あなたの大切なモノって何ですか?【広島・尾道市】~前編~
- 2024年10月29日
中国地方各地を旅して偶然出会ったみなさんに大切なモノを聞く「あなたの大切なモノって何ですか?」。今回は、広島県尾道市を旅してきました。
(NHK広島放送局キャスター 村上史)
今回は、坂の町、ネコの町として有名な【広島県尾道市】を旅しました。
海岸沿いを散歩する一組の親子を発見!早速、話を聞かせてもらいました。
医療関係で働く有元大将(ありもと・だいすけ)さんと息子の湊太(そうた)くん。よく親子で海岸沿いに遊びに来るんだそうです。
湊太くんに「大切なモノ」を聞いてみると?
夢はパイロットだという湊太くん。今、一番大切にしているモノが、飛行機のおもちゃなんだそうです。
一方、父親の大将さんの大切なモノは「家族の時間」。
勤務中、いつも大将さんは名札に湊太くんの写真を入れています。日々成長する湊太くんに合わせて、1か月ごとに写真を新しい物に入れ替えているそうです。これからも、家族仲良く過ごしてくださいね!
続いて向かったのは、尾道本通商店街。懐かしい雰囲気のCDショップを見つけました。撮影の許可をいただき、店主の大澤晴慶(おおさわ・はるよし)さんに話を聞かせてもらいました。
昭和33年にオープンしたこちらのCDショップ。尾道に音楽文化を根付かせたいと父親が始めた店を、31年前に大澤さんが受け継ぎました。経験もほとんど無いまま、店を引き継ぐことになった大澤さん。戸惑う事も多かったと言います。
最初のうちは、演歌のお客さんとか本当に苦労しました。そこで演歌をものすごく聴いたんですね。このお客様にはどういうのが合うのかな、これまで何を買っていたのかを最初、全部調べて。今はこのお客様が来られたら、この曲を勧められるなっていうのでやっていますね。
大澤さんの「大切なモノ」はこちら。
生前、父親が書き残していた顧客の購買履歴を記したノートです。お客さんの好みを知るために、いつ、何を買ったかが30年に渡り事細かく記されていました。父親が亡くなった後、このノートを初めて見た大澤さん。店や客に対する父の強い思いを感じたと言います。
本当に商売のノウハウですよね。ということをノートに教えてもらった。父にはもっと教えてもらいたかったですね。
尾道の商店街で60年以上続くCDショップ。そこには、ノートで今もつながる親子の絆がありました。
再び商店街を歩いていると、かわいらしいネコの雑貨店を見つけました。
この日、店番をしていた藤井睦子(ふじい・むつこ)さん。隣の福山市出身で4年前、尾道に移住してきました。
もともと東京で仕事していたんですけれど、ちょっと疲れてしまって。地元の近くで仕事を探していた時に、すごいこの町、海があっていいな~と思って尾道に移住しました。
大学卒業後、東京に出て福祉関係の職場で働いていた藤井さん。しかし、仕事や人間関係になじむことができず、思い悩む日々が続いたといいます。
仕事を辞め、尾道のシェアハウスに移り住んだ藤井さん。そこで、同世代の移住者達と語りあう中で、次第に元気を取り戻していきました。
移住した当初は人と関わるのが怖くて、また傷ついちゃうんじゃないかとか、うまくいかなかったら、働いてダメだったらどうしようとかあったんですけど、それすらも受け止めてくれる人たちがいっぱいいて。「わかるよー」とか「そういう時あるよねー」みたいな。すごく救われたなって思います。
藤井さんが尾道に来てから新たに始めたことがあります。
自分が経験したできごとをコミカルなイラストにしてSNSで発信することです。
東京に暮らしていた頃の辛かった心境を包み隠さず表現。
そんな藤井さんに「大切なモノ」を聞いてみると、見せてくれたのは、SNSを見た人からもらった手紙でした。イラストを見て自分の気持ちが肯定されたという感謝の言葉がつづられていました。
自分の作品が誰かの心の支えになれていることに喜びを感じているという藤井さん。「これからもSNSで発信を続けながら大好きな尾道で暮らしていきたい」と笑顔で話してくれました。
~後編に続く~