鵜飼いと観覧客 「リピーター」増やそう
2024年10月19日 05時05分 (10月19日 05時05分更新)
岐阜市と岐阜県関市、愛知県犬山市で行われていた今季の鵜飼いが、いずれも15日に閉幕した。人と鵜が一体となってアユを追う伝統の漁法を長く守り、地域の重要な観光資源として充実させていくため、個々の特色をいかした誘客にさらなる知恵を絞りたい。
岐阜市の長良川鵜飼=写真=は今季、8万3768人の観覧船乗船客を迎えた。コロナ禍前の水準にあたる9万人という目標には達しなかったものの、インバウンド(訪日客)が好調だったという。
だが、乗船客数を増やすだけでは問題も生じる。実際、乗船客が30万人を超えた1970年代には「観覧船が多すぎてじっくり観賞できない」ともいわれた。大切なのは、来てくれた人一人一人の満足度を高める取り組みではないか。2022年、ソファ席のある高級観覧船を導入して好評を博したのは、その良い例だろう。こうした新機軸を今後も打ち出してゆきたい。
その点、今年の乗船者が昨年から7・8%減の5655人だった関市の小瀬鵜飼の課題は、まずは知名度の上昇だろう。地元の関商工高校と関商工会議所青年部が合同で昨年行った調査では、岐阜や犬山など全国7カ所の鵜飼いの中で認知度が最も低かった。
しかし、魅力まで劣るわけではない。小瀬鵜飼の漁場の周辺は建築物が少なく、漆黒の夜空と水面(みなも)を照らすかがり火の対比はまさに幽玄の世界だ。ファンも多い独自の魅力を広く伝えるため、一段とPRに注力すべきだ。
また、犬山市の木曽川鵜飼にも「伸びしろ」がありそうだ。
市内には犬山城など国宝2件と「博物館明治村」ほか観光の目玉も多い。特に木曽川河畔の犬山城は昨年、過去3番目に多い58万人超もの入場者があった。その人たちを鵜飼いにも誘(いざな)えれば、今季は昨年比5%増の1万7548人だった乗船者がさらに増えよう。
鵜飼いが観光資源としても永続するには、リピーター(再訪客)の獲得が必須だ。何度も観覧し、その魅力を口コミなどで広めてくれるファンを増やそう。そのためにも「来るたび楽しい」と感じてもらえる取り組みを期待する。
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