JAXAの「サバイバル訓練」が行われたのは7月。
NHKはこの訓練に密着した。
宇宙飛行士がサバイバル訓練 必ず生還するために
米田あゆさんと諏訪理さん。
2023年、宇宙飛行士の候補者に選ばれた2人。
日本人として初めて月へ行く可能性がある。
その2人が1年半に及ぶ厳しい基礎訓練を経て、宇宙飛行士として「正式認定」された。
なかでも特に過酷だったのが、自衛隊の協力のもとで行われたJAXAの「サバイバル訓練」だ。
訓練を通じて見えてきた、それぞれの課題とは。
(科学・文化部記者 加川直央)
2023年、宇宙飛行士の候補者に選ばれた2人。
日本人として初めて月へ行く可能性がある。
その2人が1年半に及ぶ厳しい基礎訓練を経て、宇宙飛行士として「正式認定」された。
なかでも特に過酷だったのが、自衛隊の協力のもとで行われたJAXAの「サバイバル訓練」だ。
訓練を通じて見えてきた、それぞれの課題とは。
(科学・文化部記者 加川直央)
サバイバル訓練とは
JAXAの「サバイバル訓練」が行われたのは7月。
NHKはこの訓練に密着した。
NHKはこの訓練に密着した。
実は、宇宙飛行士にサバイバル技術は欠かせない要素。
例えば、宇宙船が地球に帰還する際に不時着してしまった場合、救助が来るまでのあいだ想定外の場所で生き延びなければならない。
さらに、ストレスのかかる環境で仲間と協力しながら任務を遂行する能力は、過酷な宇宙空間で活動する宇宙飛行士に欠かせないとされている。
訓練は陸上自衛隊の協力のもと、JAXA=宇宙航空研究開発機構が実施。
2日間行われた訓練の中心となったのは、地図とコンパスを頼りに夜通し森の中を歩き、指定された目的地にたどり着く「ランドナビゲーション」と呼ばれるものだった。
例えば、宇宙船が地球に帰還する際に不時着してしまった場合、救助が来るまでのあいだ想定外の場所で生き延びなければならない。
さらに、ストレスのかかる環境で仲間と協力しながら任務を遂行する能力は、過酷な宇宙空間で活動する宇宙飛行士に欠かせないとされている。
訓練は陸上自衛隊の協力のもと、JAXA=宇宙航空研究開発機構が実施。
2日間行われた訓練の中心となったのは、地図とコンパスを頼りに夜通し森の中を歩き、指定された目的地にたどり着く「ランドナビゲーション」と呼ばれるものだった。
諏訪さんと米田さんは2つの分隊にわかれ、それぞれが分隊長として、JAXA職員や民間企業の社員などからなるメンバーを率いることになった。
求められるのは、仲間とともに任務を遂行するための“リーダーシップ”だ。
求められるのは、仲間とともに任務を遂行するための“リーダーシップ”だ。
“最難関” 突破した2人
諏訪さんと米田さんが宇宙飛行士選抜試験に合格したのは、2023年2月。
4127人の応募者の中から選ばれ、倍率2000倍を超える狭き門をくぐり抜けた。
アメリカ主導で進められている月探査の国際プロジェクト「アルテミス計画」では、日本人宇宙飛行士が月面に着陸することなどを盛り込んだ取り決めが日米間で交わされている。
4127人の応募者の中から選ばれ、倍率2000倍を超える狭き門をくぐり抜けた。
アメリカ主導で進められている月探査の国際プロジェクト「アルテミス計画」では、日本人宇宙飛行士が月面に着陸することなどを盛り込んだ取り決めが日米間で交わされている。
2人は、日本人として初めて月へ行く可能性のある宇宙飛行士の候補者として選抜された。
諏訪さんは47歳。
国内外の大学で地球科学を学び、JICAの青年海外協力隊で教師として途上国の子どもたちに勉強を教えたり、世界銀行で防災支援のプロジェクトを担当したりするなど、グローバルに活躍してきた。
趣味はランニングで、フルマラソンを2時間45分で走る体力の持ち主。
選抜試験では30代までの受験者が多くを占める中で、運動機能測定を通過し、チームで課題に挑む試験では自然と輪の中心にいて、抜群のリーダーシップを発揮していた。
国内外の大学で地球科学を学び、JICAの青年海外協力隊で教師として途上国の子どもたちに勉強を教えたり、世界銀行で防災支援のプロジェクトを担当したりするなど、グローバルに活躍してきた。
趣味はランニングで、フルマラソンを2時間45分で走る体力の持ち主。
選抜試験では30代までの受験者が多くを占める中で、運動機能測定を通過し、チームで課題に挑む試験では自然と輪の中心にいて、抜群のリーダーシップを発揮していた。
米田さんは29歳。
東京大学医学部を卒業後、外科医として働いた経験を持つ。
選抜試験では周囲の受験者の会話に注意深く耳を傾けながら、的確に発言する役回りでチームに貢献。
ここぞという場面では臆せず試験官に制限時間の延長を要望するなど、大胆な一面も印象的だった。
東京大学医学部を卒業後、外科医として働いた経験を持つ。
選抜試験では周囲の受験者の会話に注意深く耳を傾けながら、的確に発言する役回りでチームに貢献。
ここぞという場面では臆せず試験官に制限時間の延長を要望するなど、大胆な一面も印象的だった。
宇宙飛行士候補者の基礎訓練とは
