「リムズ レーシング」は,実在のメーカーやバイクが登場する“リアル・バイク・シミュレータ”だ。バイクに使用する各パーツもメーカー公式の物が用意され,鈴鹿やニュルブルクリンクといった,世界の有名な公式サーキットが再現されているというバイクファンにはたまらない作品となっている。そんな本作を発売前にプレイする機会を得たので,プレイレポートをお届けしよう。
気をつけろ バイクは急に 曲がれない
本作はリアルなバイク・シミュレータではあるが,覚えるべき操作はアクセルとブレーキ,そして左右への車体の傾けのみで,既存のレースゲームと変わらない操作感覚で楽しめる。チュートリアルは丁寧で,ガイドボイスも日本語吹き替えに対応しているのがポイントだ。
ただ,最初はおそらく多くの人がカーブを曲がりきれずに転倒したり,コース外を走ってしまったりするのではないかと思う。この点は,リアルなシミュレータだからこその「減速の必要性」と「バイクで曲がることの難しさ」が関係している。
本物のレーシングタイプのバイクに乗ったことがないという人の中には,“バイクは,自転車の延長線上にある乗り物だ”と思っている人もいるのではないだろうか。しかし,自転車とバイクでは,同じ二輪でも性質がまったく異なる。
自転車で曲がるときは,主にハンドルを左右に動かすことで曲がるが,レーシングタイプのバイクのハンドルは,自転車ほど曲がるようにできていない。自転車のハンドルは,90度近く曲がるものもあるが,バイクのハンドルはその半分の角度も動かせるかどうか,というくらいに曲がらないのだ。
ではどうするかというと,ハンドルの曲げに加えて,車体を傾けることで曲がっていく。バイクレーサーが,膝が地面スレスレになるまで体と車体を傾けている姿を見たことがあると思うが,あれはカッコつけているわけではなく,あそこまで傾けないことには,よりスピードを落とさずにカーブできないからだ。
しかし,車体を傾ければ曲がれるというものでもない。そもそも,速度がつきすぎていると,いくら傾けようが曲がりきれない。カーブの手前で適正速度まで落とし,転倒しない程度の速度は維持しつつも,限界まで車体を傾ける。そして,カーブを抜けるかどうかという地点から,アクセルをふかし始める。極端な話,バイクレースはこの操作をいかに的確に行えるかの競争でもある。
また,車体の傾けは急には行えない点にも注意したい。まっすぐの状態から,コントローラのスティックをいきなり右にいっぱい倒したとしても,車体は急に傾いてくれない。このため,カーブへの進入角度の急な調整はできないのだ。
現実に高速で走っているバイクで急に車体を傾けようものなら,そのまま転倒してしまう。本作はそうした挙動がリアルに準拠しているため,ゆっくりと傾くわけだ。なので,普通のレースゲームの感覚でスティックを倒していると,カーブへの反応がやや遅れて反映され曲がり切れない。
バイクレースは,風を切り裂くスピード感とエンジンの轟音によって,反射神経でカーブを曲がるかのような勢いに満ち溢れた力強いレースだと想像する人もいるかもしれない。しかし実際は,コースを熟知し,どこで減速してどこから加速するかを正確に行う緻密なシミュレーションゲームのような側面がある。
四輪のレースゲームによくある「敵の車との接触」も,二輪の場合は致命的な衝撃になるので,慎重にならなければならないし,一歩間違えば曲がりきれないカーブを的確なライン取りで減速しながら,急に背後から迫りくる敵車に接触されないように調整することもある。まるで綱渡りをしているかのようなスリルが,そこにはあるのだ。
バイクレーサー・ライフを疑似体験できる要素の充実
ゲームモードは「シングルプレイヤー」と「マルチプレイ」に分けられている。
マルチプレイに関しては発売前のプレイということもあり,本稿では触れないが,タイムトライアルに挑戦してリーダーボードを駆け上がり「名声」を獲得していく「オンラインチャレンジ」,ほかのプレイヤーとの対戦が可能な「オンラインカスタムイベント」,マルチウィンドウによる「オフライン対戦」などが用意されている。
