“ルフィ”事件の実行役「闇バイト応募は終わりの始まり」

首都圏で相次いでいる一連の強盗事件で、逮捕された容疑者の供述などから実際に使われた闇バイトの募集内容が明らかになりました。逮捕された「実行役」などは、なぜ闇バイトに応募し、どのように犯罪に足を踏み入れていったのか。

「ルフィ」などと名乗る指示役のもとで行われた強盗事件の一部に「実行役」などとして関わり、実刑判決を受けた20代の被告がNHKの記者の接見に応じ、「闇バイトに応募するのは終わりの始まり。最後に待っているのは懲役刑だけだ」と話しました。

“ルフィ”事件の実行役 20代の被告は・・・

NHK記者(左)の接見に応じる “ルフィ”事件の実行役(右)

被告によりますと、闇バイトに応募したきっかけは、生活費や遊興費などで200万円以上の借金を抱えていたことでした。

SNSで「日当10万円」「高額バイト」などと書かれた投稿を見つけて連絡すると、相手からは一定時間が経過するとメッセージが消える秘匿性の高い通信アプリでやりとりするよう指示されました。

当初は、1回につき10万円で特殊詐欺の受け子や出し子を紹介されましたが、その後、「タタキがある」と言われ、被告が「タタキとは何か」と尋ねると、「強盗だ。報酬は1回につき100万円」だと言われたといいます。

「相手が丁寧で信用し個人情報送ってしまった」

強盗に関わることになったことについて、被告は「強盗をすると警察に捕まるかもしれないという不安はあった。多額の現金を手に入れるには、普通の仕事では難しく、悪いことでもしないと稼げないと思った。警察に捕まるリスクよりお金がもらえることを優先した」と話しました。

その際、相手から免許証の写真や家族の住所などを送るよう求められたということで、被告は「リスクは少し考えたが相手が丁寧で信用してしまい、普通の仕事と同じで個人情報が必要だと言われて送ってしまった」と話しました。

「応募したら逃げ出せなくなった」

1件目の強盗事件に関わり、100万円余りの報酬を受け取った被告に対し、指示役は「別のタタキの案件がある」と再び強盗に加わるよう求めてきたといいます。いったんは断ったものの、「こっちは個人情報を持っている」とか「家族を探す」などと脅され、やるしかないと思ったということです。

被告は「相手は態度をひょう変させて、本当にひどい目に遭わされると思った。脅されたときに警察に相談することも考えたが自分がやった強盗がバレるのが怖くて、捕まりたくなかったので相談しなかった」と話しました。

そして、2件目の事件に実行役として関わったあと、逮捕された被告は、懲役9年の実刑判決を受け、現在は、控訴中です。事件を起こしたことについて、被告は、「どうしてもお金が欲しくて応募したら逃げ出せなくなった。こんなことになるなんて想像できなかった。被害者の方には申し訳ない」と振り返りました。

「最後に待っているのは懲役刑だけ」

また、闇バイトは“集団心理”が働くといい、「自分は捨て駒なんだとは感じていたが、みんなでやっているからということで、罪の意識は薄れてしまう。それと同時にみんなでやっているのに自分だけ抜けたいとは言い出せない雰囲気もあった」と話しました。

そのうえで、いま首都圏を中心に闇バイトを実行役にした事件が相次いでいることについて、「お金欲しさに、闇バイトがどういうものか想像できずに軽い気持ちで応募しているのではないか。闇バイトは“終わりの始まり”。一度入ると抜け出せない。最後に待っているのは懲役刑だけだ」と話していました。

闇バイトに応募 特殊詐欺に関わった男性は・・・

闇バイトに応募し、特殊詐欺に関わったとして懲役3年の実刑判決を受け、2023年に出所した30代の男性です。

闇バイトに応募したきっかけは、ギャンブルにはまって、消費者金融などに数百万円の借金があったことでした。

SNSで短期間で高収入を得られる仕事を検索してメッセージを送ると、秘匿性の高い通信アプリをダウンロードするよう求められ、やりとりを始めたといいます。

そこで紹介されたのは、指示された住宅に行ってキャッシュカードを受け取り、ATMで現金を引き出す、特殊詐欺の「受け子」や「出し子」でした。

「実家に何かしらの手段」脅され逃げられない状況に

男性は「1回目に話を聞いたときは、ちょっとやばいんじゃないかと危機感はあったんですが、ヤミ金に手を出してしまうくらい借金で追い込まれていて、とりあえず早くお金がほしいということばかり考えていました」と話しました。

その後、免許証や銀行口座を写した画像や実家の住所を送るよう指示され、もし途中で逃げた場合、「実家に何かしらの手段をとる」などと脅されたということです。

男性は、「詳しい説明を受けた段階で、すでに個人情報は送ってしまっていた。『実家に何があっても知らないからな』と言われたので、追い込まれて逃げられない状況でした」と話しました。

