NHKのラジオ国際放送で8月、中国人スタッフが尖閣諸島(沖縄県石垣市)を「中国の領土」と主張し、「南京大虐殺を忘れるな」と発言するなど前代未聞の放送事故が起きた。NHKは9月に関係者を処分したが、公共放送で「電波ジャック」ともいえる事態をやすやすと許した責任は大きい。問題の根底には何があったのか。作家の奥窪優木氏に話を聞いた。(聞き手 大森貴弘)
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NHK国際放送での問題発言で強く感じるのは、外国人と日本人の間の埋めがたい隔たりだ。ごく普通の中国人が日本に長年住んでいても、歴史など機微に触れる問題になると突然爆発してしまう。中国人全員が危険というレッテルは決して貼ってはいけないが、たまたまNHKが舞台になっただけで、どこで起きてもおかしくないと思う。
中国籍スタッフは20年以上も日本に住んでいたのに、日本社会と分かり合えなかった。その証左と言えるのが、彼が中国に帰国した後に応じたインタビューの中身だ。
靖国神社の落書きを伝えるNHKのニュース原稿について「便所という言葉が落書きされたと報道し、破廉恥行為にしようとした」と述べた。日本人は普通、中国人が靖国神社に落書きしたら政治的な理由があるのが当たり前だと思う。「破廉恥行為」だと捉えるわけがない。根本的な意識のずれがあると実感した。