一方,シングルプレイヤーは「キャリア」「シングルレース」「非公開テスト」「アカデミー」「レーシングチュートリアル」がある。「レーシングチュートリアル」はゲーム開始時に行われるチュートリアルをもう一度プレイするもの。「シングルレース」と「非公開テスト」は,マシンやコース,天候などを自由に設定して走るいわゆるフリーのレースモードのようなものだ。シングルレースでは,敵の車が存在するレースを行い,非公開テストでは,敵の車がいない中,1人でテスト走行をする。
「アカデミー」は,バイクの操縦方法やバイクのセッティングに関する知識を学べるモードだ。実際に走りながらさまざまなお題をクリアしていくのだが,同様のものが「キャリア」モードの中にもあり,そちらで達成すると,このモードでもアンロックされる。
「キャリア」モードは,自分の分身となる「ライダー」をカスタマイズし,8台のバイクの中から1台を選んでスタートする。序盤は最初に選んだバイクのみしか使えず,モードが進めば,ほかのバイクもアンロックされていく仕組みだ。
「キャリア」モードでは,巨大なガレージを本拠地として,さまざまなメニューが存在する。1階と2階があり,それぞれ異なるメニューが用意されている。
1階には「カレンダー」「バイク作業場」「研究」がある。「カレンダー」はキャリアモードを進行していくためのメニューで,これを順にこなしていくことが,すなわちキャリアモードを進行することになる。
「バイク作業場」では,「マシン変更」「バイクチューニング」「エンジニアリング」といったバイクのカスタマイズが可能だ。
チューニングに関しては,正直,バイクを本格的にいじったことがある人でないと理解できないものが多く,最初は無理にいじる必要はない。「エンジニアリング」は,レースで稼いだお金を使ってスキルツリーを開放していく,いわばレーシングチームのエンジニアのレベルアップをするかのような成長要素となっている。
「研究」は,「エンジニアリング」と同様に「研究エリアのスキルツリー」があり,成長させることで,また別種の項目がより便利になっていく。
2階のメニューは「管理」「ロッジ」「設定」の3つだ。
「管理」は,先の「エンジニアリング」や「研究」と同様に専用のスキルツリーがあり,成長させることで,ショップでのパーツ価格が割引されたり,インベントリ枠が拡張されたりしていく。「ロッジ」はライダーのカスタマイズをする場所で,傷んだ装備品を着替えたり,不要品を売却したりできる。
キャリアモードではお題のクリアによって報酬額が変わってくるが,納得のいく結果が出るまでがんばろうとすると,1つの項目につき,軽く数時間は費やすことになる。アップデートで変化するかもしれないが,原稿執筆時点で少なくとも70もの項目が確認できたので,ボリュームは相当なものだ。
ゲーム内容は,とにかくレースをして,ガレージでチューニングして,またレースに出て……の繰り返しとなるが,各種スキルツリーの開放や,劣化したパーツの交換等のメンテナンス作業が,いい塩梅のクッションになっている。自分だけの,“バイクレーサーとしてのセカンドライフ” が確かにモニタの中にあり,これを楽しめるかどうかで,本作に対する評価は大きく分かれるのではないかと思う。
こだわり抜かれたリアル志向のゲーム。シミュレータとしては現時点で最高峰
本作に限らず,シミュレータ系のゲームすべてに言えることだが,決して「お手軽に爽快感を得られるレースゲーム」ではない。直線でどんなに飛ばそうが,カーブではキッチリと減速する必要がある。細部にこだわるリアル志向な人向けであり,決して万人向けではないことは記しておきたい。
一方で,小難しいことは分からなくてもとりあえず走りながら少しずつ理解していけることと,こだわりたい人は細かくセッティングができることは本作の美点だ。これ以上のバイク・シミュレータを,少なくとも筆者は知らない。夢のようなガレージで好みのバイクの手入れをして,レーシングチーム体験ができるというだけで惹かれる人も多いはずだ。
余談だが,主観視点にして,スイッチを「強」にした扇風機の風を顔に当てながら走ると,思いのほかリアルな体験ができる。実際にはフルフェイスのヘルメットを被るわけだから,「そうはならんやろ」とセルフツッコミしてしまいそうになるが……。