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拡張する脳

脳とコンピューターを「融合」させる技術の実用化が国内外で目覚ましく発展しています。その研究現場や課題を伝えます

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拡張する脳

中国軍が関心、敵兵の「脳を支配」現実味は? 米中で研究加速

中国軍の機関紙「解放軍報」。脳とコンピューターをつなぐ技術に関する記述が目立つようになった=2023年4月6日、池田知広撮影

 脳と機械をつなぐ技術は、医療やビジネスの世界だけでなく、安全保障の分野でも実用化が模索されている。中でも米国と中国は、技術開発でしのぎを削る。国際学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」のウェブサイトには、中国・杭州の浙江(せっこう)大が実施したある実験の映像が公開されている。

 箱の中に迷路のようなコースが設けられ、コース上には所々に矢印がある。背中に通信装置を背負った白いネズミはスタートの位置から歩き出すと、矢印の意味を理解していないのに、矢印が指す方向へ進みながらゴールに向かっていく。その様子を、そばにいた男性が見つめていた。

 「これはBCIを用いて哺乳類同士の脳を直接、接続した初めての試みです」。実験に取り組んだ浙江大のシュウ・ケディ教授はそう解説する。

 連載「拡張する脳」の第3部は、以下のラインアップでお届けします。
 上/ 米中対立 互いを恐れて進む研究
 中/ 「軍民両用」 防衛装備庁の狙い
 下/ どうなるBMIの軍事応用

 BCIとは、脳と機械をつなぐ技術「ブレーン・コンピューター・インターフェース」のことだ。「ブレーン・マシン・インターフェース(BMI)」とも呼ばれている。

 実験で、男性は脳波を読み取る装置を装着していた。右手を動かそうとイメージするだけで、その脳波が電気的な刺激に変換されて、通信装置を介してネズミの脳に送られる。

制空権ならぬ「制脳権」

 ネズミが矢印と反対の方へ進もうとした場合、男性が進路を直すために手を動かそうとイメージすることで、刺激がネズミの脳に伝わり、進行方向を変えさせ矢印の方向へ向かわせる。

 今回の実験で、ネズミの「遠隔操作」ができたとしている。シュウ教授は、人と人の「脳同士」の接続によって、話をしな…

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