厳しい選抜試験を突破した2人も、すぐに宇宙飛行士になれるわけではない。
まずは宇宙飛行士の「候補者」として、宇宙飛行士に求められる知識やスキルを習得する「基礎訓練」を受けることになった。
JAXAのHPによると、基礎訓練はおおまかに以下の4つの分野に大別される。
まずは宇宙飛行士の「候補者」として、宇宙飛行士に求められる知識やスキルを習得する「基礎訓練」を受けることになった。
JAXAのHPによると、基礎訓練はおおまかに以下の4つの分野に大別される。
基礎訓練
1 宇宙飛行士として必要な工学や宇宙機の概要等に関する知識
2 軌道上で実施する宇宙実験に必要な科学の知識
3 軌道上で実際に操作を行う国際宇宙ステーションや、日本の実験棟「きぼう」のシステムに関する知識
4 宇宙飛行士に求められるサバイバル技術や飛行機操縦、スキューバ、語学、体力等の維持向上を目的とした基礎能力訓練
1 宇宙飛行士として必要な工学や宇宙機の概要等に関する知識
2 軌道上で実施する宇宙実験に必要な科学の知識
3 軌道上で実際に操作を行う国際宇宙ステーションや、日本の実験棟「きぼう」のシステムに関する知識
4 宇宙飛行士に求められるサバイバル技術や飛行機操縦、スキューバ、語学、体力等の維持向上を目的とした基礎能力訓練
これらをおよそ2年という短い期間で習得しなければならない。
なかでもサバイバル技術を身につける訓練は、必ず生還するという宇宙飛行士にとって最も重要ともいえる任務達成に不可欠なものと位置づけられている。
なかでもサバイバル技術を身につける訓練は、必ず生還するという宇宙飛行士にとって最も重要ともいえる任務達成に不可欠なものと位置づけられている。
諏訪さんの分隊
こうしてJAXAの「サバイバル訓練」に臨んだ諏訪さん。
過酷な訓練が始まるのを前に、分隊のメンバーとリラックスした雰囲気で談笑していた。
過酷な訓練が始まるのを前に、分隊のメンバーとリラックスした雰囲気で談笑していた。
しかし、訓練が始まると真剣な面持ちに。
ランニングで鍛えた体力に自信がある諏訪さんは、メンバー5人を率いる分隊長として先頭に立って歩き続けた。
「ランドナビゲーション」では、ただ正確に目的地を目指すだけではなく、いかに安全で体力の消耗が少ないルートを選択するかという判断も重要になる。
ランニングで鍛えた体力に自信がある諏訪さんは、メンバー5人を率いる分隊長として先頭に立って歩き続けた。
「ランドナビゲーション」では、ただ正確に目的地を目指すだけではなく、いかに安全で体力の消耗が少ないルートを選択するかという判断も重要になる。
諏訪さんはメンバーとともにルートを検討する場面でも、決断力を発揮して次々と目標を達成していった。
しかし、夜間の行動中、分隊にアクシデントが…。
諏訪さんのペースに必死に食らいついていたJAXA職員が、足を痛めてしまったのだ。
しかし、夜間の行動中、分隊にアクシデントが…。
諏訪さんのペースに必死に食らいついていたJAXA職員が、足を痛めてしまったのだ。
諏訪さん
「ちょっと体力の限界なので辞退したいということなんですが…どうしますか?」
JAXA職員
「もう無理だと思いますね」
「ちょっと体力の限界なので辞退したいということなんですが…どうしますか?」
JAXA職員
「もう無理だと思いますね」
このまま連れて行くべきか、それとも休ませるべきか。
しばらく休憩した後も辞退の意向を示したこのメンバーについて、諏訪さんは隊を離脱させる決断を下した。
しばらく休憩した後も辞退の意向を示したこのメンバーについて、諏訪さんは隊を離脱させる決断を下した。
米田さんの分隊
一方で、諏訪さんとは対照的なリーダー像を見せた米田さん。
米田さん
「皆さんのいまの体力はいかがですか。ちょっとペース速い?ではまっすぐなだらかなほうの道でいきますか」
「皆さんのいまの体力はいかがですか。ちょっとペース速い?ではまっすぐなだらかなほうの道でいきますか」
元医師の経験からか、メンバーの体調を気遣う場面が何度もあった。
そして、行動ルートの判断に迷うときには、メンバーの意見を尊重して自身の判断を変えることも。
米田さんが選抜試験のときに見せた「周りの意見に耳を傾ける」という強みを発揮しながら進んでいった。
しかし…。
そして、行動ルートの判断に迷うときには、メンバーの意見を尊重して自身の判断を変えることも。
米田さんが選抜試験のときに見せた「周りの意見に耳を傾ける」という強みを発揮しながら進んでいった。
しかし…。
自衛隊の担当者
「こう行くって決めたのなら最後まで行く。手前で停滞して、ああでもない、こうでもないと言っていても進まないので」
「こう行くって決めたのなら最後まで行く。手前で停滞して、ああでもない、こうでもないと言っていても進まないので」
判断に迷った場面で決断に時間がかかり、同行した自衛隊の担当者から進み方の遅れを指摘される場面も。
さらに、夜間の休憩前に今後の行動計画を話し合う重要なミーティングで、隊の中の1人が疲れて横になりながら話を聞いているのを見過ごしてしまうなど、気遣いが裏目に出る場面も見られた。
