裁判員制度導入から15年 高止まりする辞退率 審理長期化、守秘義務も影響か

国民から選ばれた裁判員が職業裁判官とともに刑事事件を審理する裁判員裁判が導入されてから21日で15年を迎えた。今年2月末までに12万人余りが裁判員や補充裁判員に選任され、計約1万6000人の被告に判決を下した。審理の長期化や候補に選ばれても辞退する割合が高止まりしているなど課題も多い。

負担大きく、7割弱が辞退

裁判員裁判では、裁判員6人と裁判官3人が殺人などの重大事件を裁く。成人年齢の引き上げで昨年からは18、19歳も選ばれるようになった。

原則、辞退できないとされる裁判員だが、実際には辞退者が多い。開始当初の21年の辞退率は53・1%だったが、その後上昇傾向が続き、令和5年では66・9%となっている。

背景には、審理期間の長期化といった裁判員への負担がある。

最高裁によると、初公判から判決までの平均実審理期間は平成21年に3・7日だったが、昨年は14・9日と4倍に。事前に争点を絞り込む公判前整理手続きの平均期間も、昨年は11・1カ月と平成21年の4倍になっている。

一方、厚生労働省の昨年度の委託調査では、裁判員に休暇を認める「裁判員休暇」を導入した企業は50・4%にとどまる。「守秘義務」のある裁判員の経験が十分に共有されず、裁判員に対する社会全体の理解が十分に進んでいないとの指摘もある。

昨年度の最高裁のアンケートでは裁判員を「やってみたい」との回答は約4割にとどまったが、参加後の感想は「非常に良い」「良い」とした回答が96・5%に上った。

一般社団法人「裁判員ネット」代表理事の大城聡弁護士は「誰がどんな意見を言ったのか特定できない範囲であれば元裁判員が経験を語れるよう、守秘義務を緩和すべきだ」としている。

無罪破棄は17人

制度が始まった平成21年5月から今年2月末までの間に裁判員裁判で判決を受けた計約1万6千人の被告のうち、無罪となったのは157人。有罪率は99%で、制度開始前(平成18~20年)の職業裁判官による裁判の有罪率とほぼ同水準だ。

最高裁は24年、裁判員制度を念頭に、事実誤認を理由として1審判決を見直す場合は「論理則、経験則」に照らして不合理な点があることを具体的に示さなければならない、と指摘。国民が関わった司法判断を尊重する傾向を明確にした。

裁判員裁判で無罪となった157人のうち、高裁で1審判決が破棄された被告は17人(昨年末時点)となっている。

一方、「究極の刑罰」である死刑の適用については、最高裁は27年の決定で「慎重さと公平性」を求める判断を示した。昨年末までに8人の被告について、裁判員裁判の死刑判決が高裁で破棄されている。

裁判員裁判の判決が検察の求刑を上回る「求刑超え」の判決は制度開始初期に相次ぎ、23年に10人、24年に19人、25年に14人の被告に言い渡された。

最高裁は26年、公平性の観点から、従来の判例を上回るような量刑とする場合には「根拠を具体的、説得的に示すべきだ」と指摘。26年から令和4年の求刑超え判決は、年間0~7件で推移している。(滝口亜希、荒船清太)

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