残火の肖像 3
幼いクラスナヤが住んでいたのはカナレイカ北部の小さな村で、同年代の友達は一人しかいなかった。
クラスナヤよりも一つ年上のその女の子のことは、正直よく覚えていない。もう昔のことだし、村は九歳の頃に反政府ゲリラの襲撃によって壊滅した。
両親については遺体が確認できたが、幼馴染がどうなったかはわからなかった。あの子の家は襲撃がきたのと逆の方向にあったので、逃げおおせた可能性はあると思った。
クラスナヤは施設に保護された。まともな社会に戻ることもできたが、そうする気は起きなかった。
カナレイカの内戦は外国による工作で、間接的な攻撃であった。これに対して通常の軍事力や正当な手段で対抗することは不可能だった。この国が生き残っていくには情報戦略が必要だと思った。
自分は何をすべきで、何がしたいのか。施設ではそんなことをずっと考えていた。
望みは一つだけ。もしこの地のどこかであの幼馴染がまだ生きているなら、同じ目にあってほしくなかった。全てを失ったクラスナヤは軍の情報機関に入ることを決意した。
その情報機関、カナレイカ中央情報局は、この国に古くから伝わる魔法の適性を重視する傾向があった。クラスナヤにはその資質がなかったが、プラーミャという先輩候補生がクラスナヤの採用を強く求めたおかげで採用された。
まだ候補生なのにそんな便宜をはかれたプラーミャはどれほどの逸材だったのか。そして、なぜ自分のような資質のない者を求めたのか。
それを知ることはできなかった。結局、生き延びたのはクラスナヤだけだったからだ。
プラーミャの名は中央情報局の通称として残った。時代が変わり、政権も変わり、それでもプラーミャは存在し続けている。今は名と自分だけがあの頃の残り火であった。
そう思っていた。しかし本当の残火は、もっと粘りこく暗い闇のようなものだった。
このビル全体が罠である。残火の能力が発動すると現実干渉が封印されてしまう。資質者でないシェイウッドにはそれを感じ取れないが、どういうものかは学んでいる。
「さて、クラスナヤ。準備をしよう」
シェイウッドの体が言う。意識とは関係なく、自分の身体が動かされている。
シェイウッドは肉体のない残火が直接手を下すためのパーツだ。残火――精神だけの存在になった候補生たちの集合意識は、非資質者で優れた身体能力を持つシェイウッドを手足のように使う。
シェイウッドはビルの地下駐車場に行き、標的が現れるのを待った。
そして、本当にあの人が地下に現れた。
「お花屋さん」
こちらの姿を見て、グレイス調査官は一言目にそんなことを言った。冷淡に見える態度からは想像がつかない、妙にかわいらしい言葉を使う。
本当に生きていたとは。それに、短時間でよくここを見つけた。頬のガーゼは相変わらずだが、あの高所から落ちてもなんでもないようだった。
だが今度こそまずい。早く引き返せと心の中で叫んだが、それが口に出ることはない。
「助けてください」
代わりに出るのは、そんな心にもない言葉だけだ。
ここは人目につかず、コンクリートによって固められた古く頑丈な場所。獲物を逃がす心配がない狩り場だ。
「助けてください」
シェイウッドが不自然に繰り返す。目の前の実直な調査官は、たとえ罠だとわかっていても手を差し伸べてしまうだろう。
「……?」
その時、グレイス調査官は異変に気づいたようだ。
この特別な現実干渉阻害場は、GLDによって幽子場を飽和させることで現実干渉を無効化するものだ。力技であり、残火の強いGLD密度をもってしても五分しか維持できない。
