給食の牛乳パックを、地球を想うきっかけに
(写真:「ストローで飲むより牛乳の風味を直接感じられておいしい!」と子どもたちからの評判も上々。2021年日本パッケージングコンテストでは経済産業省製造産業局長賞を受賞した。)
海洋プラスチックゴミの象徴として取り上げられることが多い「ストロー」。日本全国の学校給食では、1年間に出される牛乳パックの数は約14億個だという。ストロー1本あたりの重量を0.5グラムとすれば、給食のストローがすべてなくなると、年間約700トンもの樹脂を削減できる計算になる。
「環境問題へのアプローチとして、ストローを生分解性のある素材にするなど、さまざまな選択肢がありますが、わたしたちはストローを使わず紙パックから直飲みすることを考えました。ただ、給食は6歳から15歳までと対象年齢が広く、小さなお子さんや障害のある方には、ストローが必要なケースも考えられます」と日本製紙 紙パック営業本部の増田順一さんは語る。そこで、「小さな変化でみんなが飲める新たな選択肢はないか?」と日本製紙のチームが模索、開発したのが紙パック「School POP(スクール・ポップ)」だ。
「給食用紙パックは三角屋根部分が狭く指を入れにくかったのですが、新たにプッシュパネルを設けて、指で開けやすくしました。また、一気に液体が出てこないよう傾斜を調整したり、飲み口部分は開けるまで外に出ないようして衛生面にもこだわったりと、試行錯誤を繰り返しました」と研究開発本部の石井正康さん。ストロー穴は残して、ストローを使うか使わないかは飲む側が選択できるようにした。「容器にもダイバーシティが必要だと考えたのです」
開発を機に、特設サイトではスクール・ポップにちなんだユニークなゲームも公開。その名も「スクール・ポップ・ショット」。画面に現れるのはY字形パチンコで、指を下にスクロールして節約したストローの本数のところでパッと指を離すと、ポンと画面が弾け、「バスケットボール1個」「プール1杯分」など、どれだけの樹脂が削減できたかが、学校になじみのものに置き換えて表示される。「これは、開発に関わった女性社員のアイデアが発端です。毎日学校で飲む牛乳を通して、自分たちがストローを削減するとどのくらいの効果があるのかが理解できるようになっています」と増田さん。
作る人、運ぶ人、飲む子どもたち、そして環境。関わるすべての人やものに負荷がなく、安心して使ってほしい。子どもたちの意識を毎日飲む牛乳から自然に環境問題へと向けられれば。開発者たちのそんな想いから生まれた紙パックはいま、高知県、九州エリア、そして首都圏と、日本全国の給食の場面で導入が広がっている。
What is SDGs?
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な開発目標のこと。世界では、よりよい未来のために2030年までに17の目標達成を目指しています。