在特会が「在日特権リストはすべてデマ」と認める

先日おこなわれた討論会の席上で、在特会広報局長の米田隆司が「ネットで出回っていた在日特権リストはすべてデマ」と明言した。このリストとは、たとえばこのようなものである。

このようなリストは、おそらく10年ほど前から、ネット上に少しずつ形を変えながら流通していた。私が4年前にミクシィで拾ったものはこんな感じ。

 【在日が帰国しない・帰化しない理由】 
 ——-在日特権 —— 
 地方税 → 固定資産税の減免 
 特別区 → 民税・都民税の非課税 
 特別区 → 軽自動車税の減免 
 年 金 → 国民年金保険料の免除 心身障害者扶養年金掛金の減免 
 都営住宅→ 共益費の免除住宅 入居保証金の減免または徴収猶予 
 水 道 → 基本料金の免除 
 下水道 → 基本料金の免除 → 水洗便所設備助成金の交付 
 放 送 → 放送受信料の免除 
 交 通 → 都営交通無料乗車券の交付 JR通勤定期券の割引 
 清 掃 → ごみ容器の無料貸与 → 廃棄物処理手数料の免除 
 衛 生 → 保健所使用料・手数料の滅免 
 教 育 → 都立高等学校 高等専門学校の授業料の免除 

これらはかつてなんのソースも添付されたことがなく、事実無根のデマであることはほぼ確定していた。『「在日特権」の虚構』でも、「ソースなしの流言飛語」のひとことで解説を終えているものである。

これらを明確に否定する言葉が在特会の広報局長から出たということで、「在日特権がないと認めるのなら在特会はすぐに解散すべきだ」という声があちこちで上がったが、実は在特会はこれらのデマを公式に主張したことはない。

在特会が「在日特権」としているものは、特別永住資格、通名、朝鮮学校への補助金、年金優遇、住民税減免といったもので、これもその場によって特権とされたりされなかったり曖昧だが、いわゆる「リスト」に載っているものとはちがって、何らかの数字なりデータなり法律なりがあり、それを一応の根拠として、「在日特権である」と主張するものだ。もちろん、その根拠は論旨のすり替えや数字のごまかし、無理やりな曲解などによって構成されているもので、最終的にはこれらもすべて「デマ」ではある。

つまり、在特会は今まで言ってきたことがウソだと認めたわけではない。ここは実に巧妙なので、足元をすくわれないように注意したいところである。

在特会=桜井誠は、これらの「リスト」に載っているものがデマだと最初から知っていた。知っていたからこそ、公式サイトや著書で一度も言及したことがないのである。しかし、在特会が2007年の結成以来、これらの「リスト」に載っているものをデマだと公式に発言したのはおそらく初めてではないかと思う。今までは、デマだと十分わかっていながら、あえて放置してヘイトを煽る状況づくりに利用していたのだ。

たとえば下記は2009年に私がミクシィの在特会コミュでこれらのリストがデマであることを指摘するトピックをつくったもの。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=48291458&comm_id=2921054&page=all

在特会コミュは在特会のオフィシャルではなかったが、事実上在特会を支援するメインコミュであり、当時の副会長である大久保王一をはじめ、在特会の幹部クラスの人間が頻繁に発言していた。もちろん、彼らからもコミュ参加者からもこのリストについて何らまともな反論は出ておらず、トピックを作成したと同時にデマ確定したような形となっている。

また、桜井誠は2013年になっても上記ビラを公式フライヤーとする新大久保でのデモに参加しており(5月19日 通名制度の悪用をなくせ!デモin新大久保)、主催者と一緒になって「朝鮮人を叩きだせー」とシュプレヒコールを上げている。このデモは「日本人差別をなくせデモ実行委員会」が主催となっていはいるが、その実体は菊川あけみ/日侵会であり、裏で在特会と桜井が指示を出していたことは後にさまざまな証拠から明らかになっている。したがって、「このリストと在特会は関係ありません」とは絶対に言わせない。

しかしそれにしても。

この荒唐無稽なデマをきちんと否定するのに、6年の歳月をかけたのが在特会なのだ。そして今年になってなお、これらの「リスト」を公式に「在日特権」として流布する菊川あけみ/日侵会は在特会とともに新大久保をはじめとするヘイト・デモの中心的存在でもあった。ウソをウソと知りながら、朝鮮人を貶めるために平気でふれまわるのが、彼らなのである。

その結果、ネット上で「在日特権」に言及するネトウヨが挙げるのは、今なおほとんどがこうした「リスト」に載っているデタラメであり、在特会が主張する特別永住資格や年金問題などにふれる者は少ない。それを「特権」だとする論理がアクロバティックすぎて、ネトウヨには理解できないのだと思われる(このあたりは、『「在日特権」の虚構』で詳しく説明してある)。

ということなので、《在特会が「在日特権リストはすべてデマ」と認める》は、大いに拡散し、ことあるごとに突きつけてやればよいと思う。いわゆる「平気でウソをつく人々」である彼らには、まず自分がウソつきであるという認識を持たせることから始めなくてはならない。

※関連リンク

在特会広報部が「在日特権リストはすべてデマ」と表明
http://matome.naver.jp/odai/2138389938746953101