さらに、夜間の休憩前に今後の行動計画を話し合う重要なミーティングで、隊の中の1人が疲れて横になりながら話を聞いているのを見過ごしてしまうなど、気遣いが裏目に出る場面も見られた。
訓練から見えた課題は
JAXAのサバイバル訓練を終えた諏訪さんと米田さん。
後日、訓練の振り返り会に参加した。
訓練に協力した陸上自衛隊が、2人の行動を評価し、フィードバックするというものだ。
後日、訓練の振り返り会に参加した。
訓練に協力した陸上自衛隊が、2人の行動を評価し、フィードバックするというものだ。
自衛隊の担当者は、足を痛めたJAXA職員を離脱させた諏訪さんの判断について、次のように指摘した。
自衛隊の担当者
「諏訪さんは非常に勇猛果敢で、みずからが率先して範を示して取り組んでいました。班員としても頼れるリーダーに見えていたということで、私も同感です。他方、先頭に立つが故に、細かな部分の気づきや、ちょっとした気配りに欠ける部分があったと感じています」
「諏訪さんは非常に勇猛果敢で、みずからが率先して範を示して取り組んでいました。班員としても頼れるリーダーに見えていたということで、私も同感です。他方、先頭に立つが故に、細かな部分の気づきや、ちょっとした気配りに欠ける部分があったと感じています」
宇宙飛行士に選ばれる前、選抜試験に臨んでいた時の諏訪さんは、自分より若い世代の受験者の中にうまく溶け込み、みんなをまとめながら課題を遂行する姿を見せていた。
なぜ今回の訓練では、そうした姿とは異なる振る舞いをみせたのか。
なぜ今回の訓練では、そうした姿とは異なる振る舞いをみせたのか。
トップダウンにこだわった諏訪さん
指摘を受けた諏訪さん。
厳しい状況下でリーダーを務める難しさを語った。
厳しい状況下でリーダーを務める難しさを語った。
諏訪さん
「私はどちらかというと、和を作って物事を進める状況の方がこれまで多かったので、トップダウンで進めることにはあまり慣れていませんでした。今回の訓練でもいつもの感じでやろうとすると、なかなかうまくいかない。どこかでトップダウンにしないといけないと感じて、ふだんやっていないやり方を強く出してみると、和を作る進め方とのバランスが悪くなるところがあって、1人脱落者を出してしまった。JAXAの職員はオブザーバーという立場で関わっていたという意識がどこかにあったから離脱という判断になったと思うのですが、例えばこの訓練を全部やらなきゃいけない立場で来ているということであれば、判断は違ったかもしれない」
「私はどちらかというと、和を作って物事を進める状況の方がこれまで多かったので、トップダウンで進めることにはあまり慣れていませんでした。今回の訓練でもいつもの感じでやろうとすると、なかなかうまくいかない。どこかでトップダウンにしないといけないと感じて、ふだんやっていないやり方を強く出してみると、和を作る進め方とのバランスが悪くなるところがあって、1人脱落者を出してしまった。JAXAの職員はオブザーバーという立場で関わっていたという意識がどこかにあったから離脱という判断になったと思うのですが、例えばこの訓練を全部やらなきゃいけない立場で来ているということであれば、判断は違ったかもしれない」
自衛隊の担当者
「今回はその判断で決して間違っていないと思います。しかしながら、私がもし諏訪さんだった場合は、どうにかして全員を連れて行く方策を考えていきたい。より考えを深めて頂けたらと思います」
「今回はその判断で決して間違っていないと思います。しかしながら、私がもし諏訪さんだった場合は、どうにかして全員を連れて行く方策を考えていきたい。より考えを深めて頂けたらと思います」
チームワークを重視しようとした米田さん
一方、訓練のなかで決断に時間がかかることなどを指摘された米田さん。
この日の振り返りでは、自衛隊の担当者から次のように問われた。
この日の振り返りでは、自衛隊の担当者から次のように問われた。
自衛隊の担当者
「米田さんは非常に気配りがあり、それぞれに対して特性に応じた接し方をしていました。何かをチームとしてやるにあたって、自分の考えを述べながらも、ひとりひとりに確認をしたり、あるいは意見を求めたりして、融和的なチームだなという印象でした。一方で諏訪さんとは対照的に、即断即決、決定力というところが時として欠ける部分がありました。分隊の話し合いの場でひとりが全く違うことをしていた時に、特に声かけもせずにそのままミーティングを進めていましたが、その点に関しては当時思われていたことはありますか?」
「米田さんは非常に気配りがあり、それぞれに対して特性に応じた接し方をしていました。何かをチームとしてやるにあたって、自分の考えを述べながらも、ひとりひとりに確認をしたり、あるいは意見を求めたりして、融和的なチームだなという印象でした。一方で諏訪さんとは対照的に、即断即決、決定力というところが時として欠ける部分がありました。分隊の話し合いの場でひとりが全く違うことをしていた時に、特に声かけもせずにそのままミーティングを進めていましたが、その点に関しては当時思われていたことはありますか?」
米田さん
