大関大の里 昇進焦らず 輪島に続け
2024年11月2日 05時05分 (11月2日 05時05分更新)
珍しい「ちょんまげ大関」の姿が、大相撲九州場所で見られそうだ。大の里が昇進して初めて、本場所の土俵に立つ。関取の証しである大銀杏(おおいちょう)が結えないほどのスピード出世。綱とりを望む声は大きいが、気を急(せ)くことはない。
昨年5月の初土俵から所要9場所での大関昇進は、昭和以降で最速。新入幕から5場所での新大関も年6場所制になった1958年以降で初めてと異例ずくめだ。
学生横綱などの実績を引っ提げて日本体育大から角界入り。巨体を生かして右を差し、一気に前へ出る相撲で番付を駆け上がった。強いが故に得意の型に頼る悪癖もある。今年5月の夏場所で初優勝すると、7月の名古屋場所は研究され、十両昇進以降5場所続いた2桁勝利を逃した。ただ、足踏みしないのが大器たるゆえんか。二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)から、師匠が得意とした左おっつけを学ぶと、13勝を挙げて先の秋場所を制し、昇進の扉を開いた。
特に石川県民にとって期待の星だ。今年の元日、能登半島は大地震に見舞われた。半島の付け根付近に当たる津幡町出身の大の里にとって人ごとではない。実家も被害に遭い、内灘町に暮らす祖父は避難所生活を送った。2月には同郷の先輩の遠藤、輝と被災地を訪ね、義援金などを届けた。
機会あるごとに激励の言葉を発し、被災者に寄り添おうとしている。能登は9月にも豪雨災害に見舞われており、秋巡業の金沢場所では地元のファンと触れ合ってエールを交換。大関デビューする九州場所に向けて意欲を高めた。
一時代を築いた同県七尾市出身の輪島(故人)は大関在位4場所で横綱に昇進した。2017年1月の稀勢の里以来となる日本出身の新横綱誕生を心待ちにする好角家が多いのも確かだが、大の里にはくれぐれも焦ってほしくない。
新番付では3大関の他、大関経験者が5人もいる。大の里が身長192センチ、体重182キロであるように、大型力士が増えて久しい。彼らは土俵を盛り上げているが、けがなどもあってなかなか最高位に手が届かないのが現状だ。
大の里には、しこ名の通り、まずは大きく地に根を広げて、着実に地力をつけてほしい。14度優勝した輪島のように長く活躍して、押しも押されもせぬ角界の看板力士になることこそ、応援する故郷の人たちの願いでもあろう。
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