キャリア・教育

2024.11.03 08:00

Z世代のMBA出願が急増、企業の「学歴不問」採用が増える中 米国

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企業は採用要件から「大卒」を外しつつあるが、MBA(経営学修士)への出願は急増している。米大学院管理入学評議会(GMAC)によると、MBAプログラムへの出願は昨年から12%増加した。実際、調査に参加した学校の80%が2年制のMBAプログラムへの出願が増加したと回答している(例えば、ニューヨーク大学のスターン・スクール・オブ・ビジネスへの出願は40%近く増加した)。

 一方、半数近くの企業が今年、採用要件から「大卒」を外す予定だ。CNBCテレビによると、こうした動きは大学を卒業していない米国の労働者の約62%に追い風となる可能性があるという。だが、教育などの情報を提供するオンライン雑誌「インテリジェント・ドット・コム」の調査結果によると、現在、中級職では半数以上、上級職では20%近くで修士号はおろか学士号も求められていない。多くの雇用主が採用時に学歴不問とする中で、なぜZ世代はMBA取得に熱心なのだろうか。MBAは職を求めているZ世代に欠けている経験なのだろうか。

職場での冷ややかな評価に対抗

フォーブスのシニア・コントリビューター、ジェイソン・ウィンガードによると、大卒であることが就職に有利だった時代は終わった。「雇用主はもはや、大卒者が仕事に必要なスキルを備えて入社してくるとは思っていない(かつては真っ先に採用候補となることを保証していた名門私立大学8校の学位の価値さえ疑問視している)。採用の対象を広げることで、企業はかつて学士号を持っていないために要件を満たしていないとみなしていた有望な求職者を見つけたいと考えている」とウィンガードは書いている。

昨年のMBAプログラムへの出願は前年比4.9%減となり、過去5年間で最大の減少となった。おそらく今年の出願数の急増は過去の減少の反動だろう。よく言われている近ごろの新卒者のモチベーションやプロ意識、コミュニケーションスキルの欠如についてフォーブスは報じている。実際、最近の調査では75%の企業がZ世代の採用に満足していないと回答している。MBAを取得すれば、Z世代は職場での芳しくない評価に対抗できるのだろうか。

MBAを取得するとキャリア形成のためのライフスキルが身につく。さらに教育を受けることでプロ意識の体得につながり、現在の職場でZ世代が直面している逆風に立ち向かうことができる。MBAプログラムの経験は貴重なビジネススキルを得るための第一歩となるのに加え、新たな人脈の構築、雇用主やチャンスの発掘につながる。高い学位は自分のキャリアにかなり注力していることを示すことができる。だが、決して学歴がすべてではない。それ以上のスキルが必要だ。
次ページ > 本当に優秀な人たちはコミュニケーションスキルに取り組んでいる

翻訳=溝口慈子

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2024.10.31 11:00

「中高年こそ、不調に耳をすませ」。あなどれない40代・50代の疲労感と細胞の「サビ」

疲労感に悩み、パフォーマンスを発揮できない40代・50代のビジネスパーソンは少なくないだろう。「疲れと眠りのクリニック淀屋橋」院長の中富康仁とサントリーウエルネス生命科学研究所研究主幹の竹本大輔が、その原因や対策について語り合った。

疲労感は医学的に未知の領域

竹本大輔(以下、竹本):中富先生は学会でお見かけしたことがあり、お会いできることを楽しみにしていました。

中富康仁(以下、中富):私はもともと大阪市立大学で臨床や研究をしていたので、学会で発表する機会がよくあります。疲労感はありふれた症状ですが、実は医学的にはまだわからないことが多いんです。

病院で検査して異常がなかったら、「ストレスです」とか「疲れていませんか」と聞かれることがありますが、それらは「もうそれ以上はわかりません」と言っているのに等しい。

そのわからなさに興味があり、研究していたのですが、大学の病院に来られる患者さんには「もっと早く診ていたら早くよくなっていたのに」と思う方がたくさんいらっしゃいました。町医者のほうがスピーディーに診察できるのではないかと思い、疲労に特化したクリニックを2014年に開業したのです。

