有名廃虚ビルの地でひっそりと

 9月半ばには、都市綜研インベストファンドが大阪・ミナミの土地を基に、新たな投資商品「みんなで大家さん宗右衛門町(そえもんちょう)」を発売した。年10%という高利回りで、募集総額は200億円。12月から1年間の運用を予定する。あえてウェブサイトでの告知は行わず、既存の投資家にメールなどで案内しているようだ。反社会勢力が関わったとされる経緯もあり、長らく誰も手を付けなかった土地には、1970年代以前に建設途中で放棄された廃虚ビルが残る。

大阪・宗右衛門町の土地(2023年撮影)
大阪・宗右衛門町の土地(2023年撮影)
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 共生バンクは行政処分が明けた7月下旬以降、特別買収目的会社(SPAC)を通じてロンドンで子会社を上場したほか、米Lloyds Capital(ロイズ・キャピタル)への成田プロジェクト売却に向けた交渉開始を発表。また銀座・中央通りでビルを売却するなど、グループの資金繰りを巡る動きは目まぐるしい。3万8000人の投資家が、その行方を注視している。

ベテラン不動産鑑定士たちはこう見る

①評価対象地内での事例収集…「最終的に採用した三つの取引事例は、いずれも今回の鑑定評価の対象地である、成田プロジェクト用地内で行われた取引である。このような事例を価格算定の根拠にすることは可能な限り避けるのが常識」

②利害関係人取引…「登記簿などを確認すると、事例A〜Cは売り主、買い主ともに共生バンクグループの企業である。鑑定の依頼者が手がけた取引を、躊躇(ちゅうちょ)なく事例として採用したように見えるのも問題だ。当事者を正当化する、循環鑑定にならざるを得ないのではないか」

③対象地の過大評価…「対象地は市の開発許可を受けたとはいえ、元々山林や畑が広がる市街化調整区域。商業地である成田駅前のほうが繁華性に劣ると評価し、その分、対象地の評価を高めたのは理解困難」

④その他…未竣工建物の詳細や実現可能性に関する説明が不足/ DCF法で前提とする事業計画が、全売上の85%を占める食材販売高(2234億円)に依存/借地権価格の算出で現状の15倍の賃料を想定/定期借地権による借地権価格への影響の考慮が不十分/航空機の航路直下にもかかわらず、航空法の建物高さ制限に対する言及がない、など

(複数の不動産鑑定士の意見を基に構成)

(「日経不動産マーケット情報」2024年11月号より。購読者限定のPDF版はこちら→

小野 悠史=フリーランス本間 純