2023125日、第224回ふくしま復興支援フォーラムを、オンライン(Zoom)で開催しました。報告者は、辻内琢也氏(早稲田大学人間科学学術院教授、早稲田大学災害復興医療人類学研究所所長)が、「国内強制移動による避難者の精神的苦痛 ~ 構造的暴力によるPTSD仮説」をテーマに、報告しました。Zoom56名が参加しました。
 フォーラム終了後、参加された方々から、メールにて寄せられたご感想・ご意見は、次の通りです。

 参考にしていただけると幸いです。今後とも、よろしくお願いします。

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  本日昼にユニセフの話し合いがあり、『子どもの権利条約』の学習をしました。

先生のお話のように国際的には子どもには40の権利があり、それらをカードにしてワークショップをする中で、大人も子どももそれまで無自覚だった権利を自覚できるようになるそうです。

中には自分の悩みを認められた喜びで、泣き出すお子さんもいるそうです。

権利は自分たちで自覚しなければ埋もれて、それだけでなく権利を蹂躙される社会的構造があるということ、先生のお話と全く重なりました。

私たちの力は小さいのですが、小さな話し合いの場を作っていければ、いつか世の中を変えていけることを信じていくしかないかな、と思いました。 

先生の人間的な優しさに癒されました。ありがとうございました。(Y.K

 

★全体として大変勉強になりました。前半で指導原則を正面からとりあげたことには敬意を表します。また後半で被害者の PTSD をとりあげ,「構造的暴力による社会的虐待」を指摘されたことも「さすが辻内先生」と納得できます。

パワポのなかに「国際法の基では全て IDPs と定義されており」と書かれていますが,これは2022年10月7日の日本記者クラブでのダマリー特別報告者の記者会見のときに公表された英語ステートメントの日本語訳「調査終了報告書」から引用されたと思われます。しかし英語原文(End of Misson Statement)にはこのような表現はなく,翻訳者が表現を改変したものです。この日本語訳文は誤訳が問題となって 2回書き変えられ,最終的に以下の「調査終了後のステートメント」として確定されたので,今後引用されるときは以下を使用されるのがよいでしょう。 I.T

https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.ohchr.org%2Fsites%2Fdefault%2Ffiles%2Fdocuments%2Fissues%2Finternaldisplacement%2Fstatements%2F2022-10-07%2F20221007-eom-japan-sr-idps-jp.docx&wdOrigin=BROWSELINK

 

 ★構造的暴力/社会的暴力によるPTSDの仮説が今後裏付けられていくだろうことは、つらいことでもありますが、何が起こっているのか、それぞれの場所でどのような対処ができるのか、を考えることは、暴力をはらみ、個人にも地域にも傷を負わせた社会の果たすべき責任ではないかと思われました。

見えづらい暴力や差別が看過されることなく、原因者が責任を果たし、被害者/被災者が真っ当な補償とケアを受けられ、社会が暴力を容認せず繰り返さないように、私もできることに取り組んでまいりたいと思います。貴重な機会をありがとうございました。(Y.T

 ★避難者の精神的苦痛をさまざまな観点、国際法の視点から意義付け、定義づけられ全体構図が、10年以上の大きな取り組みで分かった。

(1)その国際法の内容が、日本の憲法ではどこに相当するか知りたいと思った。

(2)PTSDの「無力感」の中に、福島原発事故の「繰り返される死の恐怖が反復」される結果、【未来が見えない絶望感に不安がもたらす心身の状態】(フラッシュフォワードともいわれる)が含まれるのではないか。福島では時折提起されているが、廃炉がいつになるか、生活や町の復興が分からず、「未来への不安が大きいのではないか」。その点が他のPTSDに付け加わるのではないかと感じました。

(3)その点では、「生活上、健康維持、仕事の可能性などを含む大きな不安」及び「繰り返される死の恐怖」とより多様なPTSDの型が福島の特徴かと思われた。

「構造的暴力」の上にある「原発・福島に対する無理解・偏見・差別」をより明らかにし、どうしたら克服に近づけるか、研究のご発展を期待致します。

(4)外務省の話ですが、ALPS処理汚染水について、「日本政府は、ALPS処理水を敷地外で保管・処分することは、リスクのあるエリアの拡大ならびに更なる負担を強いることに繋がることから、望ましくないと考えています」と言いながら、その後半で、「ALPS処理水海洋放出の必要性」を長々と述べ諸外国に発信しています。国連人権員会報告書にたいしても、論理の矛盾などお構いなしに、批評しているのだろうかと、よく見てみたいと思いました。ありがとうございました(ms