短時間だが、どんなに優れた能力者でも解析できない。こんな方法がなぜ他で利用されなかったかといえば、一度も失敗したことがないので情報が漏れたことがないからだ。
残火のような思念体を作ることができるのは残酷な方法のみという理由もある。なお、GLDが一定の濃度を超えた場では正体不明の発火現象が起きる場合がある。候補生の中で、シェイウッドはその発火を起こさない適合者だった。
「何を……うっ」
グレイス調査官は苦しそうに言い、よろめいた。
効果は絶大だ。この調査官は至るところで神経をMLDに置き換えている。それが停止されれば常人以下の感覚になってしまう。
体は思うように動かせず、目もよく見えないはずだ。こうなってしまってはもう、いかようにもできる。
五分どころか、五秒で十分だ。シェイウッドは懐から拳銃を取り出し、ふらふらとする調査官に照準を定める。
やめろ、やめろ、やめろ。
体が言うことをきかない。あっさりと引き金が引かれ、弾丸はまっすぐ調査官の額へと飛んでいった。
ぱしん、という音がして調査官は倒れた。
やってしまった。人形にすぎないシェイウッドの体から声は出ないが、意識が無力感に包まれた。
あとは相手の肉体をGLDで操り、調査局に戻す。そこで情報を収集させたら用済みになる。シェイウッドはGLDのスキットルを取り出し、倒れたグレイス調査官に近づいた。
「ん……」
うめき声が聞こえる。撃たれたグレイス調査官はまだ生きていた。
規則正しく切りそろえられた前髪が、仰向けに倒れたグレイス調査官の目を覆い隠していた。投げ出された両手、横たわった姿は少し艶かしく感じられた。
しかしまだ息があるとは驚いた。狙いを外したつもりはなかったのに。
少しも喜べなかった。生きているならもっとひどい目にあうだけだ。
強敵が相手なので安全のため迅速に殺害しようとしたが、本当なら生きた人間を使ったほうがいいのだ。生きた人形なら長期間にわたって使役することができる。
そうするために、時間をかけて屈服と恐怖を植え付けることになる。拷問で尊厳を全て奪い去れば、強い資質者であってもGLDによる洗脳を受けやすくなる。
これからシェイウッドはその実行役となる。
シェイウッドは倒れたグレイス調査官の服を掴んで持ち上げた。
相手が泣き叫んで「はい」しか言えなくなるまで、精神的にも肉体的にも痛めつける。残火の望むままにそれを実行したのは一度や二度ではない。
「……」
薄く目を開け、グレイス調査官がこちらを見た。これからどんなことをされるか何もわかっていないだろう。
まずは痛みを与えて目を覚まさせなければ。シェイウッドは銃を出そうとした。
その瞬間、手に痛みが走った。
「!」
気絶から目を覚ましたばかりのグレイス調査官が、野生動物のようにしなやかに動いて銃を蹴り飛ばしていた。
思わず掴んだ手を離すと、グレイス調査官は低い姿勢で着地した。とても感覚が削がれているとは思えない身のこなしだ。
グレイス調査官を観察すると、額に小さな傷を見つけた。シェイウッドが与えた弾痕だが、かすり傷だ。
やはり弾が逸れていた。だがシェイウッドは思う。立ち上がったのなら逃げてほしいと。
現実干渉阻害はまだ三分以上続く。体格がいいわけでなく、体内に宿したMLDがただの重荷にしかなっていないグレイス調査官を制圧するのには十分すぎる時間だ。
あらゆる資質者を素手でひねりつぶしてきたシェイウッドには誰も勝てない。これこそがプラーミャがシェイウッドを求めた理由だったのだろう。能力に依存した人間を追い込んで、最後には絶対の暴力によって圧倒する。
