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AERA小林よしのり発言について
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 いま論壇の中で一番好きな論客は?と問われれば小林よしのり氏を挙げたい。氏の論ずるところは実に筋が通っていて、サヨクやホシュの欺瞞や矛盾を抉るから実に痛快だ。とくに最近の格差社会への批判といい、アメリカが押し進める日本改造への警鐘は日本人刮目すべきものだと思う。また『いわゆるA級戦犯』という著書も時期柄、話題を集めている。

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 その小林氏が今回の「富田メモ」に関して初めて意見をメディアに発表した。それは一昨日発売の「AERA」(朝日新聞社発行)の取材に答えてのものだった。


 小林氏はまず、「陛下がこう言っておられるからその御心にひれ伏せ、ではまるで戦前回帰で一番危険な思想。わしは天皇制は支持するけど、天皇を個人崇拝はせん」と前置きして、「だいたい天皇の私的な言葉が影響力を持つのは問題。もし、今後の世論調査で靖国参拝に慎重な意見が高まったとしたら、わしに言わせりゃ日本人は天皇が大好きな右翼的な国民だというまでだな」と言っている。


 むろん、朝日新聞社のAERAだから、小林氏の言葉がそっくりそのまま趣旨を変えずに載っている保証はないが、おおよそこのような事を言われたのだと思うと、残念な気がする。小林氏にしては少し言葉の選び方が乱暴で、いつものような透徹した深さが見受けられない。

 小林氏の言論は傲慢ではあったが、乱暴ではなかったと僕は思う。それが魅力だった。しかし、今回の発言は乱暴な論理構成に見受けられる。だからそれが残念なのだ。そもそも「天皇制を支持する」なんてポチッコロ西尾幹二と同じ発想ではないか。

 それに「戦前回帰で一番危険な思想」なんて軽々しく言ってほしくない。だとするならば、戦前は古今東西の中で最も危ない、それこそ一番危険な思想が日本を支配していたということになる。小林氏は「戦前は真っ暗で戦後は素晴らしい」という左翼の詐術に『戦争論』などを通して闘いを挑んでいたではないか。

 特に恥ずかしいことに僕も「戦前は真っ暗」という考えを持っていたが、小林氏が「誰が『戦前』を知らないか」(山本夏彦)を引用して戦前を論じて事実に気付いただけに、この小林氏の発言には違和感を感じる。

 また、「今後の世論調査で靖国参拝に慎重な意見が高まったとしたら、日本人は天皇が大好きな右翼的な国民だというまでだな」というのは、特に乱暴な話に見える。いわゆる「富田メモ」が発覚したあとの世論調査では、総理大臣の参拝に対する慎重派や、「A級戦犯」分祀派が増加し、半数を超えた。

 それほどまでに天皇陛下のお言葉は国民に影響を与える。しかし、その事をもって「日本人は天皇大好きな右翼的な国民だ」というのは的外れだ。確かに日本人は皇室に対し奉り尊崇の念は高い。しかし、それは右翼左翼などと近代ヨーロッパでつくりあげられた概念で分類し得るものではないはずだ。

 おもしろい話がある。いまメモ騒動の話題にあげられている昭和天皇の容態悪化が報じられた時だ、皇居前にはご快癒をいのる記帳所が設けられた。するとそこには自民党はもとより社会党、民社党、公明党と各党の代表達、芸能人のビートたけしに横山やすしも記帳に来た。結局、ご快癒を祈る記帳は瞬く間に1000万人を越えた。

 ところが、国民の祈りもむなしく昭和64年1月7日、昭和天皇は御崩御される。皇居前の記帳所は昭和天皇を悼む人であふれかえった。一月の雨の中、記帳所前の行列は途切れる事がなかった。確か弔問の記帳も、ご快癒の記帳と同じくらいの人々が記帳したと聞く。沿道で棺を見送った人は数十万人。

 この昭和天皇の大喪の儀を取材に来た外国の記者達は異口同音に「日本人がいまでもこんなに熱狂的に天皇を崇拝しているとは知らなかった。これでは右翼政治家がでてきたら日本はあっという間に全体主義国家になってしまう」と驚いた。

 それに対して日本のあるジャーナリストが「そんなことはない。日本人は確かに皇室を尊ぶ人は多いが、右翼嫌いはそれ以上に多いんだ」と言ったところ、外国人記者は全く理解出来なかったという。しかし、この日本のジャーナリストが言った理屈は大方の日本人なら理解できると思う。

 要は小林氏はそうした日本人から外れて、外国人記者と同じ発想に陥ってしまっているのではないか。日本人の天皇に対し奉る思いとは、右翼か左翼かなどと単純な紋切型のイデオロギーでは論じられないものなのだ。

 そもそも右翼左翼という概念ができたのはフランス革命後で、二百年とちょっとの歴史しかない。ところが天皇は2666年前より君臨されたまうのだ。今回のメモを機会にしてでもいいから、天皇とは何か、日本とは何かを右翼や左翼と言った枠組みから離れて思想してみることが必要ではないだろうか。

文責:タカユキ

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by shikisima594 | 2006-07-26 03:45 | 随想・雑記
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