[社説]「闇バイト」犯罪の根を絶て
郊外の住宅に複数で押し入り、住人に暴力を振るって金品を奪う。荒っぽい手口の強盗事件が首都圏を中心に相次いでいる。
実行役はSNSなどで集められた「闇バイト」の若者らだ。犯罪グループの首謀者に迫る徹底的な捜査とともに、新たな犯罪者を生まないための手を尽くしたい。
警察庁などによると、東京、神奈川、埼玉、千葉の各都県で8月以降、同じような手口の事件が10件以上起きた。横浜市では75歳の男性が殺害され、千葉県市川市では女性が一時連れ去られた。いつ、誰が狙われるかわからない。体感治安の悪化は深刻だ。
高額報酬をうたうSNSの募集に応じ、運転免許証の画像などを送る。その後、犯罪を指示され、個人情報を握られて脅されたため断れなかった――。多くの実行役が加担した経緯だ。
「ホワイト案件」と記されていても、仕事の詳細を示していない時点で不自然だ。安易に応募すれば一生を台無しにしかねないことを、様々な機会を通じて周知する必要がある。
警察は人工知能(AI)を使い、疑わしい投稿に警告するなどしている。事業者を含め、官民を挙げた取り組みを急がねばならない。途中で踏みとどまろうとした時に相談や保護を受けられる体制も充実させたい。
一連の事件を起こしている集団は「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」と呼ばれる。秘匿性の高い通信アプリで指示を出し、「使い捨て」の実行役には正体を明かさない。
首謀者らを特定・検挙するには「デジタルフォレンジック(電子鑑識)」などを駆使し、指示系統と資金の流れを追う丁寧な捜査が不可欠だ。全国の警察が連携して解明にあたらねばならない。
犯行グループは飛び込み営業などを装い、ターゲットを下見しているようだ。自宅のセキュリティーに気を配るとともに、不審者を見かけたら通報するなど地域の防犯力も底上げしたい。