宿場の砂ぼこり、馬を包む朝もやなどモノクロの陰影を存分に生かし、狭い宿場で手加減なしで繰り広げられる死にもの狂いの戦いを演出した工藤監督の手腕がさえわたる。ジュラルミン刀も使うリアルな戦いぶりは迫力だが、アラカンは近眼で相手が見えず、刀が当たった手応えで芝居をとめていたため、立ち会った斬られ役はみんな本気で必死に逃げていたという。
決死の戦いのあとに何が残るのか。ラストシーンには出征し、壮絶な戦争体験をした脚本家の思いも投影されている。興行的には大成功とはいかなかったが、映画ファンの評価は高く、90年には仲代達矢主演でドラマ化。映画では2010年、役所広司の新左衛門が「斬って斬って斬りまくれ!」と叫ぶ三池崇史監督版が公開。さらに12年には高橋克典主演で舞台化、20年には中村芝翫主演でドラマ化されている。 (時代劇研究家・ペリー荻野)
■十三人の刺客 1963年12月7日公開。封切り当時の同時上映作品は梅宮辰夫・千葉真一主演の「わが恐喝の人生」(佐伯清監督)。