新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類となった2023年5月~24年4月の1年間で、死者数が計3万2576人に上ったことが24日、厚生労働省の人口動態統計で分かった。季節性インフルエンザの約15倍と格段に多く、大部分を高齢者が占める。政府は重症化リスクの低下を理由に新型コロナの類型を引き下げ、日常生活の制約はほぼなくなったが、今も多くの人が脅威にさらされている。

現在の感染状況は落ち着いているが、例年冬にかけて感染者が増える傾向にある。東北大の押谷仁教授(感染症疫学)は「大勢が亡くなっている事実を認識し、高齢化社会の日本で被害を減らすために何ができるのかを一人一人が考えないといけない」と訴えている。

人口動態統計のうち、確定数(23年5~12月)と、確定前の概数(24年1~4月)に計上された新型コロナの死者数を集計。その結果、3万2576人となり、65歳以上が約97%だった。同時期のインフルエンザの死者数は2244人。新型コロナは、ウイルスが次々と変異して高い感染力を持つ上、病原性はあまり低下せず、基礎疾患のある高齢者が感染して亡くなっているとみられる。

男女別では男性1万8168人、女性1万4408人で、男性の方が多い傾向だった。喫煙者や慢性肺疾患の患者が男性に多いことが一因の可能性があるが、詳細は解明されていない。

新型コロナによる年間死者数は、オミクロン株の流行で感染が急拡大した22年は4万7638人、23年は3万8086人で、高い水準ながらも時間の経過に伴い減少傾向にある。自然感染やワクチン接種で免疫を持つ人が増えた影響という。

3万2576人を23年の死因別年間死者数に当てはめると、腎不全(3万208人)より多く上から8番目。感染症としては最多だった。

今年4月1日以降、治療薬や入院費の補助といった患者への公費支援はなくなった。押谷氏は「社会経済を止めずに死者をできるだけ減らすためにも、高齢者へのワクチンや高齢者施設における検査といった有効性が示されている対策の費用は国が負担すべきだ」と指摘した。(共同)