- 更新日 : 2024年7月12日
会社法で義務付けられている決算公告とは?期限や方法、罰則を解説
会社法により、原則として非上場を含む株式会社には、決算公告の義務が課せられています。決算公告を怠ると罰則が課せられるため、注意が必要です。会社法の規定に基づき、決算公告の期限や方法、手続きについて詳しく説明します。
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決算公告とは
決算公告とは、企業が決算の内容を公に知らせることを指します。会社法では、決算公告の義務や期限等を規定しています。
決算公告の目的・重要性
決算公告は、主に以下の目的で実施します。
株式会社における財務状況の透明性確保
取引先や株主をはじめとした利害関係者が安心して取引できる環境の整備
決算公告を怠ると、会社法で定められた義務に違反してしまうだけでなく、対外的に見た企業の透明性も低下します。その結果、取引に際して危険性が高いと判断されて取引を打ち切られたり、信用力が低下して株主や顧客の離反が生じたりするリスクがあります。
決算公告の期限
会社法第440条1項によれば、定時株主総会の終結後、速やかに決算公告を行うことが決まりとなっています。つまり、具体的な期限は規定されていないものの、定時株主総会の終結後に可能な限り早く行わなければなりません。
※参考サイト:e-Gov「会社法」
会社法に定められている決算公告の記載内容
決算公告の記載項目は、「大会社かどうか」「公告方法」「公開会社かどうか」という3つの要素によって変わります。
大会社かどうか
大会社による決算公告では、貸借対照表および損益計算書の公告が不可欠です(会社法第440条1項)。
一方で大会社に該当しないケースでは、貸借対照表のみの公告となります(同上)。
公告方法
官報もしくは日刊新聞紙による決算公告では、貸借対照表(大会社は貸借対照表および損益計算書)の要旨を記載するだけで十分です(同法第440条2項)。
ただし、損益計算書の要旨を公告しないケースでは、貸借対照表の要旨に当期純損益金額を付記します(会社計算規則第142条)
一方で電子公告では、貸借対照表(大会社の場合は貸借対照表および損益計算書)の全文を記載する義務があります(会社法第440条1項)。また、貸借対照表や税効果会計などに関する注記事項の記載も義務となります(同規則第136条1項)。
公開会社かどうか
公開会社による決算公告(要旨の記載のみ)では、資産および負債の部を重要な項目に細分化した上で記載する義務が課されます(会社計算規則第139条44項、同規則第140条4項)。
※参考サイト:e-Gov「会社計算規則」
決算公告の義務
決算公告の義務や例外的に不要となるケースについて説明します。
決算公告は非上場企業にも義務付けられている
会社法第440条1項には、「株式会社は、貸借対照表(大会社は損益計算書も含む)を公告しなければならない」と規定されています。
つまり決算公告の義務は、非上場企業を含む株式会社全てに課されているのです。
決算公告が不要となるケース
例外的に、以下のケースに該当する会社は決算公告が不要です(会社法第440条3項・4項、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第28条)。
- 有価証券報告書の提出会社(≒上場企業)
- インターネットで計算書類を開示している会社
- 特例有限会社
実態はほとんどの株式会社が決算公告を実施していない
調査会社である株式会社東京商工リサーチの「2022年『官報』決算公告調査」によると、官報での決算公告が義務になっていると推測される企業のうち、実際に官報での決算公告を確認できた企業の割合は、わずか1.8%だったとのことです。
つまり、法律で義務付けられてはいるものの、大半の会社が決算公告を行なっていないのが現状といえます。
理由としては、手間や費用がかかること、実際に罰則が課される可能性が低いことなどが考えられます。
とはいえ、法律上は罰則が規定されている上に、罰則が適用されなくても会社の信用力低下につながることなどから、決算公告は実施すべきでしょう。
※引用元:株式会社東京商工リサーチ「官報で決算公告、株式会社のわずか1.8%」
※参考サイト:e-Gov「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」
決算公告に関する罰則
適切な時期での決算公告を怠る、もしくは不正な手段で決算公告を行うと、100万円以下の過料に処されます(会社法第976条2号)。また、不正な決算公告によって第三者に損害を与えた場合、関与する役員や会社が損害賠償責任を負うことがあります(会社法第350条、同法429条2項1号ニ、民法第709条)。
※参考サイト:e-Gov「民法」
決算公告の方法
決算公告の方法は、官報、日刊新聞紙、電子公告の3つが規定されています(会社法第939条)。
各方法の概要やメリット・デメリット、費用をご紹介します。
官報
官報(平日に政府が発行している機関紙)に掲載する方法です。
メリットは以下のとおりです。
- 自社の決算内容を見られる可能性が低い(官報を見る人が少ないため)
- 要旨のみの掲載で良い
- 信頼性が高い
一方で、申し込みから掲載までに1週間程度の日数を要するため、早めの準備を必要とする点がデメリットです。費用は、最低でも75,000円〜150,000円ほどかかります。
日刊新聞紙
日本経済新聞などの日刊新聞紙に掲載する方法です。
メリットとして、自社の成長性や安定性などを幅広くアピールできる点があります。
一方で、他2つのやり方と比べて費用は大幅に高くなります。
具体的な費用は新聞社によって変わるものの、最低でも10万円台、有名新聞社では数百万円もの費用がかかる場合もあります。
電子公告
企業のホームページなどのオンライン上に掲載する方法であり、メリットは以下のとおりです。
- 他2つの方法よりも費用を安く済ませることができる
- データさえあればすぐに公開できる
一方で、以下のデメリットに留意する必要があります。
- 要旨ではなく全文を掲載する必要がある(会社法第440条1項)
- 5年分の決算内容を継続的に公開しなければならない(同法第940条1項2号)
決算公告の手続き・流れ
決算公告を実施する流れを説明します。
1.事前準備
決算整理(仮勘定整理など)や貸借対照表などの決算書類(計算書類)作成を行います。
2.決算書類の監査と承認
作成した決算書類に関しては、以下で監査や承認を受けます(会社法第436条)。
また、監査が済んだ計算書類を定時株主総会に提出し、普通決議による承認を受けることも不可欠です(同法第438条)。
3.資料作成・決算公告の実施
監査や承認を得た決算書類をもとに、決算公告資料の作成を行います。
次に、定款の規定に沿って決算公告を実施します。定款の規定がないケースでは、官報による公告を行います(同法第939条4項)。
決算公告を円滑に実施する方法
決算公告を円滑に行いたい場合は、ERPの活用がおすすめです。
ERPとは、会計や人事、販売などの基幹業務を統合し、業務効率化や情報の一元化などを実現するシステムです。
ERPには財務会計機能が搭載されているため、円滑な決算を実現できます。
また、システムや部門ごとに情報を抽出するプロセスが不要となり、システム・部門を横断する決算業務でのミスを防ぎやすくなります。
こうした効果により、決算業務にかかる労力や時間の削減を期待できます。
ERP導入のメリット・デメリットは以下の記事でもくわしく説明しています。
まとめ
会社法における決算公告の義務や期限、方法などを網羅的に説明しました。
決算公告のやり方には、官報や日刊新聞紙、電子公告があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。
また、手続きに際しては会社法の規定に基づいて行うことが求められます。
円滑にミスなく実施するためにも、決算公告の際にはERPの導入を検討することがおすすめです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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