石破首相“厳しい審判 痛恨の極み” 自公は連立政権の維持確認

衆議院選挙から一夜明け、与党の過半数割れに追い込まれた自民党総裁の石破総理大臣は、28日午後、記者会見を行いました。

石破総裁「心底から反省 生まれ変わらなければならない」

石破総理大臣は記者会見で「衆議院選挙で自民党は国民から極めて厳しい審判を頂戴した。有為な方々を多く失ったことは痛恨の極みだ。真摯に厳粛に受け止め、心底から反省し、生まれ変わっていかなければならない。今回の厳しい結果は党の改革姿勢に対する国民の厳しい叱責と受け止めている」と述べました。

政治とカネ 「身内の論理 今後は一切排除」

石破総理大臣は「身内の論理や党内の理屈と国民から思われていることを今後は一切排除し、私自身も原点に返り、厳しい党内改革を進め、なかんずく政治とカネについてはさらに抜本的な改革を行っていく」と述べました。

その上で「具体的には、政策活動費の廃止や、旧『文書通信交通滞在費』、現在の『調査研究広報滞在費』の使途の公開や残金の返納、改正政治資金規正法に基づく第三者機関の早期の設置といった政治改革について、党派を超えた議論を行い、速やかに実現を図っていく必要がある」と述べました。

2000万円の支給「説明のしかた反省」

自民党が非公認とした候補者が代表を務める政党支部にも2000万円を支給したことをめぐって「政党支部に支給したもので、選挙に使ってはいけないものだ。法的には何ら問題はないと説明をしてきたが『そうなのか、分かったよ』という反応があったとは思っていない。説明のしかたは反省点として強く持っている。深く反省し『自民党って変わったね』と実感してもらうことが肝要だ」と述べました。

「党派を超えて 意義のある経済対策実施が必要」

石破総理大臣は「選挙戦を通じて切実な国民の声を多く頂戴した。物価高に苦しんでいる方が大勢いる。賃上げの恩恵を受けにくい所得の低い方々への給付金や、闇バイトによる強盗・詐欺への対策、能登地方の復旧・復興などの諸課題を具体的に認識し、問題に対する解決を実現していく。党派を超えて優れた方策を取り入れ、意義のある経済対策、補正予算を実施していくことが必要だ」と述べました。

「国政は停滞が許されず 職責を果たしたい」

自民党総裁としての責任の取り方を問われたの対し「敗因の分析はこれから早急に行い、改めるべき点を改めていく。厳しい声を謙虚に厳粛に受け止めなければならない。しかし厳しい安全保障環境や経済環境にあって国政は一時たりとも停滞が許されない。国民の批判にきちんと厳粛に適切に応えながら、現下の厳しい課題に取り組み、国民生活と日本を守ることで職責を果たしていきたい」と述べました。

また、「今回の選挙は『政治改革をさらに進めなさい』という指摘と受け止め、経済対策・物価高などに対する政策を強力に進めてほしいという切実な声を承った。国民の声に応えるため、国政の停滞を避け、政治改革や経済対策などの課題に、先頭になって取り組み、日本創生を実現していく所存だ」と述べました。

追加公認「広く国民の理解 基準に判断」

今回の選挙で党が非公認として無所属で立候補し、当選した候補者の追加公認について「それぞれの選挙区において主権者である有権者の方々が審判を下されたことは極めて重いものだと認識している。追加公認については、選挙結果を踏まえつつ、広く国民の理解をいただくことができるかどうかを基準に判断していく」と述べました。

また、特別国会の日程については「選挙の日から30日以内とされている憲法の規定にのっとり、適切に判断していかなければならない」と述べました。

一方で、経済対策の策定に向けては「各党がいろんな提案や主張をし、それが国民の支持を得ているということもある。そのようなことを踏まえて、党派を超えて優れた政策を取り入れ、その中で検討していく」と述べました。

党内融和「国民の理解を優先していかねばならない」

党内融和の必要性について「いろんな声に真摯に誠実に耳を傾けていかなければならないが、自民党の中だけで通る理屈になっていないか配慮していかねばならない。国民にどう受け止められているのか、党内融和よりも国民の理解を優先していかねばならない」と述べました。