竹本:私は、サントリーウエルネスに入社してからポリフェノールや成分セサミン、アスタキサンチンなど植物由来の機能性成分を研究してきました。その一環で、疲労感に注力してきました。疲労感のメカニズムは複雑ですが、ひとつの観点として、細胞の酸化が関わっているのではないかという仮説に着目して、研究を続けてきました。

竹本大輔 サントリーウエルネス生命科学研究所研究主幹

竹本大輔 サントリーウエルネス生命科学研究所研究主幹

「40代・50代の8割強が疲労感を覚えている」。独自調査で発覚

中富:特に疲労感を覚えやすくなるのは40代以降と言われています。自然と老化が進み、それが日々の生活に影響を及ぼします。加えて40代・50代はビジネスにおいてもさまざまな責任を負わなければならない世代ですよね。人によっては子育てや介護など家庭の事情も関係して、日々の不安も出てきます。

そうすると、健康診断の結果から運動するよう医者に言われても、それをする余裕も生まれにくい。疲労感で頭が働かないとか、仕事が進まないという人もいますし、休日に寝っぱなしになってしまう人もいます。

竹本:当社が40代から50代の男女1,000名を対象に行った疲労感に関する調査*1では、「6カ月以上疲労感が続いている」と回答した人が86%に達しました。ここまで多いとは思っていなかったので驚きです。疲労感を感じるシチュエーションとしては「朝の目覚めがよくないとき」が38.5%の1位でした。

中富:ダメージを軽減するうえで重要なのが睡眠ですが、十分にはとれていないのでしょう。

竹本:寝付けない人も32.1%と高い数字でした。

中富:日が落ちて暗くなってくると、いわゆるメラトニンという睡眠のホルモンが増えていくのですが、夜になって、また寝る直前までパソコンやスマホで作業しているとメラトニンが現れず、寝付きにくくなります。さらに、日中に最大限パフォーマンスを発揮しようと思ったら、個人差はあるものの、7〜8時間の睡眠が必要だと言われています。

竹本:睡眠の質を高めるにはどうすればいいのでしょうか。

中富:まずは睡眠時間を確保することが重要です。眠りを深くするには、日中にある程度運動したり活動したりする。いわゆる「スリーププレッシャー」です。ただし、忙しかった後に運動するとかえって眠れなくなることもあるので、余裕のあるなかで行うべきです。

デスクワークをしているなら、時々立ち上がって歩くのも一手ですよね。血の巡りがよくなるし、クリエイティビティも刺激されると思います。毎日、同じ時間に起きることが大事なので、逆に、週末の寝だめはよくないとされています。かえって疲労感を溜めてしまいます。
中富康仁 疲れと眠りのクリニック淀屋橋院長

中富康仁 疲れと眠りのクリニック淀屋橋院長

疲労感と細胞の「サビ」

中富:厚生労働省が公表している『令和5年版過労死等防止対策白書』でも指摘されていますが、長時間労働による疲労感は、放っておくと中高年の体に大きな影響を与えます。生活が乱れ気持ちが落ち込む原因にもなります。深刻な事態へと発展してしまえば、当然、企業側も責任を問われます。

竹本:早めの対策が必要になりますね。疲労感を放っておくと、体にはどのような問題が起こってきやすいのですか。

中富:不調のサインはさまざまに現れ、健康被害が進んでいくことが医学的に知られていますが、例えば疲労感が蓄積し、睡眠も不足すると、レプチンなど食欲を抑制するホルモンも減るので、太りやすくなるし、免疫力も下がると言われています。

竹本:呼吸に必要な酸素から発生する活性酸素は、増え過ぎてしまうと細胞に傷をつけます。私たちはその傷を金属が酸化することにちなんで「サビ」と表現しています。細胞が「サビる」と酵素の働きが低下するので、細胞のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)をつくる速度が落ちていく。そうするとエネルギー不足で細胞の働きが停滞し、脳や筋肉といった体の組織の働きも低下します。以前よりも走れなくなったりすぐに息が上がったりと、パフォーマンスを十分に発揮しにくくなるのです。

中富:日々生きている以上、古くなった細胞は入れ替えないといけないので、壊すという作用も含めて活性酸素は必要なものですが、それはシーソーのようなものです。活性酸素の割合が増えてしまうと、「サビ」が広がってしまう。シーソーがどちらかに傾かないようにバランスを保ちながら自分の体のリソースを保つことが大事です。

