大津市のいじめ自殺を受けて2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」の改正作業がすすんでいる。昨年12月に超党派がまとめた改正案の「たたき台」では、いじめを放置した教職員を「懲戒処分の対象とする」と明記する内容が盛り込まれた。ところが、読売新聞が1月下旬、この案を報じたところ、一部ネット上がざわついた。
いじめ問題にくわしい鬼澤秀昌弁護士はツイッター上で、「現場の混乱を、さらに助長させかねない」「個人的にはとても残念な方向性だ」と批判的に投稿している。はたして、その真意はどこにあるのだろうか。改正案「たたき台」の問題点を鬼澤弁護士に聞いた。
●現場の先生たちが萎縮してしまう
――ツイッター上で「現場の混乱をさらに助長させかねない」と投稿していましたが、どうしてそう考えたのでしょうか?
まず、議論の前提として、いじめ防止対策推進法上の「いじめ」の定義が、すごく広いことがあります。この法律は「いじめ」を次のように定義しています。
「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」(いじめ防止対策推進法2条)
ざっくり言うと、前後の文脈も関係なく、行為をおこなった児童等の主観も関係なく、心理的または物理的な影響を与える行為を受けた児童等が苦痛を感じたならば、「いじめ」とされているのです。これは、一般的にイメージされているいじめよりもかなり広いです。
たとえば、よく言われるのは、ある生徒が好意を寄せる他の生徒に交際を求めたのに、断られたとします。この場合でも、断られた生徒が精神的苦痛を感じていれば(通常強い精神的苦痛を感じると思いますが)、その交際を断る行為も法律上は「いじめ」に該当します。また、教室でけんかをして叩かれた児童が、叩いた児童に対して「お前やめろよ」と強く言った場合であっても、それにより叩いた児童が苦痛を感じれば、「お前やめろよ」という発言もやはり「いじめ」に該当します。
先生や学校は、「いじめ」の通報を受けたり、児童等が「いじめ」を受けていると疑われる場合、事実を調査した上で、加害児童等を指導し、被害児童等を支援するということになっています。しかし、このように「いじめ」の定義が広いので、どうしたら適切な指導・支援になるのか、判断が難しいことも少なくありません。そのような中で、とにかく法律に違反したら「懲戒」ということにしてしまうと、現場の先生たちが萎縮してしまいます。