残火はシェイウッドの闘争心を煽り、グレイス調査官の方へ向かわせた。立ち上がるならサンドバッグにちょうどいいとでもいうように、まずは顔に一発の拳を叩き込んだ。
そのはずが、拳は空中を虚しく突いただけだった。
「え……?」
次の瞬間、シェイウッドの目の裏で激しく星が瞬いた。
よろよろと後ろに下がった。何が起きたかわからない。
拳による反撃か。いや、違う。顔面に突き刺さった感触は、間違いでなければ靴の踵による一撃であった。
グレイス調査官は目の前にいる。相変わらずふらふらと立っているだけだ。一体何をしたのだ。
もう一度接近し、ガードを固めながら再び拳を放った。
今度は感触をよく確かめた。そして、さっき何が起きたかわかった。
放った拳は、驚くべきことに彼女の頬骨によっていなされ軌道を変えさせられた。次の瞬間、反動でのけぞった姿勢から斜めに半回転した彼女の踵が眼前に迫ってきた。
「ぐ……!」
踵の一撃を左手首で防いだ。しかし、骨折しそうな打撃がシェイウッドの体を震わせた。
全身を使った、とんでもない重みの一撃だ。LDを使ったものではなく、身体能力によるものである。
体が大きい相手と戦うために磨いた技なのか。不利を技術で補っている。彼女はシェイウッドとそっくりだ。
いいや、それ以上だ。対等な素手の殴り合いならシェイウッドに勝ち目はなかったと思うほど、グレイス調査官の技術は神業に思えた。
しかし、やはり限界はある。
「く……うっ……」
グレイス調査官の呼吸は苦しそうだ。二度の蹴りを放ち、それでもシェイウッドを沈めることはできなかった。体力を消耗し、次の一撃は威力が落ちるだろう。
しかし、油断すれば意識を奪われるのはこちらだ。落ちた拳銃が目に入ったが、この敵を前に隙をさらして拾いに行くのはあまりに危険だと思った。
『なら、外から嬲り殺せ』
食らった痛みに残火が暴れ、そんな声を脳に送り込んでくる。
なんてうるさい声だ。シェイウッドは残火に強い反発を覚えた。
やってもいいが、ただで済むと思っているなら大間違いだ。グレイス調査官の技は、これまでの戦いを言葉より饒舌に物語っている。
グレイス調査官からした殺しの匂い。だが自分のためにやったとは思えない。きっと誰かのために他者の命を奪う決断をした。
ずっと自分に問いかけている。正しい目的のために人の命を奪ってきたこと、その罪は許されるべきなのか。
「きっと、それは」
許されないことだ。
目的のために罪を犯したとして、その最後にあるべきなのは贖いだ。そうすることで、この使命はやっと完成するだろう。
だから己を鍛え続ける。その日まで決して折れないために。
残火は少し距離をとり、そこからグレイス調査官に打撃を加えていった。リーチの差で防御にまわったグレイス調査官は少しずつ壁際に追い込まれていく。
ああ、また罪を犯そうとしている。
抵抗できない。冷え切った思考が残火の仕打ちを見ている。
その時、前髪に隠れていたグレイス調査官の銀色の瞳が一瞬だけ見えた。
「――!」
そこには、あの冷たい色に似合わない燃えるような光が灯っていた。
シェイウッドの蹴りが、ついにグレイス調査官の側頭部に当たった。グレイス調査官は一度地面に倒れ、一瞬で受け身をとって再び立ち上がった。
「助けますよ」
グレイス調査官はかすれた声で言った。
健気にもシェイウッドの嘘にこたえて。この不屈の闘志。冷たく見えても、彼女の中には熱がある。
「あなたの中にこそ炎があるわ、クラスナヤ」
あの言葉の意味は?
資質者でないシェイウッドがGLDに歯向かうことは基本的には不可能だ。だったらなぜ、残火にそむいてヒューゴを撃てた?