「確かにひとり違う行動をしているなと思った場面はあったんですけど、ミーティングに全く参加していないわけではなかったかなと思っていたので、私の中では彼も疲れているだろうし、声をかけなくてもいいかなと思っていました。度を超えたというラインが、私の中ではまだ大丈夫かなと」
「確かにひとり違う行動をしているなと思った場面はあったんですけど、ミーティングに全く参加していないわけではなかったかなと思っていたので、私の中では彼も疲れているだろうし、声をかけなくてもいいかなと思っていました。度を超えたというラインが、私の中ではまだ大丈夫かなと」
自衛隊の担当者
「みんなが同じ意識に向かなければいけない状況では、たとえ疲れていても、ああいう行動は望ましくないと考えます。今回のシチュエーションでは、命に関わるような危険を伴う行動を延々とやっているわけですから、チームとしての方向性をひとりでも知らない人間がいると、それだけで乱れていってしまう」
「みんなが同じ意識に向かなければいけない状況では、たとえ疲れていても、ああいう行動は望ましくないと考えます。今回のシチュエーションでは、命に関わるような危険を伴う行動を延々とやっているわけですから、チームとしての方向性をひとりでも知らない人間がいると、それだけで乱れていってしまう」
宇宙飛行士 求められる資質は
2日間にわたって行われた今回の訓練。
自分の得意とするリーダーシップのスタイルをあえて変えて挑むことで、本来の強みを出し切れなかった諏訪さん。
自分の持ち味を生かして臨むも、その裏返しともいえる弱点を指摘されることになった米田さん。
自衛隊の担当者は、2人の健闘をたたえつつも具体的な課題を厳しく指摘していて、振り返り会の場にいた記者の私も、はじめは少し緊張感が高まる雰囲気になるかもしれないと懸念したほどだった。
ただ、諏訪さんはその指摘を一度受け止めつつ、こういう状況だったらもっと違う判断があったかもしれない、などと冷静かつユーモアも交えながら議論を深めていた。
また、米田さんも積極的に自衛隊に質問して、どうすればよかったのかと考えを巡らせながら多くのことを学ぼうとしている姿が印象的だった。
訓練を終えた2人は、すがすがしい顔で次のように話した。
自分の得意とするリーダーシップのスタイルをあえて変えて挑むことで、本来の強みを出し切れなかった諏訪さん。
自分の持ち味を生かして臨むも、その裏返しともいえる弱点を指摘されることになった米田さん。
自衛隊の担当者は、2人の健闘をたたえつつも具体的な課題を厳しく指摘していて、振り返り会の場にいた記者の私も、はじめは少し緊張感が高まる雰囲気になるかもしれないと懸念したほどだった。
ただ、諏訪さんはその指摘を一度受け止めつつ、こういう状況だったらもっと違う判断があったかもしれない、などと冷静かつユーモアも交えながら議論を深めていた。
また、米田さんも積極的に自衛隊に質問して、どうすればよかったのかと考えを巡らせながら多くのことを学ぼうとしている姿が印象的だった。
訓練を終えた2人は、すがすがしい顔で次のように話した。
諏訪さん
「第三者の目線でどういう風に映っていたかというのを聞いて、自分で気づいていくこともありますし、気づいていなかったこともあるので、改めて言語化して頂いて、非常に今後のリーダーシップやチームワークの参考になりました。自分の中で引き出しが多ければ多いほど、今後いろんな状況に対応できると思います」
「第三者の目線でどういう風に映っていたかというのを聞いて、自分で気づいていくこともありますし、気づいていなかったこともあるので、改めて言語化して頂いて、非常に今後のリーダーシップやチームワークの参考になりました。自分の中で引き出しが多ければ多いほど、今後いろんな状況に対応できると思います」
米田さん
「時間をかけてベストを尽くすのではなくて、短い時間で的確に、その瞬間でベターな回答を導き出すということも訓練が必要だと思います。新しいリーダーシップを考えて実行していく経験を積んでいきたいなと思いました。宇宙飛行士としてどうあるべきかということを考える上で、基礎となるひとつの考え方を教えて頂いたという気がしています」
「時間をかけてベストを尽くすのではなくて、短い時間で的確に、その瞬間でベターな回答を導き出すということも訓練が必要だと思います。新しいリーダーシップを考えて実行していく経験を積んでいきたいなと思いました。宇宙飛行士としてどうあるべきかということを考える上で、基礎となるひとつの考え方を教えて頂いたという気がしています」
2人は、指摘をむしろ喜んでいるようにも見え、こうした常に前向きな姿勢こそ、宇宙飛行士になるための資質の1つなのだと感じさせた。
宇宙飛行士としては、まだまだ駆け出しの2人。
これから挑むことになる月面探査に向けて、今回の訓練で指摘された課題をどのように修正していくのか注目していきたい。
(2024年10月24日おはよう日本で放送予定)
宇宙飛行士としては、まだまだ駆け出しの2人。
これから挑むことになる月面探査に向けて、今回の訓練で指摘された課題をどのように修正していくのか注目していきたい。
