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217/1877

178.男は去った。

five days ago.- night


「どういたしましょう…?」


誰からとも言わず、自然と声が漏れた。

その国の統治を任された王と、その家臣達が円卓を囲み頭を悩ませていた。


あの男が馬車で去ってから夜になっても、彼らの動揺は広がる一方だった。彼は、その目論見も自分達に詳しくは語らず部下を連れて去ってしまった。

だが、彼や部下達との会話を聞いたという奴隷や護衛達の話では、届いたという書状の内容や突然の計画変更はどれも聞き過ごすことのできるものではなかった。

更にはついさっき、別の書状も届いた。やはりそこには今朝ほど詳細な情報でないにしろ、確かにそれを裏付ける内容が書かれていた。


「ですが、あの御方は〝余計な事はするな〟と仰られておりました。」

「馬鹿が。あの御方は我が国のことなどはどうでも良いと考えている。…例え、どれほどの損害を出そうとも。」


その言葉に、場にいる誰もがゴクリと喉を鳴らした。そうだ、その通りだと皆が目配せをしあった。

「もし、…懸念していた通りの事態になれば…。」


こちらの損害は計り知れない、と。それは、誰もが言わずとも理解していることだった。

暫くの沈黙が流れ、互いの息遣いすら聞こえる中。その国内では最も権力を持つ男が再び口を開いた。


「妨害だ。」


ボソッと短く放たれた言葉に誰もが振り向き、息を飲む。すると、全員の注目を浴びた男は今度こそはっきりとした言葉でその場にいる全員に命じた。


「使い捨てできる者を用意しろ。何でも良い、どのような手を使っても良い。我らの利益は我らの手で守るのだ。最悪の場合であろうとも、決して奴等に万全を与えるな。」


あの御方には決して知られぬように。

そう釘をさすように重々しく語る男に、その場にいる全員が同意した。


爆破、毒薬、脅迫、懐柔、金も手段も選ぶなと語る男の言葉は常軌を逸していた。


「必要あらば殺せ。」

「必要なくとも殺せ。」

「国に損害を。」

「邪魔者には死を。最悪不能になればそれで良い。」

「金を握らせ野に放て。」

「急げ。」

「急げ。」

「今すぐに‼︎」


狂ったように声を上げながら彼らは立ち上がる。

すぐにでも動ける人間を、裏稼業の人間を秘密裏にと。


彼らは理解していなかった。


自分達が今関わっている国、そして関わろうとしている国の






…その、恐ろしさを。


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