしい」と言い、まもなく息を引き取ったという。
「とても安らかな顔だった。あまりに突然のことで驚いたが、『最後に苦しいのはいやなので、眠るように逝きたい』という先生の言葉通りになった。それがせめてもの慰め」と、上野代表理事は肩を落とした。
漫画家・楳図かずおさん(2013年)
関係者のみで行われた葬儀では、トレードマークの赤と白のボーダーシャツと赤いキャップ姿でひつぎに納められた。遺影は「グワシ!」のポーズ。祭壇も赤いバラや白いカーネーションなどでしま模様に飾られ、最後まで楳図さんらしさを貫いた。
(文化部 石田汗太)
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