NY市で「信号無視」合法に 違反切符の人種差別に配慮
【ニューヨーク=長尾里穂】米ニューヨーク市で4日までに、信号無視や横断歩道のない道の歩行を認める法案が成立した。これまで違法だったが、違反切符を切られる対象が有色人種に集中しているとの批判に配慮した格好だ。一方、市民からは交通ルールが緩むことで道路上の安全が確保できなくなることを危惧する声が出ている。
信号無視や横断歩道のない道の歩行は「ジェイウォーク(Jaywalk)」と呼ばれる。「愚かな人・怠け者」を意味する俗語の「ジェイ」が派生してできた言葉だ。このジェイウォークを認める法律が2025年2月から施行される。
ニューヨークでは1958年から信号無視などが取り締まられ、違反者は250ドル(約3万8000円)以下の罰金が科されていた。ただし、市内では信号無視が横行しており、法律は事実上守れていないとの指摘が多かった。
法律が機能してしないとの指摘に加え、取り締まりに際して人種差別が生まれているとの批判が根強かった。この問題を調べた市議会の報告書によると23年に違反切符を切られた人の92%以上が黒人やラテン系だった。黒人やラテン系住民を取り締まる「口実」として使われているとの見方すらあった。
報告書は「法律の有無で歩行者の行動が変わるといった証拠はない」としており、法律によって交通安全が保たれているとの証明は難しいと指摘していた。
市内の弁護士からなる法律扶助会は今回の法案を歓迎している。「市警は法律を使い、特に有色人種の身体検査をしてきた。公共の安全に役立たない法律が、人々を刑事罰に巻き込んできた。今後の執行状況を監視していく」との声明を出した。
一方、交通安全の悪化を危惧する声が出ている。市議会でも「市民に間違ったメッセージを送ることにつながる」と反対する議員は少なくなかった。こうした懸念を反映して法律には「人々の安全配慮義務が免除されるわけではない」と盛り込み、市民に引き続き、注意を促している。
ニューヨーク市交通局によると危険な横断で命を落とした歩行者は過去5年で200人に上る。歩行者の死亡事故のおよそ3割を占めている。
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(更新)- 山崎俊彦東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授貴重な体験談
大変危ないので、信号は守るべきだと思いますが、海外経験の長い方からこんな話をきいたことがあります。「(信号無視を始め)現地の人と同じ行動をとらないと、観光客だと思われると詐欺やスリ・強盗に狙われやすくなる。」と。法規を守るべきか、身の安全を守るべきか、考えさせられる発言でした。
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