「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。
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坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。
久々に実家に電話をすると母が出て、「昨夜は大変だったのよ」と言いました。80過ぎの父が高熱を出し、救急車を呼んだのでした。
電話の後、職場にいる妻にメールをすると、「駆けつけた方がいい」とのことで、私は高速道路を車で走り、実家のある鎌倉に行きました。
側弯症を患い、猫背になりながら日々頑張っている母は、私を見るとほっ...とした顔をしました。ひとまず私は父の衣類とラジオ、髭剃り等を病院に持っていきました。
病室に入り、カーテンをあけると父は開口一番、「もう熱も下がったから退院したい」と言うので、拍子抜けしました。 年齢を重ねると性格は変わりづらいと言いますが、翌日、父は母の携帯電話に連絡を入れて、あれがない、これがない、と言いました。父が倒れた夜、母は一睡もしていなかったので、〈母に病院へ行かせるわけにはいかない〉と思い、再び荷物をまとめ、病室を訪ねました。
持ってきたものを確認すると、父は「あれも持ってきてと言ったじゃないか」と声を荒らげるので、いつもは穏やかな私も堪忍袋の緒が切れて、「そんなだから僕たち家族は困ってきたんだよ」と、これまでの気持を伝えました。すると、私の目力から伝わるものがあったのか、父は静かに頷きました。幸い父の病状はすぐに回復し、数日後には退院できました。
両親への感謝の気持はあります。ただ、私も親となった今は、配慮の足りない父に、つい厳しいことを言ってしまいます。父も「老いては子に従え」という言葉を実感しているのかもしれません。
そんな父も母と二人で支え合い暮らしているので助かっていますが、年齢を考えると、〈必要な時には駆けつけなければ...〉と思う、今日この頃です。