石破茂首相のブレーン・川上高司内閣官房参与が語る“日本一わかりやすい”米大統領選挙報道の見方
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Qアノンによる「トランプ革命政権」の可能性があった!
――1960年のリチャード・ニクソンとジョン・F・ケネディの時代から、アメリカ大統領選でテレビ討論会は重要な役割をもたらしてきました。ただ、トランプ氏は次の出演を拒否したように、本人の希望次第で出なくてもいいのですね。
川上 いいんですよ。日本と違いますから。
――そうなのですね。そもそも、テレビ討論会は複数回行われる印象です。
川上 通常であれば3回行われます。6月に行われたバイデン氏とのテレビ討論会のあと、彼は撤退したため、本来は8月に行われるものが9月に行われ、大統領候補たち不在の中、3回目が10月に行われたということですね。
――10月10日のロイター通信によると、保守派のFOXニュースが両候補による2回目の討論会を打診していたそうです。ハリス氏は同意したものの、トランプ氏は「再試合はない」と自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿しました。これも世紀の一戦になりそうだったのですが、残念ですね。
川上 9月の討論会はハリス氏の弁が立ったため、メディアの評価ではハリス氏の勝利でした。ただ、このハリス旋風もいざ蓋を開けてみると、大統領選にどれだけ影響するかは不明瞭です。つまり、メディアの評価と実際の有権者の考えは大きく乖離しているのです。
――前出の「海外セレブが支持」と似たところがありますね。そうなると、本当に無党派層への呼びかけが重要になってくると思いますが、そこでもメディアの評価がどれほど響いているのか……。ところで、なぜアメリカのメディアは民主党びいきなのでしょうか?
川上 単純にトランプ氏が嫌いなのでしょう(笑)。というのも、トランプ政権のときはすごかった。彼は既存のあり方をすべてひっくり返して、すべてを自分でテコ入れすることで、ワシントンD.C.のロビイストたち、つまりエリート集団を全員敵に回しました。シンクタンクも(保守系の)ハドソン研究所だけが残り、あとはすべて民主党側に回りました。
――トランプ氏はこれまでの決まり事をすべて覆すため、大統領にさせたくない者たちが、メディア以外にもいるということですね。
川上 そうですね。というのも、彼が大統領にならないことで利権を得ている人たちが多くいるからです。そのような既得権益もそうですが、彼の支持者というのは、白人の中間所得層の中でもかなり所得が少ない者たちで、さらに移民に職を奪われていると感じている。これまで「日の目を浴びてこなかった者たち」のためにも彼は戦っているのです。彼の言葉を借りるなら、ディープステートとの戦いです。
――日本だと陰謀論でしか聞かない言葉ですが、結局トランプ氏のいうディープステートとは一体なんなのでしょうか?
川上 私は「権力」そのものだと思うんですよね。巨大産業、マスコミ、知的エリート層……。それらはすべてディープステートなのでしょう。しかし、明確に定義していないですよね。しっかりと、「ディープステートとは〇〇のことを指します」といってしまうと、一気に支持されなくなってしまいます。
――そこは、あやふやにしておいて、あとは個々のイマジネーションに委ねるということですね。
川上 そうです。ディープステートっていうひとつの単語を言っておけば、あとは支持者たちが「多分あれのことだ」「いや、これのことだ」と勝手に解釈してくれます。
――その「見えない何か」と戦っていたQアノンたちが、2021年にアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件を引き起こしたのですね。
川上 実はあのとき、もし議会を占拠して革命政権を樹立させていれば、トランプ政権はできていたのですよ。というのも、合衆国憲法には「抵抗権(革命権)」が記載されているからです。そのため、当時の私は「ついに、革命が起きたのか」と思いながら見ていましたが、人数が足りなかったのと、手際も悪かったので、どのみち無理だったでしょう。
――確かに、アメリカ合衆国の独立宣言には、そのような文言も盛り込まれていますが……。ということは、もし、あのときトランプ氏が先陣を切っていれば、革命は成功したかもしれないのでしょうか?
川上 いえ、当時のトランプ氏はSNSで煽動するのが精一杯で、それ以上の動きはできませんでした。ただ、議会を占拠して入念に準備をして、「我々は新しい国を作るんだ! 南北戦争の中にあって我らは北軍なんだ!」と独立宣言をすれば、成立していた可能性もあります。
――まるで、映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』ですね。
川上 実際、今回の大統領選挙でどちらが勝ったとしても、「アメリカは南北戦争になるのではないか?」とよく言われています。
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