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「財政スペース」と「有効需要の原理」(パート1)

 SNSの発言を補足するシリーズ、今回はこちらっ

 なつかしい。。。

 どうして思い出したかというと、これ。。。

 おやおや。

 陰でこういうこと言うのやめて(笑)

 てか " at times " ってのは不当でしょこれ。

"RK's work at times reads as if it is core MMT"

 ここでミッチェルは、 Koo の仕事がしばしば(連続しない複数の時間において)それがMMTのコアであるように「見える」と言っていて、たしかにそうだと思います。

 なんだけど、わたくしはかつて上の「MMTレンズを身に着けよう」というブログ記事において「財政スペース」という言葉をミッチェルの " Fiscal space " とはずれた意味で使ったことはあるのですが、「短い一時期」のことであったと思いますし、それが「おかしな理解を誘発した」とはとは思わないんですよ。

 っていうか、このころの話こそがその後のわたくし自身の「より正しいMMT理解」につながっているとしか思えないぞ\(^o^)/

 というわけで、そういう話を少々。

マルクス開眼の思い出 

 どうしても外せないのが、わたくしが当時通っていた小料理屋に、上のようなわたくしのブログをご覧になった大石さんが来てくださり、そのことによってわたくしはマルクスに「出会う」ことになったんじゃんっていう。

 なつかしいなー

 これが2019年の夏だったから、わたくしがMMTの勉強を始めて9か月くらいの出来事。

 ミッチェルたちの前の教科書を買ったのが2018年11月くらいだったかな。これ。

 今見たら、この本、ずばり「資本論」そのものがリファレンスに入っているし!

 ええと「財政スペース」の話ですね。

 あのとき大石さんとMMTの説明をしながら、返ってきた反応の中で一言「完全雇用時の総労働…」とおっしゃられたのがすごく引っかかって、というのは、こちらはそういう考え方をしたことがなかったから???っと感じたわけして、今思えば、いかにもマルクス主義者的なこの文字列のことは今でも鮮明に覚えています。

 それでドイツ語はあまり読まなくなってしまっていましたが「マルクスと言えば資本論だよなー」と思って、出会ったこの出だし。

Der Reichtum der Gesellschaften, in welchen kapitalistische Produktionsweise herrscht, erscheint als eine "ungeheure Warensammlung", die einzelne Ware als seine Elementarform. Unsere Untersuchung beginnt daher mit der Analyse der Ware.

 この太字のところ、マルクスは「社会の富は、膨大な数の商品の集まりとして現れている」という。

 えええええ、マルクスっちゅうのはちゃんと「あの話」をしてた人なのか!っと気づく。

 これがもうちょうど二年前くらいか。。。。

 この冒頭で、序文の「ヘーゲルの哲学は頭で立っているのだから、それはひっくり返されなければならない」という言葉の意味が分かる。

 おおおおおマルクスすごいじゃん\(^o^)/、みたいな。

 ええと、財政スペースの話でした。

 そう、わたくしはこのとき自分自身のそれまでの思考が「それは頭で立っているよ」と言われているということに気付いたというわけ。

 だからやっぱ資本論は必要なんですよね。

 これに気付いて以降、それまでMMTが「依拠しているということになるのかな?」と思ってきたポストケインズ、いや、ケインズやカレツキについてすら視点が逆、つまりマルクスがいう「頭で立っている」わけだ!ということに、ドミノ倒しのように気づいていくことになったのです。

カレツキもケインズも「頭で立って」いた

 ポストケインズ派の皆さんが論理の出発点にする「有効需要の原理」ってあるじゃないですか。

 カレツキがケインズと同時くらいに「発見した」ともいわれるこの理論は、まさにちょうどマルクスの論理を反対側から、つまり結果の側から把握した論理になっていると思います。

 だからこそ、正しいように「見える」。

 この「頭で立っている」「論理が逆」というのは「大間違い」ということでないんです。

 何度も何度も紹介している資本論第二版の序文。

 ヘーゲル弁証法の神秘的な面を私は 30 年ほどまえに,それがまだ流行していたときに,批判した。ところが,私が『資本論』の第一巻の仕上げをしていたちょうどそのときに,いまドイツの知識階級のあいだで大きな口をきいている不愉快で不遜で無能な亜流が,ヘーゲルを,ちょうどレッシングの時代に勇敢なモーゼス・メンデルスゾーンがスピノザを取り扱ったように,すなわち「死んだ犬」として,取り扱っていい気になっていたのである。それだからこそ,私は自分があの偉大な思想家の弟子であることを率直に認め,また価値論に関する章のあちこちでは彼に特有な表現様式に媚を呈しさえしたのである。弁証法がヘーゲルの手のなかで受けた神秘化は,彼が弁証法の一般的運動形態をはじめて包括的かつ意識的な仕方で述べたということを,けっして妨げるものではない。弁証法はヘーゲルにあっては頭で立っている。神秘的な外皮のなかに合理的な核心を発見するためには,それをひっくり返さなければならないのである。

 この、「知識階級のあいだで大きな口をきいている不愉快で不遜で無能な亜流が,ヘーゲルを,ちょうどレッシングの時代に勇敢なモーゼス・メンデルスゾーンがスピノザを取り扱ったように,すなわち「死んだ犬」として,取り扱っていい気になっていたのである」のくだりは、ちょうど、ポストケインジアンはじめ現代の経済学者がカレツキをそのように「取り扱っている」ことになる、とわたくし nyun は思います。

 わたくしもまた、「偉大な思想家」カレツキの弟子であることを率直に認め、カレツキに媚びを売って「財政スペース」という言葉を使いさえします。しかし、カレツキの弁証法はやはり頭で立っている。「合理的な核心」を見出すためには、やはりそれをひっくり返す必要がある。

 というわけで、ヘーゲルに戻る。カレツキの弁証法はヘーゲルと同じ形をしています。

 パート1はこのくらいにしますが、そうそう、先週ミッチェルもブログでカレツキを取り上げていましたね。

 ミッチェルは、カレツキを、マルクス理論家としてマルクスの系譜に位置付けています。

 それはまったくその通りなのですが、ここにはカレツキの弁証法批判がありません。どもミッチェルはヘーゲル哲学にそれほどお詳しくはないようで、そのせいで、マルクスが資本論で描き出したヘーゲルの転倒(すなわち主流経済学の論理の転倒)に明確には気づいていないように思えるのです。

 そのためにはスピノザに戻る必要があり、別のシリーズで長々と語ったりしているのですが、当面はこのシリーズに集中しようかな。

 そして恩人ミッチェルにご恩を返しに行きたい。これはその下書きのつもりで。


 


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コメント

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「ヘーゲル主義的な事後的「綜合」に対して, 異議を唱えた思想家として, キルケゴールとマルクスを見出す. 彼らは綜合的判断が「命がけの飛躍」を要することをそれぞれの文脈で主張したのである. たとえば, キルケゴールは, 思弁は後ろ向きで, 倫理は前向きだと述べた. 後ろ向きとは事後的だということであり, 前向きとは事前的ということだ.(中略)自己を綜合として実現するためには「命がけの飛躍」がいるのである. 彼[キルケゴール]はこの綜合を「質的弁証法」と呼んだ. しかし, 私がここでいいたいのはむしろ, キルケゴールと無縁どころか対立するとさえ見なされるようなマルクスに, 特に『資本論』に, 同じ問題が見出されるということである」(柄谷行人『トランスクリティーク』岩波現代文庫, 285-286ページ, [ ]は引用者による)

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