【コラム】戦略ミス重ねた石破首相、日本の混迷に現実味-リーディー
コラムニスト:リーディー・ガロウド
Shigeru Ishiba, Japan's prime minister and president of the Liberal Democratic Party (LDP), following the lower house election, at the party's headquarters in Tokyo, Japan, on Sunday, Oct. 27, 2024.
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg米政界に「スカラムッチ」という言葉がある。ホワイトハウスの広報部長を10日ほど務めたアンソニー・スカラムッチ氏のことだが、今では短命を意味するようになっている。
日本では、石破茂氏が同様の意味をもたらすようになるかもしれない。戦後の政治を牛耳ってきた自民党の総裁であり、首相でもある石破氏は、自身の任期をこのような限定的な期間で捉えることにもなりそうだ。
先月、自民党総裁に選出されたばかりの石破氏にとって、当面の責務は明白だった。 世間一般で人気の石破氏は自身の手腕で歴史的な低支持率に苦しむ自民党を立て直す必要があった。だが石破氏は党にとって近年まれに見る最悪の夜を総括することとなった。
27日投開票の衆議院選挙で自民党は2009年以来となる過半数割れに終わっただけでなく、長年のパートナーである公明党との連立与党としても、過半数を割り込んだ。
長い間、比較的安定していた日本政治は、不安定な時代に突入しようとしている。さまざまな考えを持つ多くの政党から成る連立政権や短期間での首相交代の可能性も現実味を帯びてきた。
なぜこのような事態になったのだろうか。石破氏は、単に人気があるというだけではなく、自民党内で最も尊敬を集める議員となるはずだった。先月の自民党総裁選での逆転勝利は、裏金疑惑に最も深く関与していた旧安倍派による10年以上にわたる支配を否定するものだった。
だが、石破氏はほとんど全てで間違ってしまった。5回の総裁選出馬を経て党のトップになった経験豊富な政治家が、なぜこれほどまでに準備不足だったのか理解に苦しむ。
石破氏はまず、党内の保守派を敵に回した。故安倍晋三元首相が中心だった旧安倍派は裏金問題で鼻を折られて当然だったかもしれないが、自民党は基本的に中道右派の政党だ。石破氏が党内の保守派に歩み寄ることはなかった。
むしろ、石破氏は村上誠一郎氏のような人物を閣僚に任命。村上氏は2年前、安倍氏が銃弾に倒れて間もなく、安倍氏を「国賊」と呼び、党から処分を受けていた。
右派を怒らせた石破氏は次に、自らの支持者の期待を裏切り、主要な政策や信念を安易に変えることで評判を落とした。総裁選選に勝利しても総選挙を急ぐつもりはないと示唆していたにもかかわらず、前言を撤回。世論調査で自身の人気を裏付けるデータを待つという通常のプロセスも踏むこともなかった。
混乱再び
国民は変化を求めていたが、石破氏は全くそれに応えることができず、代わりに岸田文雄前首相が使っていたような古いキャッチフレーズを使い回し、遊説先での演説も場当たり的で謝罪に終始した。ほとんどの政治家は、恐らく実現できないであろうビジョンを明瞭に語る。しかし、石破氏はビジョンすら提示できなかった。
石破氏は選挙戦で09-12年の民主党政権を「悪夢のような」と批判。だがかつて、同氏自身がこうした言葉を用いた安倍氏を非難していた。裏金スキャンダルにけじめをつけようとする取り組みもむなしく、石破氏の苦戦は明らかだった。
それでも、今回の大敗ぶりは驚くほどだ。今後どうなるかはまだ不透明だ。石破氏には国会召集まで30日間が与えられている。同氏は連立し得る政党の合意を取り付け、新政権を発足させなければならない。
国民民主党の玉木雄一郎代表にとっては、非常に幸運な一夜だった可能性もある。議席数を4倍に増やした同党は、拡大連立に参加し得る論理的な選択肢であるように見受けられる。しかし、妥協による政権にはつきものの党内対立や意見の相違は避けられない。玉木氏は28日、自公連立政権に参画する考えはないと表明した。
誰がその調整役を担うことになるのか、まだ分からない。勝敗ラインを定めたのは石破氏であり、自公による過半数獲得を自身の目標だと宣言していた。伝統的に、掲げた目標を達成できなかった自民党総裁は、07年の参院選で敗北した安倍総裁(当時)のように時間を置かず辞任する。
しかし、自民党は過去最多の候補者で競った総裁選を終えたばかりであり、再び党首選びを行う意欲があるかどうかは不明だ。同党は今、2000年代後半の混乱を警戒していると言われている。5年半続いた小泉純一郎政権が終わると、総裁が約1年ごとに交代し、09年には政権を失った。
総裁として石破氏を引き継ぐ有力な候補者がいるわけでもない。先月の総裁選で、決選投票で石破氏に敗れた高市早苗氏は党内融和派ではない。総裁選3位の小泉進次郎氏は、党にとってより望ましい候補者だったかもしれないが、総選挙惨敗の責任者である選挙対策委員長であるため、総裁候補となる立場にはない。同氏は選対委員長を辞任した。
自民党には、再編に向け残された時間はほとんどない。来年夏には参議院選挙が控えており、それまでに野党が勝つために必要な選挙協力を行う可能性もある。そして日本には、そうした空白期間を許容する余地はほとんどない。どのような尺度で測っても、石破氏に時間的余裕はない。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Disastrous Poll Puts Japan Politics on Shaky Path: Gearoid Reidy(抜粋)
This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.