鳥取 猫の殺処分ゼロを目指して カギを握るTNRと地域猫活動とは
- 2024年10月09日
私たちの身近に暮らす動物、猫。「殺処分ゼロ」を目標に掲げる鳥取県では、地域にいる飼い主のいない猫たちとどう共生していくのかが課題となっています。その解決の一歩となるのが「TNR」と呼ばれる活動です。どんな取り組みなのか、活動を続ける女性を取材しました。
共生への一歩 “TNR”活動とは?
こちらのグラフは、鳥取県内の保健所が1年間に引き取った猫の数を示したものです。「殺処分ゼロ」の目標を掲げている鳥取県で、その数は年々減少しています。というのも、飼い主のいない野良猫について、地域に悪影響を及ぼさないと考えられる場合は引き取りを断っているからです。そこで課題となるのが、地域に残る飼い主のいない猫たちとの共生です。
猫は年に2回から4回出産が可能で、エサなどの環境が整えば1匹のメス猫から1年で20匹以上も子猫が生まれることもあります。地域で猫が増えすぎると糞尿、鳴き声、交通事故などのトラブルが増えかねません。そこで、人と猫との共存には、繁殖力の強い猫が地域に増えすぎない環境をつくることが重要となっています。そこで鍵を握るのが“TNR”活動です。
Trap(トラップ)=猫を捕獲器で捕まえ、Neuter(ニューター)=不妊去勢手術をし、Return(リターン)=元の地域に戻す。それぞれの頭文字をとって「TNR」活動と呼ばれています。
保護するだけでは解決しない
動物愛護グループ「猫じゃらし」の丸本千尋さんです。14年前、ゴミ置き場に捨てられていた猫を飼い始めたことをきっかけに猫の保護活動などに参加するようになりました。
7年前にグループを立ち上げた丸本さん。10人のボランティアメンバーとともに、動画配信やSNSを通じて保護した猫を紹介しています。さらに県中部で譲渡会も行っていて、これまでに400匹近くの猫を新たな飼い主とつなげてきました。しかし保護だけでは、増え続ける猫に対応が追いつかず、活動には終わりが見えなかったと言います。
動物愛護グループ「猫じゃらし」丸本千尋さん
殺処分ゼロにするためには、野良猫を減らさないと始まらない。(ところが)餌をあげているところでは、赤ちゃんが産まれている。『これをどうやって問題解決していったらいいのかな』って思いました。
そこで力を入れ始めたのが“TNR”活動でした。TNRをすることで、猫の過剰な繁殖を抑え、保護の対象となる猫を減らすことができるのです。
TNR活動の現場 住民からのSOS
この日、丸本さんは「外でエサをあげていたメス猫が子どもを産んで増えてしまった」という相談を受け、TNRを実施するために現場へ向かいました。
猫の通り道や活動する時間帯を見極め、捕獲器を設置します。
設置から6時間後、この日の目標にしていた親子を無事捕獲できました。丸本さんは、不妊去勢手術のために猫たちを病院へと連れていき、翌日迎えにいって元の地域に戻しました。
不妊去勢手術の際には、麻酔をした状態で猫の耳先をカット。通称「サクラ耳」にして、地域に戻した猫が、ひと目で手術済みと分かるようにしています。
これまで丸本さんが行ったTNRの件数は、4月から9月前半の約半年で77件に上ります。人と猫が共生できる環境を目指し、保健所などと情報共有をしながら、猫に困っている人がいれば現場に駆けつけてきました。
糞とか尿とか猫のことで困っていた。うちの屋根に登ってきてされたりとか、車庫の前にもされて。実際にこうやって動いていただけるのは「猫じゃらし」さんですよ。
結局、猫の問題というよりは人の問題が一番大きいと思うんです。私たちが住民の方の悩みに寄り添って、そして動かないといけないなといつも思ってます。
課題は費用と地域の協力
一方で、課題もあります。TNR活動には、猫の捕獲場所までの交通費や捕獲するためのえさ代の費用がかかります。グループではTNRのほかに新たな飼い主を見つける活動も行ってきましたが、譲渡先が見つかるまでには医療費や世話代がかかります。丸本さんは活動を始めた当初、こうした費用を年間25万円から30万円ほど自己負担していたと言います。
動物愛護グループ「猫じゃらし」丸本千尋さん
(活動を)一回やめようと思ったことがあるんです。本当にお金がないと成り立たない。医療費というのが絶対、何万円かかかっているんです。
現在では、TNRの捕獲にかかる費用などは依頼主から寄付をもらうことにしていて、手術代は各市町村の助成でまかなっています。しかし、運営は赤字で、足りない部分はメンバーが負担することもあります。
また、猫の数を抑えるだけでは猫との共生ははかれません。鳥取県が推奨するのが、「地域猫活動」。飼い主のいない猫を地域全体で育てて見守る取り組みです。
具体的には、丸本さんも活動を行うTNR。そして、エサやりのルール化です。エサは決まった時間、個体数分の皿で用意し食べ終わったら下げます。エサを置いたままにしていると、ほかの地域から新しい猫が来て再び繁殖につながる可能性があるためです。
そして3つ目がトイレを設置し、糞尿被害の防止に努めることです。これらが出来て「地域猫」として成り立ちます。
それぞれの共生を目指して
TNRの活動をもっと知ってもらいたいと、丸本さんたちはこの夏初めて、小学校高学年の親子を対象にした勉強会と譲渡会のイベントを企画しました。勉強会には13組の親子が参加し、譲渡会にはさらに14組が訪れました。
すごくためになりました。まだまだ知らないこともたくさんあって、もっと勉強していかないといけない。
こういうの初めてで、子どもも来て良かったって言っていたので、すごく良かった。
動物愛護グループ「猫じゃらし」丸本千尋さん
猫に対する考え方はいろいろとあるけども、一番の理想を探し当てたらやっぱり“TNR”につきるんじゃないかなって。年々頭数も減りますし、そこで私たちは貢献できていけたら。
地域にいる飼い主のいない猫とどう共生していくのか。猫も人も、猫好きもそうじゃない人も、対立ではなく調和のとれた良い関係を築くため、丸本さんの活動は続きます。