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一人になんてしないように

更新しようとして寝落ちしてました……すまぬ



 思ったよりアリスは長く眠っていて、それに釣られて俺もウトウトして、気が付いた時にはもう夜と言っていい時間だった。

 そして目覚めたアリスから、夢の中で親友と再会できたという話を聞いて、一日は終了した。


 心具に魂を移して、アリスの夢に語りかけられる存在となった親友……眉唾な話ではあったが、心から嬉しそうにしているアリスを見ると、意外とアッサリ信じる事が出来た。

 まぁ、そもそも常識外の存在とはいっぱい知り合ってきてる訳だし、今さら魂を武器に宿した……いわゆる九十九神みたいな存在が居たとしても、別に不思議ではない。

 ただ、残念ながらその親友はアリスの夢にしか出てこれないみたいで、俺が話したり姿を見る事は叶わないみたいだ。


 っと、その話を聞いた後で風呂に入り、アリスが俺用に割り当ててくれた部屋でベットに横になる。。


 ある意味ではアリスの所に泊まろうとした目的は、十分に達成した訳だけど……俺はまだ数日、アリスの所に泊まる事にして、アリスもそれを快く歓迎してくれた。

 今回の件で過去のアリスの事を知る事は出来たが、今のアリスについてももっと知りたいと、そう思ったのも要因の一つだ。

 まぁ、折角の機会なのでアリスとの時間を楽しむ事にしよう。


 そんな事を考えながら、目を閉じようとしたタイミングで、控えめに部屋の扉がノックされる。


「……アリス?」

「あ~えっと、ちょ、ちょっと良いっすか?」

「うん?」


 この家には俺以外はアリスしかいないので、来訪者がアリスである事は考えるまでも無い。

 少し焦ったような声のアリスに返事をして、扉を開けると……そこには、初めて見る寝間着姿のアリスが居た。


 レースの生地を何枚も重ねたような、可愛らしい寝間着に身を包んだアリスは、仮面も付けておらず、夜の静けさも相まって幻想的にすら感じた。

 しかし、アリスが寝巻? いや、まぁ、眠る必要のない体とは言っても、眠れない訳でもない。

 なので寝巻を着ている事自体はおかしいとは言わないけど……なんで『枕』も持ってるのかな?


「え、えっと、カイトさん?」

「あ、ああ、どうした?」

「そ、その……えっと……い、一緒に寝ても……いいっすか?」

「……え?」


 頬を微かに染め、もじもじと俯き加減に告げてくるアリスは、なんだかいつもと雰囲気が違って、顔に熱が集まっていくのを感じた。

 というか……一緒に寝る? え? そ、それって、つ、つつつ、つまり、そういう事?

 い、いやいや!? 流石にちょっと早すぎないか? ま、まぁ、後に通る道ではあると思うし、アリスは元人間だからその辺に理解があるとしても……さ、流石に恋人になって即とかだと、俺の方にも心の準備というものが……

 確かに俺も健全な男である。そういう事に興味が無いかと言われれば……無いとは言えないし、特に今のアリスは、普段と違って儚げな印象すらあるので、なんだか変にドキドキしてしまう。

 

「……カイトさん?」

「えっ!? あっ、その……どど、どうしたんだ? 急に?」

「えっと……その、ちょっと寂しくて……駄目でしょうか?」

「……」


 おずおずと告げてくるアリスの言葉を聞いて、俺は完全に理解した。というか、自分の勘違いに気付いた。

 現在のアリスに一切の他意はない。本当にただ寂しくて一緒に寝たいだけであり、そこに含む意味はないという事が、今の発言でハッキリ理解出来た。

 ……え? なにこれ、一人焦ってた自分が凄い恥ずかしいんだけど……


「……迷惑でした?」

「い、いや、大丈夫だ。全く問題無い!」

「そ、そうですか?」


 変な想像をしていた事を悟られないように、俺は慌ててアリスを室内に向かえ入れる。

 そして、やや性急ながらベットに潜り込んだ。まぁ、それは単純に変な想像をしてしまったせいで、アリスが先に入ると、後から入る事は出来なさそうだったからだが……


 そして、少ししてアリスが持っていた枕がベットに置かれ、布団が動いてアリスが入ってくる。

 直接触れている訳でもない。ただアリスが同じ布団の中に入ってきただけ。アリスの体の大きさ的に考えても、スペース的な余裕はある筈だが……なんだかやけに布団の中の温度が上がった気がした。


