すかいらーくを創業し、日本を代表するファミリーレストランチェーンに育て上げた横川竟氏。76歳のとき、次のチャレンジとして再び起業したのが、カフェ業態の高倉町珈琲だ。「人間はみんな、道半ばで死ぬ」と語る、87歳となった同氏を突き動かすものは何か。商売の本質、人生観、仕事観、すべてを明かした。

写真:小田駿一(symphonic)
写真:小田駿一(symphonic)
横川 竟(よこかわ きわむ)氏
高倉町珈琲 代表取締役会長
1937年生まれ、長野県出身。70年、東京都府中市に兄弟4人で「すかいらーく1号店」を開業。料理マニュアルの整備やセントラルキッチンの導入など、現在のファミリーレストラン経営の基礎を築く。80年、ジョナサン社長、2003年日本フードサービス協会会長。06年、すかいらーく(現すかいらーくホールディングス)会長になり、08年に退任。13年に高倉町珈琲を創業し、現在に至る

すかいらーくで成し遂げられなかったこと

 僕は今、87歳です。

 「おじいちゃん」と言ってもらって構わないですよ。10代の人からすれば、おじいちゃんよりも年上でしょう。

 すかいらーくを辞めて、ゼロから「高倉町珈琲」を始めたのが2013年、76歳の時。普通だったらとっくに定年です。「なんでそんなに働くのか?」とよく聞かれますけれど、それは「できなかったことを成し遂げるため」なんです。

 すかいらーくは、道半ばで終わってしまったと思っています。

 1970年に兄弟4人ですかいらーくを作った時、目指していたのは「楽しい店」でした。お客さんを楽しませられる店。それなのにいつしか、本当の意味で「お客さんのためになること」ができなくなってしまった。どんなに利益を出そうが、お客さんのためにならないことには価値がありません。だから辞めたんです。

 そしてもう1回、自分の思う「外食」をやってみようと思ったんですよ。おこがましいですが「商売ってこうだよ!」というのを、みんなに見せたいと思っているんです。だからね、とにかく時間が足りないわけですよ。

すかいらーくは、本格的で巨大なセントラルキッチンを導入。「安くておいしい」ファミリーレストランの土台を築いた 写真:小田駿一(symphonic)
すかいらーくは、本格的で巨大なセントラルキッチンを導入。「安くておいしい」ファミリーレストランの土台を築いた 写真:小田駿一(symphonic)

欲だけでなく「思想」を持て

 今の経営者には、経営効率ばかり気にして「思想」がない人が多いと感じます。どうすれば大きくなるか、もうかるか。メディアもそういう情報ばかり取り上げるでしょう。

 でも、それは思想ではなく「欲」です。「もうかるかどうか」なんてことは、お客さんにはまったく関係ありません。投資家には関係あるんでしょうけどね。

この記事は会員限定(無料)です。

この記事は連載「社長の時間―成功する人の時間の使い方―」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

17
この記事をいいね!する
この記事を無料で回覧・プレゼントする