10月から定期接種がスタートした「レプリコンワクチン」をめぐり、ある医療機関では誹謗(ひぼう)中傷が殺到し、ワクチン接種を中止せざるを得なくなった。
一方、2024年8月にワクチンの安全性を懸念する声明を出した日本看護倫理学会に対し、製造する「Meiji Seika ファルマ」が名誉毀損(きそん)で提訴する意向を示した。
「偽医者」医療機関に誹謗中傷や脅迫の電話相次ぐ
新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、ある医療機関では誹謗中傷が殺到し、ワクチン接種を中止せざるを得ない事態に陥っていた。
この記事の画像(12枚)誹謗中傷を受けた医療機関:
(ネット上に)偽医者と書いてある。何十年も医師を続けているが、偽医者と言われたのは初めて。
騒動の発端は、10月から定期接種がスタートしたばかりのレプリコンワクチンだ。
ウイルスのたんぱく質であるメッセンジャーRNAを体内で増幅させるため、従来より比較的長い効果を期待できるという。
世界に先駆けて、日本で初めて認可されたレプリコンワクチンだが、接種者の入店を拒否する店が現れるなど、混乱が広がっていた。
レプリコンワクチン接種の予約を受け付けていた医療機関では、「偽医者」、「すぐにワクチンの接種をやめろ」などと誹謗中傷や脅迫の電話が相次いだという。
口コミサイトで低評価1が続々…スタッフも心痛める
誹謗中傷の電話は1日10件ほどにも及び、深夜1時にかかってきたこともあったという。
誹謗中傷を受けた医療機関:
偽医者という言葉以上にひどい辛辣(しんらつ)な言葉がたくさん並び、(口コミサイトで)低評価の「1」が瞬く間に短時間に次々つく。スタッフや家族が見て、心を痛めている。
さらに、ワクチン中止を求めるチラシも投函(とうかん)され、そこには、“絶対に打っちゃだめ!打つと周りの大切な人を傷つけちゃうの!”と書かれていた。
スタッフだけでなく、患者の身の危険すらも感じたため、この医療機関は、レプリコンワクチンの接種を中止せざるを得なくなった。
誹謗中傷を受けた医療機関:
安定した診療を守ることができない。命がけでワクチンを打つ判断には、私の中にはならない。
クリニックに抗議の市議は謝罪
ワクチンに反対する人々による医療機関への止まらない誹謗中傷。
その根拠となっていたとされるのは、日本看護倫理学会が2024年8月に出した、安全性を懸念する声明だった。
レプリコンワクチンを製造する「Meiji Seika ファルマ」は10月9日、この声明について、「事実誤認および科学的知見に基づかない」と反論し、批判を繰り返す団体を名誉毀損で提訴する意向を示したのだ。
ワクチンに反対する人の動きは、ほかにもあった。
東京・世田谷区のクリニックに抗議の電話をしたという埼玉・所沢市の市議は、SNSで「私個人の都合でお電話を差し上げた結果、診療の妨げとなり多くの患者さまにも影響を及ぼしてしまったことを深く反省しております」と謝罪した。
接種者の入店禁止を表明していた都内にある美容院は「正直、こっちにも訴訟が及ぶのではないかと焦っている」と話し、今後、入店禁止の措置を解除するかもしれないという。
ワクチン騒動の波紋は、広がるばかりだ。
(「イット!」 10月11日放送より)
(10月21日 午後1時加筆)
当初、こちらの記事で「日本看護倫理学会がXの投稿を削除した」とお伝えしましたが、日本看護倫理学会ではXの投稿はしていなかったことが視聴者からのご指摘でわかりました。訂正し、おわび致します。