できるはずなのだ。GLDと同じ幽子で成される精神、燃え上がるような心があれば。
脱力し、グレイス調査官を見る。話すことはできないが、全身全霊で体を取り戻そうと抵抗し続ける。
残火が意識の中で暴れる。それを抑え込むように、この身を心の炎で包み込む。
助けはいらない。シェイウッドの中にも炎がある。
ダメージでふらつくグレイス調査官の銀色の瞳。焦点があっていなかったそれが、ぴしりとこちらを見た気がした。
二人の意思疎通には、きっとそれだけで十分だった。
目の前が真っ暗になり、脳が揺さぶられる感触がした。
手によるものか足によるものかわからないが、本当に見事な一撃だ。顔のどこかの骨が折れる音が聞こえる。
癖になりそうな最高の一発を打ち込まれ、シェイウッドはそのまま意識を手放した。
まわりの候補生はみんなクズみたいなやつばかりだった。腕に覚えのある、戦争に味をしめた兵士が多かった。そいつらは自らのLD資質と、大義名分のもとに法を無視することを特権のように考えていた。
しかし、シェイウッドは最後までそう思えなかった。
暴力は常に罪なのだ。でもこの世界は不完全だから誰かが間違った方法を使うしかなくて、自分はそれをする生贄なのだと思っていた。
最後には処刑台に送られる覚悟がなく、この世界のルールに歯向かう資格はない。戦いに身を置く者としては脆弱すぎる考えかもしれなかった。
「そんな風に考える私は、きっと失格なんだろうね」
いつか、そうプラーミャに問いかけたことがある。
「……いいえ」
だがプラーミャは、そんなシェイウッドの言葉を否定していた。
「いいえ」
妙に必死に、寂しそうな目でそう言っていた。何かを言おうとして口を開き、結局彼女は何も言わなかった。
「あなたの中にこそ炎があるわ、クラスナヤ」
そして、そんな抽象的な言葉だけを残したのだ。
目を覚ますと真っ白なベッドに寝かされていた。いかにも古く見えるコンクリートの壁は、しかし清潔に維持されている。
外から看護師の話し声が聞こえた。顔がかすかに痛む。あの愛らしい調査官の金槌のような四肢でぶんなぐられたのは夢ではなかったようだ。
精神力で一瞬だけ残火の制御を離れ、シェイウッドは無抵抗になった。その瞬間、あのえげつない一撃をもろに食らうことになったのだろう。
短い一瞬で、よく体格のいいシェイウッドを仕留めてくれたものだ。しかし、彼女ならやってくれると信じていた。
顔に触るともう治療を施されていた。整っているはずのシェイウッドの顔は前よりもっと綺麗になっていることだろう。見るのが怖い。
「うまい作りになっていたね、あの幽子場は」
誰かが部屋の中で喋った。シェイウッドは目だけを動かしそちらを見た。
まるでガラス細工のような白銀色の美しい髪が、窓の光を浴びてきらきらと輝いていた。その白さに対し、全ての光を吸収するような黒いドレスを身に着けた女性であった。
「危険な技術だ。だから一人で行くなと言ったのに、全くあの無鉄砲は」
女性は上からこちらを覗き込み、聖なるものとも妖艶なものともとれる笑みを向けていた。
シェイウッドは背筋が凍った。
資質者でなくとも、目の前の存在が何かわかった。この業界にいてそれがわからない鈍い者はいないだろう。
超存在だ。おそらくはメテオ、合衆国政府に関わっているという一体。
「電話をするかね。もう通じないと思うけど」
超存在は言い、シェイウッドが使っていた端末をベッドに置いた。
「……失敗だった」
シェイウッドは諦めの境地にいたり、そう口にした。
「グレイスは規格外だからね。弾除けは私の仕掛けだが、それがなくてもなんとかしただろう」
超存在は語る。不自然に逸れていたシェイウッドの射撃は、その場にいない超存在の神がかり的な力の影響を受けていたようだ。
メテオは調査局に関わっているらしい。こんなものに手を出そうとした時点で、運命は決まっていた。
「残火は……GLDの思念体はどうなった?」
シェイウッドは最も気になっていたことを尋ねた。
「私が飲み込んだ。本来の理念とはかけはなれた存在になっていたね」
シェイウッドの問いに、超存在はあっさりとそう答えた。
かつての候補生たちの魂を統合した思念体。実体のない霊魂。おそらくはあれが、プラーミャという組織のコアだった。