(2024年10月24日おはよう日本で放送予定)
科学・文化部記者
加川直央
2015入局
京都局を経て、2020年から科学・文化部
宇宙分野を担当
加川直央
2015入局
京都局を経て、2020年から科学・文化部
宇宙分野を担当
WEB
特集 宇宙飛行士がサバイバル訓練 必ず生還するために
米田あゆさんと諏訪理さん。
2023年、宇宙飛行士の候補者に選ばれた2人。
日本人として初めて月へ行く可能性がある。
その2人が1年半に及ぶ厳しい基礎訓練を経て、宇宙飛行士として「正式認定」された。
なかでも特に過酷だったのが、自衛隊の協力のもとで行われたJAXAの「サバイバル訓練」だ。
訓練を通じて見えてきた、それぞれの課題とは。
(科学・文化部記者 加川直央)
サバイバル訓練とは
実は、宇宙飛行士にサバイバル技術は欠かせない要素。
例えば、宇宙船が地球に帰還する際に不時着してしまった場合、救助が来るまでのあいだ想定外の場所で生き延びなければならない。
さらに、ストレスのかかる環境で仲間と協力しながら任務を遂行する能力は、過酷な宇宙空間で活動する宇宙飛行士に欠かせないとされている。
訓練は陸上自衛隊の協力のもと、JAXA=宇宙航空研究開発機構が実施。
2日間行われた訓練の中心となったのは、地図とコンパスを頼りに夜通し森の中を歩き、指定された目的地にたどり着く「ランドナビゲーション」と呼ばれるものだった。
例えば、宇宙船が地球に帰還する際に不時着してしまった場合、救助が来るまでのあいだ想定外の場所で生き延びなければならない。
さらに、ストレスのかかる環境で仲間と協力しながら任務を遂行する能力は、過酷な宇宙空間で活動する宇宙飛行士に欠かせないとされている。
訓練は陸上自衛隊の協力のもと、JAXA=宇宙航空研究開発機構が実施。
2日間行われた訓練の中心となったのは、地図とコンパスを頼りに夜通し森の中を歩き、指定された目的地にたどり着く「ランドナビゲーション」と呼ばれるものだった。
諏訪さんと米田さんは2つの分隊にわかれ、それぞれが分隊長として、JAXA職員や民間企業の社員などからなるメンバーを率いることになった。
求められるのは、仲間とともに任務を遂行するための“リーダーシップ”だ。
求められるのは、仲間とともに任務を遂行するための“リーダーシップ”だ。
“最難関” 突破した2人
諏訪さんと米田さんが宇宙飛行士選抜試験に合格したのは、2023年2月。
4127人の応募者の中から選ばれ、倍率2000倍を超える狭き門をくぐり抜けた。
アメリカ主導で進められている月探査の国際プロジェクト「アルテミス計画」では、日本人宇宙飛行士が月面に着陸することなどを盛り込んだ取り決めが日米間で交わされている。
4127人の応募者の中から選ばれ、倍率2000倍を超える狭き門をくぐり抜けた。
アメリカ主導で進められている月探査の国際プロジェクト「アルテミス計画」では、日本人宇宙飛行士が月面に着陸することなどを盛り込んだ取り決めが日米間で交わされている。
2人は、日本人として初めて月へ行く可能性のある宇宙飛行士の候補者として選抜された。
諏訪さんは47歳。
国内外の大学で地球科学を学び、JICAの青年海外協力隊で教師として途上国の子どもたちに勉強を教えたり、世界銀行で防災支援のプロジェクトを担当したりするなど、グローバルに活躍してきた。
趣味はランニングで、フルマラソンを2時間45分で走る体力の持ち主。
選抜試験では30代までの受験者が多くを占める中で、運動機能測定を通過し、チームで課題に挑む試験では自然と輪の中心にいて、抜群のリーダーシップを発揮していた。
国内外の大学で地球科学を学び、JICAの青年海外協力隊で教師として途上国の子どもたちに勉強を教えたり、世界銀行で防災支援のプロジェクトを担当したりするなど、グローバルに活躍してきた。
趣味はランニングで、フルマラソンを2時間45分で走る体力の持ち主。
選抜試験では30代までの受験者が多くを占める中で、運動機能測定を通過し、チームで課題に挑む試験では自然と輪の中心にいて、抜群のリーダーシップを発揮していた。
米田さんは29歳。
東京大学医学部を卒業後、外科医として働いた経験を持つ。
選抜試験では周囲の受験者の会話に注意深く耳を傾けながら、的確に発言する役回りでチームに貢献。
ここぞという場面では臆せず試験官に制限時間の延長を要望するなど、大胆な一面も印象的だった。
東京大学医学部を卒業後、外科医として働いた経験を持つ。
選抜試験では周囲の受験者の会話に注意深く耳を傾けながら、的確に発言する役回りでチームに貢献。
ここぞという場面では臆せず試験官に制限時間の延長を要望するなど、大胆な一面も印象的だった。
宇宙飛行士候補者の基礎訓練とは
厳しい選抜試験を突破した2人も、すぐに宇宙飛行士になれるわけではない。
まずは宇宙飛行士の「候補者」として、宇宙飛行士に求められる知識やスキルを習得する「基礎訓練」を受けることになった。
JAXAのHPによると、基礎訓練はおおまかに以下の4つの分野に大別される。