疲労感は自律神経とも関連するので、疲労感が溜まってくると自律神経にも不調を来すことがありますね。日々の仕事や家事などで余裕がなくなると、交感神経優位になり、休んでいても脈拍が早いなどの不調が現れやすくなる。「もう少しできるけどこの辺にしておこう」など、日々のタスクを先延ばしできるような、ゆとりがあることも大切なことですね。

疲労感に耳を傾けよ

竹本:健康的な生活のために必要な要素として、例えば厚生省のe-ヘルスネットなどを見ると、食事、運動、睡眠が挙げられています。私たちは食事に注目し、食品の中にある成分の抗酸化作用を研究してきました。抗酸化作用には次のような働きを見出すことができました*2。1つ目は活性酸素を打ち消す働きで、2つ目は活性酸素をつくる酵素を抑制する働き、3つ目は抗酸化物質を増やす働きです。

中富:睡眠中に出るメラトニンも抗酸化作用があるとされる物質ですね。

竹本:体の抗酸化力は加齢とともに落ちていきますが、減少を食い止めるために、運動や生活習慣をきちんと取り入れることが重要ですよね。やりたいことをやる余裕もでてきますから。40、50代からでも遅くないので、自分に合う対策を見つけて、ケアをしっかりしていただきたいです。

中富:体の疲労感は、不調を知らせる大事なセンサーです。忙しいという理由で、健康診断で発覚した問題を放置するビジネスパーソンもおられますが、40代・50代は特に気をつけなければなりません。疲労感を残さずにパフォーマンスを向上させれば、クリエイティビティも発揮しやすくなるし、心に余裕があればひとに優しくなれる。まずは、疲労感にちゃんと耳を傾けることが大事です。

*1 40代・50代の疲労感の感じ方などを調べるため、サントリーウエルネスが24年8月30日〜同9月5日、インターネットリサーチにより、40代・50代の男女計1,000人に実施したアンケート調査。日々どのくらいの疲労感を感じているかなど約10問を尋ねた。

*2 野澤義則・鈴木紀子「活性酸素と酸化ストレス応答」『東海学院大学紀要』10号,2016年, 1-12頁、二木鋭雄「活性酸素・フリーラジカルに対する防御システム 作用メカニズムとダイナミクス」『化学と生物』No.8 Vol. 35,1999年, 554-561頁

サントリーウエルネス

中富康仁◎疲れと眠りのクリニック淀屋橋院長。大阪市立大学医学部代謝内分泌病態内科学・疲労クリニカルセンターで疲労外来を担当しながら、疲労の臨床・研究を行い、2014年にナカトミファティーグケアクリニック(現・疲れと眠りのクリニック淀屋橋)を開設。日本疲労学会評議員、日本医師会認定産業医、日本精神神経学会精神科専門医。日本疲労学会研究奨励賞受賞。

竹本大輔◎サントリーウエルネス生命科学研究所研究主幹。医学博士。NR・サプリメントアドバイザー。

Promoted by サントリーウエルネス /text by Fumihiko Ohashi photographs by Shuji Goto edited by Akio Takashiro

働き方

2024.10.23 08:00

Z世代が解雇される3つの理由 「怠惰だから」ではない

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Z世代は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)真っ最中に社会に出た。だが、起業家向けの米雑誌Incの最近の記事によると、雇用主の60%が今年採用したZ世代の従業員を解雇したことを認めている。こうした状況から、なかなか仕事が続かないZ世代が多いのはなぜかが話題になっている。

「Z世代は怠惰で、権利ばかり主張し、未熟だからだ」などと紋切り型の考えで片付けてしまうのは簡単だが、問題はもっと複雑だ。このような事態が起こっている理由を理解するには、Z世代と従来の職場との関係に目を向ける必要がある。Z世代が仕事を続けるのに苦労している理由として考えられるものは3つある。

1. やる気の欠如 ─ 必ずしもZ世代のせいにあらず

Z世代に対する最も一般的な批判は、やる気が見られないというものだ。Z世代は生涯で達成したい目標を掲げて「一生懸命」働くということをしない、と主張する声は、ミレニアル世代からベビーブーム世代まで多く聞かれるが、それはなぜかを掘り下げようとする人はあまりいない。

