旧ジャニーズ事務所が衝撃の事実を発表してから一年。
実はその対応に感心しきりだった。
前任の絶対的支配者がやらかした超特大不祥事に、後任の代表達が出した答えは不祥事対応の教科書にしたいほど完璧だった。
許される方法などあるはずもない人類史上最も愚かな行為の清算のため、彼らは第三者委員会に調査権を与え、徹底的に調査した。
元検事総長も入った委員会は調査報告とともに、今後の対応を提言した。
「解体的出直し」
報告から1週間後の会見では事実を認めて謝罪したが、「社名は残す」など、提言を受け入れ難い様子が合間見えた。
が、彼らはすぐ「唯一解」に気づいた。
「事務所が考えた最強の解決法」に正解は無く、第三者にオーソライズされた提案を忠実に履行することが、存続を許されるための唯一解なのだと。
「第三者に提案させ、それを守ることで不祥事を乗り越える道を切り開く」手法は手本になるし賢いと思った。
翌月、再度会見した社長らには何の迷いもなく、第三者委員会の提言通りの言葉を選び、何度も「解体的出直し」に触れながらそれを遵守する決意を示した。
代表も手紙で「全ての過去の功績を消し去りたい」と思いを綴っていた。
針の穴を通すより狭い唯一解に、僅か1月で辿り着いた彼らにどんな葛藤があったか想像に難くない。
権力を使った余りに卑劣な愚行に「絶対に許さない」と考えていた僕も、後任の代表の決意と本気を見せられて、敬意を持って応援しようと思った。
前任の特大不祥事対応なんて僕なら絶対に引き継ぎ担当したくないし。
事務所は満点を超えるロードマップを公表したので、あとはそれが守られるか見届けるだけ。
個人の不祥事なら翌日から即消されるが、会社の不祥事には多少は時間がかかるだろうとは思っていた。
テレビを殆ど見ないしタレントの名前も知らない僕は、ジャニーズの名前が消えたから本当に綺麗さっぱり消えて約束は守られたと思っていた。
が、年を超えてもなお芸能活動を続け、未だに過去の楽曲を使ったり、過去の自分の番組に出演しているとチラホラ聞こえてくる。
「過去の功績を消し去る」と手紙で示した決意は一体何だったのか。
もしや、全ての対応と2度の会見も全て見事な演技で、僕はそれを信じて騙されてしまったのか?
そんな不安が過ぎり始めた一年目。
あの再出発の決意に嘘偽りなどあるはずがない,と今のところまだ信じています。