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旧統一教会側、自民議員に「政策協定」 数十人規模か 応じた議員も

自民

 「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の友好団体が今年の参院選や昨年の衆院選の際、自民党の国会議員に対し、憲法改正や家庭教育支援法の制定などに賛同するよう明記した「推薦確認書」を提示し、署名を求めていたことが分かった。選挙で支援する見返りに教団側が掲げる政策への取り組みを求めたもので、「政策協定」ともいえる内容だ。文書に署名した議員もいた。

 朝日新聞が確認できただけで、衆参計5人の自民党議員が署名を求められていた。教団関係者も確認書の存在を認めた。確認書を提示された議員は5県にまたがり、教団側が国政選挙を通じて、幅広い地域で政策実現の働きかけをしていた可能性がある。教団関係者は取材に、全国各地で数十人規模に署名を求めたと証言している。自民党は所属議員に教団側との接点について調査し9月に結果を公表したが、確認書の存在には触れていない。

 朝日新聞が入手した確認書は1枚紙で、教団友好団体の「世界平和連合」「平和大使協議会」に対し、議員が署名する書式になっている。文書に記された政策は、憲法改正、安全保障体制の強化▽家庭教育支援法、青少年健全育成基本法の制定▽LGBT問題、同性婚合法化の慎重な扱い▽「日韓トンネル」の実現を推進▽国内外の共産主義勢力、文化共産主義勢力の攻勢を阻止――などの内容が柱。

 こうした政策への賛同のほか、「『基本理念セミナー』への参加」を求めた。「推薦確認書」という文書名は同じだが、議員によって示された政策の項目が違うものもあった。提示された議員によると、平和連合側は文書を公表しないことを約束したという。

 衆院議員の一人は衆院選が近づいていた昨年夏、選挙区がある地元で秘書が平和連合側とやりとりして署名した。秘書は「文書は、教団側との政策協定だと受け止めた。一般的に支援団体と政策協定を結ぶことはあるので、警戒感がないままサインした」と話した。

「自民党と連帯していると主張できることが重要」

 政策協定は、選挙の際に政党や候補者と業界団体や労働組合などが結ぶ。候補者は支援を受ける代わりに当選後、団体などが掲げる政策に取り組む。平和連合などから文書を提示されたり、署名したりした議員は「選挙後に見返りを要求されたことはない」として、政治活動に対する教団側の影響は否定している。

 教団関係者は「選挙で推薦確認書への署名を求め始めたのはここ数年のこと」と明かす。国会議員に警戒感をもたれないように強い働きかけは避けてきたが、選挙を支援しても主張が採り入れられないのは問題との声が教団内で強まったためという。「文書にある約束を通じて、選挙後も議員と関係を続けるのが目的のひとつ」「自民党と連帯していると主張できることが重要」とする。

 自民党は衆院選や参院選の政策集に、家庭教育支援法や青少年健全育成基本法の制定を盛り込んでおり、確認書と内容も重なる。憲法改正や安全保障などの政策にも共通点が多い。

 平和連合は、団体が掲げる国家ビジョンなどについてセミナーを開いたり、賛同する政治家を支援したりしている。平和大使協議会は、外交・安全保障や家庭・教育といった政策の推進活動をしている。平和連合は確認書について取材に「特定の政党や候補者を応援することは何の問題もない。詳細に関しては回答を控えたい」としている。協議会から回答はなかった。

 教団をめぐっては、霊感商法や高額献金といった被害が社会問題化している。安倍晋三元首相を銃撃・殺害した容疑者が教団への「恨み」を抱いていたとされ、政治と教団の関わりが改めて問われている。岸田文雄首相(自民党総裁)は、自民党議員は今後、教団側と関係を持たない方針を表明。開会中の臨時国会で首相は教団に対し、宗教法人法に基づく「報告徴収・質問権」を行使し、事実関係の把握や実態の解明をめざす考えを明らかにしている。

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    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2022年10月20日6時3分 投稿
    【視点】

    旧統一教会と自民党の癒着を示す最も深刻な事実が明らかになりました。どの議員が推薦確認書を提出していたのか、実名を知りたい国民が多いでしょう。 家庭教育支援法案も青少年健全育成推進法案も、旧統一教会のように、家族や子どもを特定の価値観(教義)に縛り付け、苦しめることになる可能性を持つ面は、子どもや若者の支援団体や研究者によって強く懸念されてきました。 今の状況で、こうした法案を立法すれば子どもは親の言うことに逆らうな、青少年は恋愛するな、という旧統一教会の価値観を、そのまま自民党が受け止めたと理解され、さらなる国民の反発や分断を招くでしょう。 家族や若者を大切にしたいならまずは、そのための財源を確立し政府予算を増やすことです。 旧統一教会系の自民党議員はしばしばその大切な動きさえ妨害してきました。 特に安倍派に多いこうした議員への不信に対し、安倍派自らそれを乗り越えられるか。 安倍なき政治における、右派の成長が試されています。

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