2008年の金融危機からコロナ禍の混乱に至るまで、Z世代は雇用主が忠実な従業員をどのように扱うかを目の当たりにしてきた。解雇、減給、雇用の不安定さは、Z世代の親たちが抱える共通のテーマだった。

こうした視点に立てば、Z世代が従来のキャリアパスになぜ懐疑的になるのかがわかる。努力が必ずしも報われるとは限らないと知れば、「自力で苦境を乗り越える」のは難しいかもしれない。

大手会計事務所デロイトの報告書によると、Z世代は従業員や社会問題に配慮している企業を高く評価している。一方で、彼らはそうした価値観と相容れない不安定な労働市場や、従業員からあらゆるものを搾取する企業を見てきた。他の世代の目に映るZ世代のやる気の欠如は、自己防衛の一形態であり、頑張ってもさほど安定が得られない環境に身を置くことへのためらいなのかもしれない。

2. コミュニケーション方法の違い

Z世代が職場で直面する問題につながっているもう1つの要素はコミュニケーションだ。この世代はネットやデジタル機器がある環境で生まれ育った「デジタルネイティブ」と称されることが多いが、それが従来型の職場環境において強力な対人スキルにつながるとは限らない。SNSやテキストベースのやり取りにどっぷり浸かって育ったため、多くの若い社員は対面での意思疎通、特に職場でのやり取りに苦戦する可能性がある。
次ページ > Z世代は時代遅れの職場と格闘している

翻訳=溝口慈子

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働き方

2024.11.02 08:00

岐路に立つ「新しい働き方」、2025年に向けて考えるべき未来

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2025年が近づく中、企業は重要な岐路に立たされている。新しい働き方を取り入れて成長するのか、それとも新たな課題に直面して停滞するのかという選択である。ここ数年はまるでジェットコースターのようだった。未来に向けて急上昇したかと思えば、解雇、燃え尽き症候群、そして幻滅という冷たい現実と共に急降下した。そして底を打ったかのように見えた先に、わずかながらも回復の兆しが現れている。

この回復が企業を前進させるのか、それともさらなる停滞に繋がるのかは、これからの重要な選択にどう対処するかにかかっている。本稿では、働き方の未来に関するリスクと機会についての私たちの予測を示す。

1. 条件付きEX

EX(Employee experience、従業員体験。従業員が企業や組織の中で体験する経験価値のこと)の冬を経て、多くの企業がEXへの取り組みを再開しているが、それは持続可能な職場文化の基盤としてではなく、従業員に対する「ニンジン」としての狭い定義に従ったものだ。この「条件付きEX」アプローチ、つまり経営陣が成果を確認してから初めて従業員エンゲージメントの改善を約束するというやり方は、短期的なギャンブルに過ぎない。私たちは、目標達成時のトロフィーや、その場しのぎのギフトカード、さらには優待旅行といったインセンティブが増加すると予測している。しかし、その華やかな表面の下には、時間と共に広がる亀裂が隠れている。

2. オフィス回帰を巡る戦い

オフィス回帰の方針を巡る戦いが予想外の形で激化しようとしている。アマゾンが週5日のオフィス勤務を義務付けたことを受けて、同様の取り組みを模倣しようとするCEOたちが現れている。しかし、このアプローチが通用するのは、アマゾンやJPモルガン・チェースのような一部の巨大企業だけである。それらの企業は、離職が増えても構わないと考えているかもしれないが、ほとんどの企業にとって、こうした方針の強行は静かな抵抗、離職率の上昇、生産性の低下を招く危険性がある。

多くのCEOが受け入れるべき現実は、米国においてはハイブリッドワークが定着しているということである。2024年にはすでに43%の労働者がハイブリッド勤務をしており、その割合は今後も増加する見込みだ。この潮流に逆らう企業は、採用や人材の維持で遅れをとることになるだろう。この現実を無視するならば、2026年には誰が成功し、誰が失敗するかは明らかだ。
次ページ > 現実となるかどうかはあなた次第

翻訳=酒匂寛

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