様々な人間に乗り移って使役し、痕跡を残さずに情報工作を行う。究極のスパイ活動だ。理念だけが独り歩きし、カナレイカのために不幸を撒き散らしていた。
法に背いても自国の民の平穏のために働く。血塗られた道である。そんな道の中で、シェイウッドの仲間たちは歪まされていった。
残火は怪物的すぎた。いずれカナレイカの内部から火災を巻き起こす可能性があるような、危険で制御できない力だと感じられた。
メテオが言うには、シェイウッドの上司は国家防衛という本質を見失っていたそうだ。欧州のシュエット家によって操られ、残火を便利に使っていたという。
「消したのか?」
「私ではないが、消されたようだ。もう連絡がつかない」
あの上司はこの世からいなくなった。カナレイカで何かがあったのだろう。なんとなく、それには別の超存在が関与しているのかもしれないと思った。
「……そうか」
超存在による説明を聞き、シェイウッドはどこかほっとした。少なくとも、もうあれについて考える必要はないということだ。
「どうして抵抗できたのか、よくわからない」
シェイウッドは、他に気になっていたことを口にした。
残火の支配は強いものだった。最後の瞬間、シェイウッドは一瞬それに抗うことができた。
GLDは精神の動きと繋がっている。GLDが精神に干渉するように、精神の方を動かしてGLDを機能させることが訓練次第で可能である。あの時はそう思って精神力でなんとかしようとしたのだが、残火ほどの濃密なGLDに対して行うのは簡単なことではない。
何が起きたのか、超存在なら答えを出してくれるかもしれない。そう期待しての質問だった。
「きみは資質者ではないが、資質を持つ人間と何度も戦ってきた。現実干渉の発動の間隙をつくのがうまいんだろう」
メテオの分析は実にシンプルだった。
だが、そう言われて少し納得した。
LDや現実干渉はシェイウッドにはどうすることもできないが、それを使うのは人間だ。人間をつぶさに観察することで発動を見極め、それを計算にいれて動くことで相手に対抗してきた。
候補生との戦いで身につけたことだ。それは現在まで役に立っている。残火にいたってはその候補生たちの集合体なので、慣れてくれば本能的に癖が読めたのだろう。
「プラーミャが助けてくれた、というわけではないんだな」
シェイウッドは言って、自分の声がひどく感傷的なのに気付いた。
がらにもなく、久しく忘れていた寂しさを感じているらしい。
「ヒューゴという工作官を射殺したのも同じだ。彼の提案を受けて一緒に仕事をすることによほど抵抗感があったのかな?」
メテオは言った。確かに、裏切りを簡単に口にするヒューゴに腹が立ったのは事実である。
そういえばあの時、上司は急にシェイウッドの任務を中止したがった。想定外の行動をとったシェイウッドを見て、残火の支配から離脱し始めているとわかったからだったのかもしれない。
「役目は終わったから、もう人を殺さなくていい。よくがんばったね、シェリー」
メテオは唐突に、妙に優しい口調でそんな言葉を言った。
そして、シェイウッドの手を暖かく包んだ。傷だらけの手を慈しむように撫でた指はやがて離れ、黒いドレスの袖の中にしまわれていった。
「敵のスパイに、ずいぶん好意的なことだ」
「敵? 人間ごときは、私の敵になりえない」
会話を続ける。普通の人間と話しているようで、何か大きなものを見ているようでもあった。
不思議な相手である。最初に感じた緊張と恐怖はだんだん薄れてきている。
シェイウッドはベッドから体を起こし、ゆっくり立ち上がってみた。美しい超存在の前に立ち、じっと相手の目を見る。
「メテオのもとで働け、と?」
わかりにくかったが、シェイウッドはメテオの行動をそう解釈した。
「うん。でもその前に、きみの上司になる人を知ってもらおう」
言って、超存在は扉を開いて外に出た。
看護師や患者が歩いている。普通の病院に見えるが、少し雰囲気が暗い。
「上司って?」
「私のカウンター、グレイス・ハート主任調査官。きみには、彼女の護衛役をやってもらいたい」
グレイス。あの小柄で気高い調査官は今この病院に来ているらしい。
(残火の肖像 4に続く)
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