NHKのラジオ国際放送で8月、中国人スタッフが尖閣諸島(沖縄県石垣市)を「中国の領土」と主張し、「南京大虐殺を忘れるな」と発言するなど前代未聞の放送事故が起きた。NHKは9月に関係者を処分したが、公共放送で「電波ジャック」ともいえる事態をやすやすと許した責任は大きい。問題の根底には何があったのか。自民党情報通信戦略調査会副会長の片山さつき氏に話を聞いた。(聞き手 大森貴弘)
◇
かつて自民党のクールジャパン戦略推進特命委員会の幹事長を務めており、和食などの日本文化を世界に発信することには並々ならぬ思い入れを持っている。NHKが国際放送で日本の立場を世界に発信することは非常に重要だし、期待もしているのだが、今回の事態はそれ以前の問題だ。あまりにも初歩的なミスで、情けないとしか言いようがない。
今回の問題から浮き彫りになった課題は、大きく2点あると思う。1点目は、問題が起きた後の対応。具体的には謝罪・訂正放送のあり方だ。NHKは8月19日の放送当日の夜、ラジオで訂正放送をしているが、単に「間違いがあってすみませんでした」と言っただけ。どこをどう間違えたのか、明確でなかった。稲葉延雄会長も出席した自民党情報通信戦略調査会では、この点を強く指摘した。
その結果、NHKは8月26日に総合テレビなどで5分間の謝罪放送をした。尖閣諸島や慰安婦について日本政府の立場や見解をしっかり説明したが、こうした原状回復放送は指摘される前にすぐやるべきだった。問題発言があったのだから、原状回復は当然だ。その対応ができなかったこと自体、NHKがリスクに鈍感だった証左といえるだろう。