 ★福島第一原発事故避難者は国内難民であるという視点は、原子力市民委員会でも重要な視点として議論してきましたが、十分なものとはなっていませんでした。

本日の辻内さんの講演は、国内強制移動の指導原則(GPID)の各条項を丁寧に整理して解説され、大いに勉強になりました。

ダマリー報告への外務省の滅茶苦茶な反論については、全く知らなかったので、これまた大変参考になりました。一度読んでみようと思います。

  ありがとうございました。J.O

 

 ★辻内先生のお話「国内強制移動による避難者の精神的苦痛―構造的暴力によるPTSD仮説―」は10年のアンケート実績に基づいており、数字と共に内容に非常に共感が出来きました。中間貯蔵施設の用地の安く、強制的な買い上げの話もその通りです。先生のお話をもっと福島の方や国内の方・世界の方に知ってほしいと強く感じました。それは風評加害の言葉にもあるように、被災者が声を上げにくい状況を国側が、作っているからでもあります。また昨年の国連調査報告に対し日本政府は人権侵害を認めず外務省が事細かに反論した回答を国連に提出したとのこと。また辻内教授の回答率が9.6%であるので外務省から回答から外してほしいとの連絡が入ったとのこと。国は汚染水の放出や汚染土の全国拡散計画にはIAEAを利用しているが、都合が悪いことに対してはこの様に攻撃しています。この様子は、国が被災者に対して取っている行為そのものです。本当に原発事故の被災者には当事者として知ってほしい内容であり、国民には自分の事として知ってほしいと思います。その意味ではこのような講演を今後さらに頑張って頂ければと思います。ありがとうございました。Y

 

 ★「構造的暴力」による「社会的虐待」論

このテーマをこのフォーラムの話題にしてくださったことに感謝です.

漠然と思っていたことを明確にさせていただきました.

難しい問題ですが,復興のためには取り組まなくてはならない課題だということがよくわかりました.

日本の政府や原発の関係者はこの「論」を全く理解していないということもわかったので,ますます真剣に取り組まなくてはならないと思いました.

復興の課題はどんどん増えてきますが,あきらめずにがんばりましょう.

このつぎの話題も期待しています. T.K.

 

 ★私は被ばくについての質問を辻内先生にさせていただいたのですが、特に内部被曝について、被ばくを受けるとPTSDになりやすいというようなことはあるのかな?と思いました。先生のご発表の中で放射能の身体に対する物理的な影響が、社会的影響に重きを置いておられるように思えて、発表中直接お聞きできなかったように思ったものですから、そこはもしかしてあえて抜いておられるのかどうなのか?そのあたりをお聞きしたかったといいますか、実際にどうなのでしょう?すべてのPTSDに内部被曝は特に関係しているというようなことはないのでしょうか?すべてのというのは難しくても、被曝を受けるということは脳にもダメージを与え、遺伝子にも影響を与え、それが社会的あるいはその他の要因と複合的に悪影響を及ぼし、PTSD発症に寄与するのでしょうか?素人考えで恐縮ですが、実害が風評被害の陰に隠れて、PTSD発症の陰にも実際は被ばくで苦しんでいる方もおられるのでは?というそんな粗野な想像です。T.T.

 

 ★タイトルに「仮説」とあるのがどういう意味なのか聞きそびれました。原発事故によるPTSDは自然災害や戦争、紛争、公害、数々の人権侵害によるPTSDと共通しています。今、ウクライナやパレスチナ、ミャンマーや各地でなされている国家による暴力と同じです。原発を動かし、さらに増やそうとしている人たちはわかっているのでしょうか。その傷の大きさ、痛みや苦しみの深さを。(Y.S.

