錦織一清 2人の師匠に導かれアイドルから演劇人 つかこうへいさん&ジャニーさんに薫陶受けた演出家の道
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【俺の顔】アイドルとして一世を風靡(ふうび)した「少年隊」の錦織一清(59)は、演劇人としての顔を持つ。旧ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川さんのそばで舞台製作を学び、不世出の劇作家、故つかこうへいさんの舞台出演を機に演出にも積極的に関わるようになった。2人の師匠から薫陶を受けて学んだ「役者に求められるもの」とは――。(吉澤 塁)
眼鏡の黄色いレンズからのぞくやや下がった目尻は柔和な人柄を感じさせる。長い耳たぶに、白髪がのぞく短く整えられた髪。どこか晩年のつかさんの面影を思わせる。
思わず「(つかさんを)意識しているんですか?」と聞くと「いやいや。全然そんなことないよ」と豪快に笑い飛ばしつつ「でも、よくいろんな人から言われるんだよね」。どこかうれしそうだ。
同じ高校に通っていた盟友・植草克秀(57)らと文化祭で初めて舞台演出を手がけた。それがつかさんの名作戯曲として知られる「蒲田行進曲」。99年には同作に主演。以後、演劇人としてつかさんから薫陶を受けて育った。
「初めてつかさんを知ったのは本でした。大変汚い言葉をつづり、時代劇調の罵詈(ばり)雑言で表現する。こんなものがあるんだと衝撃的でしたね」と回想。実際に対面した際には「なんとなく、人の好き嫌いの波長が似ていると感じました。照れ性なところとか、笑いどころのセンスもかぶっていましたね」と通じる部分を感じた。つかさん本人に「(自分の)2代目を継がせたい」と言わしめるほど、多くのことを吸収した。
ただ、演出家としての原点はジャニーさんだと断言する。「ショー作りの師匠はジャニー。それはどんなことがあっても決して曲がらない」。そう言い切ると、真剣なまなざしになった。性加害問題が国内外で批判を集めているジャニーさんだが、学んだことは今でも血肉になっている。
85年に少年隊として「仮面舞踏会」でデビューするも、心のどこかには不満があった。「なんで決められた振り付けを踊らなきゃいけないんだ。そんなことばかり考えていたので、ある種アイドルのアンチテーゼみたいな部分があった。それをジャニーは見抜いていたんでしょう」。
そして機会が訪れる。86年から毎年上演してきた少年隊のミュージカル「PLAYZONE」。タレントとは別の才能を見いだされ、95年版では演出を担当した。それが自身にとって初めて正式に演出家としてクレジットされた作品となった。アイドル、俳優に加えて演出家という新たな“顔”が加わった。
演出家の仕事を始めた当初は周囲から「しょせんアイドルだろ?」といった色眼鏡で見られることが多かった。30歳を超え、つかさんの作品に出演するようになった時も演劇ライターから「本当にできるんですか?」と質問を受けた。そんな悔しさが原動力だ。
もちろん今でも役者として舞台に出演する機会は多い。だが裏方を知っているからこそ、俳優にとって一番大事なことを理解している。「役者に必要なものですか?演技力なんかじゃありませんよ。それはね…。集客力ですよ!」。
2人の師匠から学んだことを生かし、観客に最高の体験を届けるためにも、まずは集客が第一だ。「裏方なのに記者会見にも出て、こうやって取材も受けて、アフタートークショーまでやっちゃう。そんな演出家はいないでしょう!」。インタビュー中も時折立ち上がりながら熱弁を振るったりと、まるで即興劇を見ているようだ。華やかなアイドルとしての経験があるからこそ、人を呼び、楽しませる裏方を務めることができる。
「とはいえ演出家として客席から見ていて、演者が盛大な拍手をもらっているのを見ると、やっぱり嫉妬しちゃうよね」。そういたずらっぽく笑い、さっそうと取材会場を後にする錦織の姿は、やはりサービス精神旺盛なアイドルならではの顔でもあった。
≪2年ぶり藤原紀香とタッグ≫錦織は、女優の藤原紀香(53)が主演する舞台「カルメン故郷に帰る」(8月17~25日、東京・新橋演舞場)で演出を務める。戦後を舞台に、偏見や差別と向き合いながら前向きに生きるストリッパーを描く物語。「時代は古いですが、それを今やることに意義がある。人間くさく、モダンという言葉がちゃんとある時代。そのおしゃれ感も楽しんでほしい」と見どころを語った。藤原の舞台を手がけるのは22年の「毒薬と老嬢」以来2年ぶり。「近寄りがたいイメージもあるかもしれないが、とても気さく。コメディエンヌとして貴重な存在」とその芝居を称えた。
◇錦織 一清(にしきおり・かずきよ)1965年(昭40)5月22日生まれ、東京都出身の59歳。77年に旧ジャニーズ事務所入所。「少年隊」のリーダー。85年にデビューし、翌86年にNHK紅白歌合戦に初出場。舞台「GOLDEN BOY」などに出演。20年に旧ジャニーズ事務所を退所。血液型O。
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