そして、特殊詐欺の「出し子」としてATMから引き出した現金の5%を報酬として受け取りましたが、キャッシュカードを受け取りに3件目の住宅に行ったところで警察官に声をかけられ、逮捕されました。

そのときの心境について男性は「最初は普通に日当をもらえるんだと仕事を探しましたが、捕まったときは、まさかこんなことになるなんてと、頭が真っ白になり、もう人生終わったなという感覚でした」と振り返りました。

「闇バイトは割に合わない うまい話は絶対にない」

刑務所での服役を終えた男性はいま、過去に罪を犯した人や、ギャンブル依存症の人などを支援する団体の施設で、専門のスタッフからカウンセリングを受けるなど更生プログラムを受講しています。

9月からは、団体の紹介で飲食店でアルバイトも始め、もう一度自立した人生を歩み直したいと考えています。

男性は「被害者に対しては、身勝手な理由で大切な財産を奪ってしまい、本当に申し訳なく思っています。闇バイトはやっぱり割に合わないし、うまい話は絶対にない。誘惑に乗っかってしまうと、結局、いつの間にか悪の道に引きずり込まれてしまい、目に見えない十字架を一生背負い続けることになる。楽して稼ぐのではなく、自分の力で働いて得たお金のほうが価値があると思っています」と話しました。

そのうえで、いま首都圏で事件が相次いでいることについては、「確実に実行役は捕まるので安易な気持ちで絶対にやらないでほしい。被害者だけでなく、自分の身近な人たちも悲しませてしまう本当に卑劣な行為だと思うので、どんなに困った状況でも安易にうまい話には乗らないでほしい」と話していました。

支援団体「応募しても抱え込まずに相談を」

ワンネス財団 ディレクター 森田宏さん

男性を支援している団体の森田宏さんは、「最近は闇バイトに応募してしまったという相談も来るようになった。まずは闇バイトには関わらないで、応募してしまったとしても、1人で抱え込まずに、支援機関や警察などに相談してほしい」と話していました。

闇バイトで強盗 募集内容明らかに “深夜に人運び5万円”など

首都圏で相次いでいる一連の強盗事件で、逮捕された容疑者の供述などから実際に使われた闇バイトの募集内容が明らかになりました。

「深夜に人を運んでください。報酬5万円」とか「会社の持ち逃げされた金を回収する仕事」などと紹介していて、警察当局は、不審な求人情報には応募しないよう呼びかけています。

ことし8月以降、首都圏で相次いでいる「闇バイト」を使った一連の事件では、これまでに「実行役」や「見張り役」、現金の「回収役」など30人以上が逮捕されています。

捜査関係者への取材で、逮捕された容疑者の供述などから実際に使われたSNSでの闇バイトの募集内容が明らかになりました。

▼「即日払いのバイトがあります」や
▼「ホワイトな高額案件あります」など、
具体的な内容が書かれていないものがあった一方
▼「深夜に人を運んでください。報酬5万円」とか、
▼「報酬35万円。資金調達。会社の持ち逃げされた金を回収する仕事」、
▼「運びの仕事があります。最低5万円から」、
▼「引っ越し。即日払い10万円」、
▼「高額案件。タクシー業務。書類運搬受け取り。日給5万円から」など、車での運搬や現金回収の仕事を装って募集するケースがあったということです。

実行役らメンバーを集める「リクルーター役」がいるとみられ、いずれも高額の報酬を提示していましたが、ほとんどの容疑者は受け取っていないということです。

警察当局は具体的な内容を明らかにせずに高額の報酬を約束したり、秘匿性の高い通信アプリでやりとりするよう求めたりするなど、不審な求人情報には応募しないよう呼びかけています。

警視庁「すぐに相談を いつでも引き返せる」

警視庁で、犯罪抑止や防犯対策を担当する生活安全総務課の二宮健課長は、簡単に、高額を稼げる仕事は存在しないので、絶対に応募してはいけないと強調した上で、「もし応募してしまったとしても、わざわざメッセージを消去できる秘匿性の高いアプリに誘導されたり、顔写真や運転免許証、家族の住所を求められたりした時点で、あやしいと気づいてほしい。決して個人情報は送信しないでほしい」と述べました。

個人情報を送ってしまうと、指示役などは家族に危害を加えると脅迫して、犯罪に加わるようしむけてくるとし「脅しを受けた段階で、すぐに警察に相談してほしい。家族の安全も確保するので、いつでも引き返せる。闇バイトに手を出せば、警察は必ず捕まえる。ぜひ、思いとどまってほしい」と話しています。

全国の警察は、
▽緊急の場合には110番通報をするか、最寄りの警察署や交番に駆け込むこと
▽また、警察相談ダイヤルの「#9110」でも、状況に応じた適切な対応をとる
として、早い段階での相談を呼びかけています。

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