<社説>広域連続強盗 ネット社会に潜む犯罪
2024年11月1日 07時26分
インターネット上の闇バイトに応募した犯人らによる強盗事件が相次いでいる。ネット社会の暗部に潜む犯罪。指示役を速やかに摘発すると同時に、犯罪抑止には社会全体の取り組みも不可欠だ。
質店や住宅を狙った強盗が8月下旬以降、首都圏を中心に十数件発生。横浜市で75歳男性が殺害され、千葉県市川市では50歳女性が連れ去られ、監禁された。
警視庁と神奈川、千葉、埼玉の各県警が合同捜査本部を設置したが、市民の不安は高まっている。
実行役らは相互に面識はなく、交流サイト(SNS)の闇バイト募集で集められ、通信アプリを通じて犯行を指示されていた。
「ホワイト(合法)案件」との誘い文句をうのみにして、個人情報を把握された後は、指示役から「逃げたら殺す」などと脅され、犯行を拒めなかったという。
2022年から表面化した「ルフィ」を名乗る海外在住の指示役による連続強盗事件と同種で、特殊詐欺グループが容易に稼げる強盗に手口を変えた疑いが濃い。
実行役や被害品の回収役など約40人が逮捕されているが、指示役は捕まっていない。
犯行指示は時間がたつとメッセージが自動的に消える通信アプリを使っており、警察は通信記録の復元や被害品の流れなどから指示役の割り出しを進めている。
被害者宅の選定には、飛び込み営業のリフォーム詐欺集団の顧客情報が使われた疑いもある。こうした情報は犯罪集団の間で取引されており、解明が急がれる。
まずは各戸の防犯対策を徹底したい。複数の鍵を付けたり、窓ガラスに防犯フィルムを張ったり、高齢世帯を見守ることも必要だ。
強盗殺人・致死罪は極刑か無期懲役の重罪だ。なぜ実行役の若者らが安易に手を染めたのか。
要因の一つは若者の人間関係の希薄さだろう。好みの動画投稿サイトやSNSのみを情報源にして暮らす生活様式が、常識の欠如を促している可能性がある。
ITの発達も犯罪を助長している。通信アプリの秘匿性が高くなったり、海外からでも犯行を指示できるようになったからだ。
もちろん、若者の経済的な困窮からも目を背けてはならない。ネット社会の新たな犯罪を抑止するには、取り締まりだけでなく、若者の生きづらさとも向き合う社会全体の取り組みが欠かせない。
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