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広島 “幻の和牛”比婆牛 ブランド力向上目指すプロジェクト

  • 2024年10月31日

G7広島サミットで世界の首脳にふるまわれた庄原生まれの和牛「比婆牛」。流通量が少なくほとんどが地元で消費されることから、「幻の和牛」ともいわれています。この「比婆牛」の流通量を増やしブランド力を高めようと、広島県は9月、新たなプロジェクトを立ち上げました。その狙いとは。

(NHK広島放送局記者 福島由季)

広島市で開かれた比婆牛の魅力を発信するイベントです。
生産者や料理人などおよそ30人が集まりました。

比婆牛生産農家 田中髙志さん
「すごくおいしいです。こんな(料理)初めて食べました、こんなおいしい料理は県民皆さんが食べられるようになったらいいなと思います」

赤身のうまみと口溶けのいい脂が特徴の比婆牛は、去年5月に行われたG7広島サミットの夕食でも首脳たちにふるまわれました。

イベントに参加した、農家の田中髙志さんです。
庄原市で40年以上、比婆牛などを育てきました。えさにこだわり、こまめに見回りをするなど、牛の体調管理を徹底しています。

田中さん
「6時間以上は絶対、牛を見ない時間を空けない、子どもを大きくするのと一緒ですよね。常に気をつけて見る」

しかし、この比婆牛。令和5年の出荷数は184頭と、県内で出荷された和牛全体の1割以下にとどまっています。知名度を高めるには、出荷数を増やしていく必要があります。ところが…。

田中さん
「子牛市に出てくる頭数が限られているので、もうちょっとほしい(生産したい)んですけど、数そのものが出てこない」

田中さんのような「肥育農家」は、子牛を競りで買い付けて飼育します。競りに出される比婆牛の子牛の数が少ないため、生産を増やすことができないというのです。

繁殖農家の山岡芳晴さんです。地域の農家でつくる組合の代表を務めています。
山岡さんは5年ほど前から比婆牛の雌牛を育てていて、もうすぐ出産する予定です。しかし、繁殖農家の間では、比婆牛を選ぶことを敬遠する傾向があるといいます。

消費者にサシの多い牛肉が好まれる傾向が続く中、赤身が売りの比婆牛は高く売れないと思われがちな上、県外のブランド牛に比べて知名度も劣ります。農家は、比婆牛ではなくもっと高く売れそうな牛を選びがちだというのです。
さらに、このところの飼料価格の高騰がこうした傾向に拍車をかけました。上昇したコストを回収するためにも、確実に高く売れる牛を選ぶ傾向が強まっているといいます。
ただ、山岡さんは地域ならではの特産品を絶やさないために、今後も比婆牛を育てたいと考えています。

繁殖農家 山岡芳晴さん
「同じえさやるんだったら、高いものを売りたいと葛藤しているところなんですが、比婆牛をなんとか減少させずに、わずかずつでもいいけえ、せめて300頭ぐらいの子牛を出荷できる態勢に、何とかせにゃいけん」

比婆牛の知名度やブランド力を高め、農家が少しでも高く出荷できるようにしたい。
プロジェクトの柱の1つとなるのが、飲食店での提供です。

こちらの店で出されるパスタの一種「ラビオリ」には、これまであまり使われてこなかったすじの多い部位なども活用。
県内23の飲食店が参加し、比婆牛を使ったメニューを提供するグルメフェアを行っています。
一流の料理人が腕をふるった料理を通じて、価値を高めたいと考えています。

イタリア料理店 オーナーシェフ 白木祐次さん
「肉質に触れて、定番で使っていきたい、今後も比婆牛をお店で使い続けていきたいと思います」

広島県は、こうした取り組みを通じて、「幻の和牛」といわれる比婆牛の流通を増やし、ブランド力を高めていきたいと考えています。

広島県畜産課 小川寛大課長
「ブランド力を向上することによって、流通でも取り扱いたいっていうニーズが出てくる。そうすると、お肉を育てる農家さんは、それを作ろうと思う、子牛市場でも高く売れる。こういった取り組みを今、チャレンジしています。本当の幻は食べられないので、もうすこし手の届く範囲の幻になりたいなと思います」

プロジェクトでは、10月末まで県内各地の飲食店でグルメフェアを行うことにしているほか、一般の人からアイデアを募り、比婆牛を使った土産物や贈答品の開発も行うことにしています。サミットでも注目が集まっただけにより多くの人に比婆牛のおいしさが伝わるといいですね。

  • 福島 由季  記者

    取材・構成

    福島 由季  記者

    2021年入局 
    生活に身近な経済の話題や原爆取材を担当 

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