宝永噴火による泥流は、現代でも起こりうる
現代でも、富士山が噴火して大量の火山灰が富士山から東へ降った場合には、宝永噴火のときのような災害が長期間にわたって発生する可能性がある。なお、宝永噴火による被害と復旧の詳細は、2006年に内閣府から公表されている(中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会」編『1707富士山宝永噴火報告書』)。
富士山では2900年前の噴火による御殿場岩なだれのあとにも、大規模な泥流が発生している。これは富士山の東斜面から、酒匂川や黄瀬川沿いに流下し、莫大な量の堆積物を残した。堆積物の総体積は3立方キロメートル近くもあった。岩なだれだけでも御殿場市を埋めつくすほどだったはずだが、さらに100年以上にわたって泥流の被害が続いたと考えられている。
富士山噴火における泥流の発生には、現在、2つのケースが想定されている。
1つは、積雪期に積もった雪を融かすことにより生ずる泥流で、融雪型泥流と呼ばれている。
もう1つは、噴火によって積もった火山灰などの多量の堆積物が、台風などをともなう大雨によって一気に流されて起きる泥流である。このタイプの泥流は、宝永噴火後の例のように、噴火が終了してからも長い期間、断続的に発生する。
では、続いて次の回では、この2タイプの泥流について、それぞれの災害予測を見ていこう。
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続いては、富士山俯瞰が起こった場合に想定される2つの泥流のタイプと、それにともなう被害やその対処法について考えていきます。
続く〈富士山噴火で「泥流」が発生したら…まさかの水深20センチで「水死」、そのとき避難猶予は「たったの1時間」〉は下の【関連記事】よりどうぞ。
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