「……カイトさん」

「え? なっ!?」

「うん? どうしました?」


 気付かない内に顔を逸らしていたみたいで、アリスに声を掛けられてからそちらを向くと……吐息がかかりそうな程近くに、アリスの顔があった。

 綺麗な青い瞳が俺の姿を捕らえ、艶っぽくすら感じる唇が、やけに鮮明に見えた気がした。


「い、いや、なんでもない!?」

「そうですか? し、しかし、アレですね」

「うん?」

「こうやって、一緒の布団に入ってると……は、恥ずかしいですけど……その、幸せです」


 そう言ってはにかむように笑うアリスを見て、心臓が大きく跳ねた気がした。

 恥ずかしげに染められた頬、寝巻の隙間から見える白い肌……特にアリスは、普段長袖長ズボンに仮面と、全く露出の無い服装だから、本当に今の姿は新鮮で……心臓に悪い。


 と、ともかくこのままじゃまずい。な、なんか話題を……


「そ、そう言えば、アリスって、寝なくて良い体みたいだけど……寝巻も持ってたんだね?」

「ええ、ほら、私って元人間だからか、なんとなく癖みたいになっちゃってるんですよ。実際カイトさんの護衛につくまでは、基本的に毎晩寝てましたしね」

「そうなんだ……寝ないで護衛って、大変じゃない?」

「そんなことないですよ。私が好きでやってます……カイトさんが好きで、カイトさんを守りたいから……」


 ちょっと、言葉にパワーがあり過ぎるんじゃなかろうか!? 今日色々しめっぽい話も会ったせいか、いつものふざけた感じじゃないのが特にやばい。なんか、滅茶苦茶ドキドキする。

 そうして俺は割といっぱいいっぱいだが、アリスの方は本当に今回は純粋に俺と一緒に居たいだけみたいで、何度か嬉しそうに微笑みを浮かべた後、そっと俺に近付いてきた。


 ほんの数十㎝……それだけで体が密着する程になり、俺の緊張も最高潮になる中、アリスは顔の半分くらいを布団の中に沈め……俺の首と胸の間に顔をくっつけてきた。


「~~!?」


 と、吐息が、当たってる!? ヤバい、これはヤバい……非常によろしくない。控えめな接触だからこそ、より一層アリスの温もりが伝わってきて、全身がどんどん熱くなっていく。

 しかもなによりヤバいと思えるのは、アリスの方にそんな気はなくても……たぶん俺が求めれば、彼女は応じてくれるだろうという事。

 言ってみれば目の前にとびきり美味しそうな餌をぶら下げられて、どうしてもというなら食べて良いですよと言われている気分……こ、これは辛い。


 い、いや、でも……べ、別に我慢する必要はないんじゃないかな? そ、そうだよ。だって、恋人同士な訳だし、早いか遅いかだけでいずれそういう事はする……というかしたいし。い、いいんじゃないか……


「……カイトさん……どこへも行かないで下さい……私を……一人にしないで……」

「……」


 小さく震えるような声。ソレを聞いた瞬間、俺は心の中で自分をぶん殴った。

 そうだ。アリスは今不安なんだ。過去の話をした事もあって、色々失ってしまった時の事を、長く孤独に生きてきた事を思い出している。

 だからこそ、こうして今……俺はしっかり、アリスを受け止めてあげなくちゃいけない。変な下心は抜きにして、純粋に想いを受け止める。


 そう考えながら、俺はそっとアリスの背中に手を回し、出来るだけ優しくアリスを抱きしめる。


「うん、大丈夫。一人になんてしないから……」

「ぁっ……はい……大好きです。カイトさん」


 優しく告げた言葉を聞き、アリスも俺の背中に手を回して抱きついてくる。


「……ごめんなさい。明日になったら、ちゃんと、いつも通りに戻れますから……今だけは……」

「大丈夫。いくらでも、いつでも、甘えてくれて良いから……な?」

「……はい」


 不安げに甘えてくるアリスを受け止めて言葉を返すと、アリスは心から幸せそうに微笑みを浮かべてくれた。


 拝啓、母さん、父さん――普段とは違って不安げなアリスは、妙に新鮮でドキドキしたけど、それ以上にその不安な気持ちを癒してあげたいって思った。いつまでも、愛しい彼女を――一人になんてしないように。





砂糖回、始まりました。まずはジャブですね。


シリアス先輩「ジャブ!?」

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