まずは宇宙飛行士の「候補者」として、宇宙飛行士に求められる知識やスキルを習得する「基礎訓練」を受けることになった。
JAXAのHPによると、基礎訓練はおおまかに以下の4つの分野に大別される。
基礎訓練
1 宇宙飛行士として必要な工学や宇宙機の概要等に関する知識
2 軌道上で実施する宇宙実験に必要な科学の知識
3 軌道上で実際に操作を行う国際宇宙ステーションや、日本の実験棟「きぼう」のシステムに関する知識
4 宇宙飛行士に求められるサバイバル技術や飛行機操縦、スキューバ、語学、体力等の維持向上を目的とした基礎能力訓練
1 宇宙飛行士として必要な工学や宇宙機の概要等に関する知識
2 軌道上で実施する宇宙実験に必要な科学の知識
3 軌道上で実際に操作を行う国際宇宙ステーションや、日本の実験棟「きぼう」のシステムに関する知識
4 宇宙飛行士に求められるサバイバル技術や飛行機操縦、スキューバ、語学、体力等の維持向上を目的とした基礎能力訓練
これらをおよそ2年という短い期間で習得しなければならない。
なかでもサバイバル技術を身につける訓練は、必ず生還するという宇宙飛行士にとって最も重要ともいえる任務達成に不可欠なものと位置づけられている。
なかでもサバイバル技術を身につける訓練は、必ず生還するという宇宙飛行士にとって最も重要ともいえる任務達成に不可欠なものと位置づけられている。
諏訪さんの分隊
こうしてJAXAの「サバイバル訓練」に臨んだ諏訪さん。
過酷な訓練が始まるのを前に、分隊のメンバーとリラックスした雰囲気で談笑していた。
過酷な訓練が始まるのを前に、分隊のメンバーとリラックスした雰囲気で談笑していた。
しかし、訓練が始まると真剣な面持ちに。
ランニングで鍛えた体力に自信がある諏訪さんは、メンバー5人を率いる分隊長として先頭に立って歩き続けた。
「ランドナビゲーション」では、ただ正確に目的地を目指すだけではなく、いかに安全で体力の消耗が少ないルートを選択するかという判断も重要になる。
ランニングで鍛えた体力に自信がある諏訪さんは、メンバー5人を率いる分隊長として先頭に立って歩き続けた。
「ランドナビゲーション」では、ただ正確に目的地を目指すだけではなく、いかに安全で体力の消耗が少ないルートを選択するかという判断も重要になる。
諏訪さんはメンバーとともにルートを検討する場面でも、決断力を発揮して次々と目標を達成していった。
しかし、夜間の行動中、分隊にアクシデントが…。
諏訪さんのペースに必死に食らいついていたJAXA職員が、足を痛めてしまったのだ。
しかし、夜間の行動中、分隊にアクシデントが…。
諏訪さんのペースに必死に食らいついていたJAXA職員が、足を痛めてしまったのだ。
諏訪さん
「ちょっと体力の限界なので辞退したいということなんですが…どうしますか?」
JAXA職員
「もう無理だと思いますね」
「ちょっと体力の限界なので辞退したいということなんですが…どうしますか?」
JAXA職員
「もう無理だと思いますね」
このまま連れて行くべきか、それとも休ませるべきか。
しばらく休憩した後も辞退の意向を示したこのメンバーについて、諏訪さんは隊を離脱させる決断を下した。
しばらく休憩した後も辞退の意向を示したこのメンバーについて、諏訪さんは隊を離脱させる決断を下した。
米田さんの分隊
一方で、諏訪さんとは対照的なリーダー像を見せた米田さん。
米田さん
「皆さんのいまの体力はいかがですか。ちょっとペース速い?ではまっすぐなだらかなほうの道でいきますか」
「皆さんのいまの体力はいかがですか。ちょっとペース速い?ではまっすぐなだらかなほうの道でいきますか」
元医師の経験からか、メンバーの体調を気遣う場面が何度もあった。
そして、行動ルートの判断に迷うときには、メンバーの意見を尊重して自身の判断を変えることも。
米田さんが選抜試験のときに見せた「周りの意見に耳を傾ける」という強みを発揮しながら進んでいった。
しかし…。
そして、行動ルートの判断に迷うときには、メンバーの意見を尊重して自身の判断を変えることも。
米田さんが選抜試験のときに見せた「周りの意見に耳を傾ける」という強みを発揮しながら進んでいった。
しかし…。
自衛隊の担当者
「こう行くって決めたのなら最後まで行く。手前で停滞して、ああでもない、こうでもないと言っていても進まないので」
「こう行くって決めたのなら最後まで行く。手前で停滞して、ああでもない、こうでもないと言っていても進まないので」
判断に迷った場面で決断に時間がかかり、同行した自衛隊の担当者から進み方の遅れを指摘される場面も。
さらに、夜間の休憩前に今後の行動計画を話し合う重要なミーティングで、隊の中の1人が疲れて横になりながら話を聞いているのを見過ごしてしまうなど、気遣いが裏目に出る場面も見られた。
さらに、夜間の休憩前に今後の行動計画を話し合う重要なミーティングで、隊の中の1人が疲れて横になりながら話を聞いているのを見過ごしてしまうなど、気遣いが裏目に出る場面も見られた。
訓練から見えた課題は
JAXAのサバイバル訓練を終えた諏訪さんと米田さん。
後日、訓練の振り返り会に参加した。
