(社説)「闇バイト」強盗 新たな加害者 防ぐには
「闇バイト」を使う強盗事件が首都圏を中心に相次ぐ。住宅に押し入り暴力を振るう手口に市民の不安は大きい。捜査当局は指示役を特定し全容解明を急がねばならない。
同時に、犯罪に走る若者らをいかになくすか、手立てを考えることも重要だ。
実行役として逮捕された容疑者の多くが20代で、高額報酬につられて応募し、犯罪行為に加担したという。
今月、横浜市で高齢男性が手足を縛られ殺害された。22歳の容疑者はSNSの「ホワイト案件」との投稿に応募。途中で闇バイトと気づいたが身分証で個人情報を把握され、家族への危害を考えると断れなかった、と供述した。
人の命が奪われた結果は重大だ。手を下したのなら法の裁きを受け、罪の深さに一生、向き合わねばならない。
新たな加害者を生まないためにどうしたらいいのか。
闇バイトに注意を呼びかける東京都の特設サイトによると、「上場企業の仕事」「行政の許可を得た作業」など虚偽の文言で安心させたり、あえて高額報酬とうたわず、普通の求人広告を装い日給1万円程度で募集したりする例もある。高すぎないバイト代に犯罪と気づかず応募し、逮捕に至った例もあるという。
「秘匿性の高いアプリで連絡してくる」「不必要な家族情報まで送らされる」など、少しでも怪しいと感じたら関わらないこと。途中で気がつけば勇気を持って引き返せばよい。自分や家族が脅迫された場合でも相談してほしいと警察庁は呼びかけている。
社会経験が十分でなく、スマホを通じた人間関係が中心の生活をしていると、何が危険かを判別する力を養えない、という専門家もいる。
若者らに問題を身近に考えてもらうため、静岡大学の塩田真吾准教授(教育工学)は静岡県警と共同で教材をつくった。あえて闇バイトをやってもよいと思うのはどんな時か、チェックシートに記入する形式だ。実際に高校の授業で使うと、多くの生徒が「荷物を届けてほしい」など、困っている人を助けるならやるかも、と回答した。
塩田准教授は「過去の事例を紹介するだけでなく、自分が関わるかもしれない場合を想定することでわがことととらえる契機になる」と話す。断り、助けを求める大切さを知るため、授業では誰に相談するか話し合うことも勧める。様々な取り組みを通じ社会全体で防止策を考えたい。
防犯も大切だ。怪しい訪問者に注意し、玄関や窓に複数の錠を付けるなど、平時からの対策も一層心がけよう。
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