また、今回の選挙で、収支報告書に不記載があった一部の前議員を非公認とした対応について「厳しい対応をしたが、それが国民にとって十分だと納得いただけるものになっていなかった。理屈が通ろうが何をしようが、国民の気持ちに沿ったものではなかったという反省を強く思っている」と述べました。

野党との連立「想定しているわけではない」

ほかの野党との連立について「今、この時点で連立を想定しているわけではない。それぞれの党の主張に対して寄せられた国民の理解や共感を謙虚に受け止め、取り入れるべきは取り入れることにちゅうちょがあってはならず、まずは、よく協議することから始めなければならない」と述べました。

その上で「その過程で『国民のために党派は違っても一緒にやっていくのだ』という姿勢を国民に理解してもらえるようにすることが、一番多くの議席を獲得したわが党の果たすべき責務だ」と述べました。

公明党 石井代表 “進退含め党内で相談”

今回の衆議院選挙で議席を失った、公明党の石井代表は28日午前、党本部で記者会見し、自身の進退を含めた、新たな党の体制について、党内で相談していく考えを示しました。

この中で公明党の石井代表は、衆議院選挙の結果について「党として合計24議席の獲得となり、公示前の32議席を割り込む大変に残念な結果となった。惜敗した小選挙区や公示前より議席が減った比例代表のブロックでは、多くの支持をいただきながら議席獲得に結びつけることができなかった」と述べました。

その上で「逆風を跳ね返す党自身の力量が足らなかったと言わざるを得ない。今後については、今回の選挙の総括をしっかり行い、再建に向け、新しい体制構築も含め、よく党内で相談していきたい」と述べました。

記者団から進退を問われたのに対し「それも含めてよく相談していきたい。国会議員でなくなれば、代表を続けるのにいろいろな困難が伴うと思うので、そういうことも含めて検討したい」と述べました。

また、石井氏は次の衆議院選挙の対応について「埼玉14区で捲土重来を期すつもりだ」と述べ、再び埼玉14区から立候補する考えを示しました。

このほか、小選挙区での擁立に向けた今後の対応について「わが党の実力からすれば、小選挙区で擁立している数はあまりにも少なすぎる。289小選挙区のうち11しかなく、これからもチャンスがあれば広げていく」と述べました。

石破首相 公明石井代表と会談 連立政権の維持確認

今回の衆議院選挙で、自民・公明両党は、目標としていた過半数の233議席を下回り、過半数割れに追い込まれました。

選挙から一夜明けて、石破総理大臣は公明党の石井代表と国会内で会談しました。

この中で石破総理大臣は「今後の政権運営は公明党とよく相談しながら進めたい」と述べ、石井代表も協力する考えを伝えました。

その上で、政治への信頼を回復し衆議院選挙で掲げた公約の実現を図ることが必要だとして、自民・公明両党による連立政権の維持を目指すことを確認しました。

そして両氏は、政治改革に向けて、党から議員に支給される「政策活動費」の将来的な廃止も念頭に政治資金の透明性の確保に取り組むことなどを盛り込んだ新たな政策合意を交わしました。

一方、会談の中で石井代表は、自民党が非公認とした候補者が代表を務める政党支部にも2000万円を支給したことについて「選挙戦に相当影響があった」と指摘し、石破総理大臣が「公明党に非常に迷惑をかけた」と陳謝する場面もあったということです。

自公 特別国会日程めぐり協議 11月中旬までに召集で検討へ

総理大臣指名選挙を行う特別国会の日程をめぐって自民・公明両党が協議し、自民党は、来月の外交日程なども踏まえ、中旬までに召集する案を示し、引き続き検討することになりました。

総理大臣指名選挙を行う特別国会は、衆議院選挙の投票日から30日以内に召集しなければならないと定められていて、投票から一夜明けた28日、自民・公明両党の幹事長や国会対策委員長らが国会内で会談し、日程を協議しました。