訓練に協力した陸上自衛隊が、2人の行動を評価し、フィードバックするというものだ。
後日、訓練の振り返り会に参加した。
訓練に協力した陸上自衛隊が、2人の行動を評価し、フィードバックするというものだ。
自衛隊の担当者は、足を痛めたJAXA職員を離脱させた諏訪さんの判断について、次のように指摘した。
自衛隊の担当者
「諏訪さんは非常に勇猛果敢で、みずからが率先して範を示して取り組んでいました。班員としても頼れるリーダーに見えていたということで、私も同感です。他方、先頭に立つが故に、細かな部分の気づきや、ちょっとした気配りに欠ける部分があったと感じています」
「諏訪さんは非常に勇猛果敢で、みずからが率先して範を示して取り組んでいました。班員としても頼れるリーダーに見えていたということで、私も同感です。他方、先頭に立つが故に、細かな部分の気づきや、ちょっとした気配りに欠ける部分があったと感じています」
宇宙飛行士に選ばれる前、選抜試験に臨んでいた時の諏訪さんは、自分より若い世代の受験者の中にうまく溶け込み、みんなをまとめながら課題を遂行する姿を見せていた。
なぜ今回の訓練では、そうした姿とは異なる振る舞いをみせたのか。
なぜ今回の訓練では、そうした姿とは異なる振る舞いをみせたのか。
トップダウンにこだわった諏訪さん
指摘を受けた諏訪さん。
厳しい状況下でリーダーを務める難しさを語った。
厳しい状況下でリーダーを務める難しさを語った。
諏訪さん
「私はどちらかというと、和を作って物事を進める状況の方がこれまで多かったので、トップダウンで進めることにはあまり慣れていませんでした。今回の訓練でもいつもの感じでやろうとすると、なかなかうまくいかない。どこかでトップダウンにしないといけないと感じて、ふだんやっていないやり方を強く出してみると、和を作る進め方とのバランスが悪くなるところがあって、1人脱落者を出してしまった。JAXAの職員はオブザーバーという立場で関わっていたという意識がどこかにあったから離脱という判断になったと思うのですが、例えばこの訓練を全部やらなきゃいけない立場で来ているということであれば、判断は違ったかもしれない」
「私はどちらかというと、和を作って物事を進める状況の方がこれまで多かったので、トップダウンで進めることにはあまり慣れていませんでした。今回の訓練でもいつもの感じでやろうとすると、なかなかうまくいかない。どこかでトップダウンにしないといけないと感じて、ふだんやっていないやり方を強く出してみると、和を作る進め方とのバランスが悪くなるところがあって、1人脱落者を出してしまった。JAXAの職員はオブザーバーという立場で関わっていたという意識がどこかにあったから離脱という判断になったと思うのですが、例えばこの訓練を全部やらなきゃいけない立場で来ているということであれば、判断は違ったかもしれない」
自衛隊の担当者
「今回はその判断で決して間違っていないと思います。しかしながら、私がもし諏訪さんだった場合は、どうにかして全員を連れて行く方策を考えていきたい。より考えを深めて頂けたらと思います」
「今回はその判断で決して間違っていないと思います。しかしながら、私がもし諏訪さんだった場合は、どうにかして全員を連れて行く方策を考えていきたい。より考えを深めて頂けたらと思います」
チームワークを重視しようとした米田さん
一方、訓練のなかで決断に時間がかかることなどを指摘された米田さん。
この日の振り返りでは、自衛隊の担当者から次のように問われた。
この日の振り返りでは、自衛隊の担当者から次のように問われた。
自衛隊の担当者
「米田さんは非常に気配りがあり、それぞれに対して特性に応じた接し方をしていました。何かをチームとしてやるにあたって、自分の考えを述べながらも、ひとりひとりに確認をしたり、あるいは意見を求めたりして、融和的なチームだなという印象でした。一方で諏訪さんとは対照的に、即断即決、決定力というところが時として欠ける部分がありました。分隊の話し合いの場でひとりが全く違うことをしていた時に、特に声かけもせずにそのままミーティングを進めていましたが、その点に関しては当時思われていたことはありますか?」
「米田さんは非常に気配りがあり、それぞれに対して特性に応じた接し方をしていました。何かをチームとしてやるにあたって、自分の考えを述べながらも、ひとりひとりに確認をしたり、あるいは意見を求めたりして、融和的なチームだなという印象でした。一方で諏訪さんとは対照的に、即断即決、決定力というところが時として欠ける部分がありました。分隊の話し合いの場でひとりが全く違うことをしていた時に、特に声かけもせずにそのままミーティングを進めていましたが、その点に関しては当時思われていたことはありますか?」
米田さん
「確かにひとり違う行動をしているなと思った場面はあったんですけど、ミーティングに全く参加していないわけではなかったかなと思っていたので、私の中では彼も疲れているだろうし、声をかけなくてもいいかなと思っていました。度を超えたというラインが、私の中ではまだ大丈夫かなと」