 ★今回は、福島県からの県外避難者について、国内強制移動という新しい視点をいただきましたこと、感謝申し上げます。
 復興支援員制度について触れていただいた点がございましたので、1点、コメントさせていただきます。
 総務省による復興支援員制度は、当初、分散避難した被災者のコミュニティ再生を目的として制度化されました。福島県内の自治体においては、2012年度から浪江町が県外避難者支援のための復興支援員を置き、当方も20132016年度の間、彼らの研修等の支援活動を行ってきました。
 先生ご指摘の通り、ただ支援員を配置するだけではだめで、定期的な研修や、配置先(避難先)の支援団体との連携・協働といったことが不可欠な事業でした。彼らが被災者と直接対し、ニーズを聞き取る中で、交流会のようなコミュニティ再生支援事業に加えて、戸別訪問を通じた個々の生活再建支援へと活動の幅が広がっていった経緯がありました。
 福島県や福島県内自治体が復興支援員を配置すると、帰還する方に支援が偏るといったお話しもありましたが、その点については、そうとも言えるし、違うとも言える気がします。元地の避難指示が継続している間(原発事故から2016年頃まで)は、県外避難者を含めた避難者への対応は被災市町村にとって重要なテーマであり、復興支援員の活動も、上述のような交流会、戸別訪問、そして避難者への情報提供といった多様な形で展開することができていました。福島県内自治体の事業だからといってできないわけではありませんでした。
 ただ、その後、特に2017年度以降、故郷の復興が本格化していく中で、避難者支援の重要性は自治体(県も市町村も)施策の中で急速に低下、それに伴って、先生がおっしゃるような状況(補助金の削減など含めて)に収斂していきます。こうしたプロセスもあったことは、きちんと評価すべきだろうと感じました。
 もし、今後、復興支援員を展開、などということがあるとすれば(これから起きてくる大災害を含めて考えれば、可能性は高そうですが)、避難自治体が関与する形で、広域避難者支援が展開されることが現実的なのだろうと考えています。そのための制度設計、特に避難者の所在などの個人情報をどう受け渡していくか、避難先の仕組み(行政、社協、NPO等支援団体)が避難者をどう把握するのか、といったことの制度化については、今回の災害では大失敗に終わっていますし、その検証も十分ではありません。埼玉での実践の積み重ねもあると存じますので、これからのご研究に期待しているところです。A.T

 ★この事故の背景にある構造的暴力、その3つの側面を指摘してくれたとても興味深い報告でした。ありがとうございます。改めて事故の責任をきちんと問いつづけなければならないと思いました。今、私たち市民が、ネットワークを構成しながら、立ち向かっていく時期です。様々な立ち位置から一つ一つ始める時期なのでしょう。憲法にある基本的人権を守っていくためにも。報告を聞いてそんなふうに感じました。(NH

 ★大変興味深い発表ありがとうございました。
 私は医師で一級建築士の立場から福島原発事故当初から仮設住宅に関係し訪問アンケート調査、環境調査(温湿度測定など)を行ってきました。復興公営住宅が完成し調査は打ち切りました。初期の仮設住宅は隣家の騒音問題などがありました。地域特性にあわせできた木造の戸建て仮設住宅は素晴らしいものもありました。核家族用の仮設住宅であり、田舎での大家族の崩壊に繋がったものと思います。(M.T)

原発事故が引き起こした「社会の格差・差別・不平等・不正義」を「構造的暴力」と規定し、それが「社会的虐待」をもたらし、長期化するストレス障害・PTSDを生み出しているという。「最も基本的な権利<生き残るための権利>がいかに蹂躙されているかを明らかにすること。それが現代の最も緊急な問題として認識されるべきである」とする辻内氏の原発災害の切り口とその論理には説得力があった。

私が都内やさいたま市で生活していた頃に原発事故が発生し、双葉町の被災者と役場がさいたまスーパーアリーナに避難してきたので何度か訪問した。そして330日にそこから加須市の旧騎西高校校舎の仮役場と被災者が移動し、多くの教室を避難所として過ごすようになった。その後、20127月からの双葉町の復興まちづくり委員会に参画することになり、しばしば訪問し教室で避難生活している被災者と話し合う機会があった。その後さいたま市内で喫茶店を始めた双葉町からの被災者の店で「福玉だより」を時折、読ませてもらい、201210月頃だったか、辻内さんが投稿されていた「埼玉県内避難者アンケート調査結果について」という記事を読んだ。

今回のご報告を聴き、色々なことが去来した。辻内さんの埼玉県内を中心とした被災者のストレス障害などに対する支援活動(医療活動など)はどのように進められてきたのだろうか、災害ケースマネジメントは有効に機能しているのだろうか。チェルノビルでのPTSDはどうだったのだろうか、そもそも比較が可能だろうか。1mSv/年~5mSV/年~20mSv/年の数値の間を揺れ動かされた被ばく量情報(果ては100mSv/年までOKなどという放射繊維学の専門家の言説まで、それらによって分断・対立・差別がもたらされた)。原発被災地や被災者、あるいは福島県による「構造的暴力」に対する告発や裁判は世論を動かしてきたのだろうか。などなど、興味尽きないご報告をいただいたことに感謝したい(HS)。

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