この中で公明党は「衆議院選挙を受けた党の体制の立て直しに時間が必要だ」として、早期の召集は難しいという考えを伝えました。

これに対し、自民党は、来月中旬にAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議や、G20サミット=主要20か国の首脳会議が相次いで行われることも踏まえ、中旬までに召集する案を示しました。

そして両党は、総理大臣指名選挙に向けた野党との調整状況も見ながら、特別国会の召集時期を検討することを確認しました。

【解説】政治部 山本雄太郎記者

記者解説 4分18秒

自民党 臨時役員会「連立政権の維持を確認したい」

今回の衆議院選挙で、自民党は選挙前から議席を56減らして191議席にとどまり、公明党とあわせても、過半数割れに追い込まれました。

選挙から一夜明け、石破総理大臣は28日午前11時前に自民党本部に入り、菅副総裁や森山幹事長と会談したあと、11時半ごろから臨時役員会に出席しました。

出席者によりますと、この中で石破総理大臣は「きょう午後公明党との党首会談を行い、連立政権の維持を確認したい」と述べたということです。

林官房長官「引き続き支えていきたい」

林官房長官は28日午前の記者会見で「選挙結果やその要因について、政府としてコメントすることは差し控えたいが、民主主義の根幹である選挙は国民の意見を聞く貴重な機会であり、結果を謙虚かつ厳粛に受け止め政権運営にあたっていきたい」と述べました。

その上で、自民・公明両党が過半数の議席を下回ったことへの対応を問われ「野党との協力のあり方は各政党間で議論されるべき事柄であり政府として答えることは差し控えたい」と述べました。

また石破総理大臣の進退については「石破総理大臣は『今後われわれが掲げた政策をどう実現していくか、努力を最大限していかなければならない』と述べていると承知しており、引き続き支えていきたい」と述べました。

さらに、牧原法務大臣と小里農林水産大臣が落選したことについて「両大臣が落選したことは大変残念だが、引き続き大臣として責務を果たしていただきたいと考えている。辞任の申し出も受けていない」と述べました。

一方、政府が策定する経済対策への影響を問われ「予断を持って答えることは差し控えたいが、政府としてはまずは対策に盛り込む施策の具体化について検討を進めていく」と述べました。

このほか、外交に与える影響を問われたのに対しては「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で引き続き現実的な国益を踏まえた外交により日米同盟を基軸に友好国や同志国の輪を広げ、外交力と防衛力の両輪でわが国の平和と地域の安定を実現する」と述べました。

小泉選対委員長 辞表提出し受理「選挙の結果責任引き受ける」

自民党の小泉選挙対策委員長は、衆議院選挙で敗北した責任をとりたいとして、石破総理大臣に辞表を提出し受理されたことを明らかにしました。

今回の衆議院選挙で、自民党の獲得議席は選挙前から56議席減らす191議席にとどまりました。

これを受けて、小泉選挙対策委員長はきょう午後、党本部で記者団に対し「石破総裁と会い、選挙対策委員長として結果を受けて職を辞すという辞表を提出し、受理していただいた。選挙の結果責任は選挙対策委員長がすべて引き受けることは当然のことだ」と述べました。

その上で「今の自民党に求められていることは、目標を掲げて戦ってその結果が出なかったら執行部で責任を負うべきであり、選挙対策委員長が責任をとることは国民から見ても当たり前のことだ」と述べました。

また、敗因について「2年前から続いている政治とカネの問題に決着をつけられず、選挙に向かってしまい、国民に理解を得られるような環境をつくることができなかった。『自民党は変わらなければいけない』という審判を素直に受け止め反省の上にたって再出発するため、これからしっかりと党改革を進める一員として役割を果たしていきたい」と述べました。

小泉氏は、9人で争われた先月の(9月)自民党総裁選挙に立候補し、決選投票に進めず3位に終わりましたが、その後、石破政権発足に伴って選挙対策委員長に起用されました。

今回の衆議院選挙では、知名度の高さをいかし、選挙の顔として各地の選挙区に応援に入りましたがわずか1か月で辞任することになりました。

政治部 高橋路記者リポート

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