「確かにひとり違う行動をしているなと思った場面はあったんですけど、ミーティングに全く参加していないわけではなかったかなと思っていたので、私の中では彼も疲れているだろうし、声をかけなくてもいいかなと思っていました。度を超えたというラインが、私の中ではまだ大丈夫かなと」
自衛隊の担当者
「みんなが同じ意識に向かなければいけない状況では、たとえ疲れていても、ああいう行動は望ましくないと考えます。今回のシチュエーションでは、命に関わるような危険を伴う行動を延々とやっているわけですから、チームとしての方向性をひとりでも知らない人間がいると、それだけで乱れていってしまう」
「みんなが同じ意識に向かなければいけない状況では、たとえ疲れていても、ああいう行動は望ましくないと考えます。今回のシチュエーションでは、命に関わるような危険を伴う行動を延々とやっているわけですから、チームとしての方向性をひとりでも知らない人間がいると、それだけで乱れていってしまう」
宇宙飛行士 求められる資質は
2日間にわたって行われた今回の訓練。
自分の得意とするリーダーシップのスタイルをあえて変えて挑むことで、本来の強みを出し切れなかった諏訪さん。
自分の持ち味を生かして臨むも、その裏返しともいえる弱点を指摘されることになった米田さん。
自衛隊の担当者は、2人の健闘をたたえつつも具体的な課題を厳しく指摘していて、振り返り会の場にいた記者の私も、はじめは少し緊張感が高まる雰囲気になるかもしれないと懸念したほどだった。
ただ、諏訪さんはその指摘を一度受け止めつつ、こういう状況だったらもっと違う判断があったかもしれない、などと冷静かつユーモアも交えながら議論を深めていた。
また、米田さんも積極的に自衛隊に質問して、どうすればよかったのかと考えを巡らせながら多くのことを学ぼうとしている姿が印象的だった。
訓練を終えた2人は、すがすがしい顔で次のように話した。
自分の得意とするリーダーシップのスタイルをあえて変えて挑むことで、本来の強みを出し切れなかった諏訪さん。
自分の持ち味を生かして臨むも、その裏返しともいえる弱点を指摘されることになった米田さん。
自衛隊の担当者は、2人の健闘をたたえつつも具体的な課題を厳しく指摘していて、振り返り会の場にいた記者の私も、はじめは少し緊張感が高まる雰囲気になるかもしれないと懸念したほどだった。
ただ、諏訪さんはその指摘を一度受け止めつつ、こういう状況だったらもっと違う判断があったかもしれない、などと冷静かつユーモアも交えながら議論を深めていた。
また、米田さんも積極的に自衛隊に質問して、どうすればよかったのかと考えを巡らせながら多くのことを学ぼうとしている姿が印象的だった。
訓練を終えた2人は、すがすがしい顔で次のように話した。
諏訪さん
「第三者の目線でどういう風に映っていたかというのを聞いて、自分で気づいていくこともありますし、気づいていなかったこともあるので、改めて言語化して頂いて、非常に今後のリーダーシップやチームワークの参考になりました。自分の中で引き出しが多ければ多いほど、今後いろんな状況に対応できると思います」
「第三者の目線でどういう風に映っていたかというのを聞いて、自分で気づいていくこともありますし、気づいていなかったこともあるので、改めて言語化して頂いて、非常に今後のリーダーシップやチームワークの参考になりました。自分の中で引き出しが多ければ多いほど、今後いろんな状況に対応できると思います」
米田さん
「時間をかけてベストを尽くすのではなくて、短い時間で的確に、その瞬間でベターな回答を導き出すということも訓練が必要だと思います。新しいリーダーシップを考えて実行していく経験を積んでいきたいなと思いました。宇宙飛行士としてどうあるべきかということを考える上で、基礎となるひとつの考え方を教えて頂いたという気がしています」
「時間をかけてベストを尽くすのではなくて、短い時間で的確に、その瞬間でベターな回答を導き出すということも訓練が必要だと思います。新しいリーダーシップを考えて実行していく経験を積んでいきたいなと思いました。宇宙飛行士としてどうあるべきかということを考える上で、基礎となるひとつの考え方を教えて頂いたという気がしています」
2人は、指摘をむしろ喜んでいるようにも見え、こうした常に前向きな姿勢こそ、宇宙飛行士になるための資質の1つなのだと感じさせた。
宇宙飛行士としては、まだまだ駆け出しの2人。
これから挑むことになる月面探査に向けて、今回の訓練で指摘された課題をどのように修正していくのか注目していきたい。
(2024年10月24日おはよう日本で放送予定)
宇宙飛行士としては、まだまだ駆け出しの2人。
これから挑むことになる月面探査に向けて、今回の訓練で指摘された課題をどのように修正していくのか注目していきたい。
(2024年10月24日おはよう日本で放送予定)
科学・文化部記者
加川直央
2015入局
京都局を経て、2020年から科学・文化部
宇宙分野を担当
加川直央
2015入局
京都局を経て、2020年から科学・文化部
宇宙分野を担当