【そもそも解説】本当に人間のせい?温暖化対策しないと何が起きる?
最近、「地球温暖化」や「気候変動」のニュースをよく目にするようになっています。2021年には、「産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える」という世界目標ができました。温暖化は、本当に人間のせいなのでしょうか。また、対策をしないとどんなことが起きるのでしょうか。気候科学が専門の江守正多・東京大教授に話を聞きました。
――地球温暖化はどのような仕組みで起きているのでしょうか?
地球は太陽からエネルギーをもらっていますが、同時に「赤外線」という形で宇宙に向かってエネルギーを放出しています。どんどんエネルギーが出ていくと、地球は寒いはずなんですが、赤外線を吸収する「温室効果ガス」があるので、地表付近の平均温度は過去1万年ぐらい14~15度で保たれています。
しかし、今、人間活動によって、温室効果ガスが増え、赤外線がたくさん吸収されて、戻ってくる。このことによって地球が温暖化しているのです。
――温暖化は、本当に人間のせいなのでしょうか?
結論から言うと、人間活動による温暖化には疑う余地がありません。
上のグラフを見てください。
1850年から2020年までの世界の平均気温の変化を示すグラフです。黒い線は観測データで、オレンジと緑がシミュレーションの結果です。
地球の温度を変える原因は様々ありますが、「人間の原因」と「自然の原因」を一緒に入れて計算すると、オレンジの線になります。「人間の原因」は、大気中に温室効果ガスを増やしたことが最も大きく、「自然の原因」は太陽の活動や火山の噴火です。これらを全部入れて計算すると、実際に観測された黒い線とだいたい一致します。
そして、もし人間の活動がなく、自然の原因だけで地球の温度が決まるとしたらどうなるかを実験して計算すると緑の線になりますが、ほとんど温度は上がっていきません。だから、人間の活動によることは疑いの余地がないのです。産業革命前から約1.1度、地球の温度が上昇したと評価されています。このことは、2021年8月に出た「国連気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書で結論づけられています。
――温暖化をもたらす詳しい原因は何でしょうか。
人間の活動で最も影響が大きいのが二酸化炭素(CO2)です。
世界の二酸化炭素の排出量、特に化石燃料を燃やして出している排出量は、過去60年ぐらいをみても、どんどん増えています。「化石燃料起源」以外に、森林伐採などの「土地利用起源」のものもありますが、最近は「化石燃料起源」が9割ぐらいを占めています。
火力発電所で電力を作る時。ガソリン車を走らせる時。ガスでお湯を沸かしたり、料理を作ったりする時……。そうした結果、大気中のCO2濃度が、どんどん上がっていっています。
昔、私が子どもの頃は、学校の教科書には「CO2濃度は350ppmぐらい」と書いてありました。今、子どもの教科書を見せてもらうと、「400ppm」や「410ppm」と書いてあります。1世代でこんなに上がっています。
新型コロナウイルスで人間の活動が止まった2020年に少し、世界のCO2排出量が減っていますが、減ったのは数%。大気中のCO2濃度はびくともせず上がり続けています。
日本は温暖化で「世界最大の被害」
――このまま温暖化が進むと、どんなことが起きるのですか。
2022年2月に発表された…
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